《(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~》急転直下のミルクティ・中編
「……そういえば」
ミルクティも半分ほどになった、ちょうどそのタイミングでメリューさんが言った。
「どうしました、メリューさん?」
「いや……君はここにきて、もうけっこう経つな、と思っただけだ」
「ああ、そうでしたっけ」
ぶっきらぼうに言ってみたけれど、実際は俺だって正確な日付は覚えてなどいない。
たぶん、一年以上はここに居るのかもしれないけれど。
「……まあ、君にもずいぶんと迷をかけた。いろいろなこともあったからな」
「そんなこと言わないで下さいよ。まるで、これでもう店じまいするような発言じゃないですか」
「ハハハ、まあ、そんなことはない……よ」
一瞬だけ、メリューさんが暗い表を見せたのを――俺は見逃さなかった。
別に俺は問題ないけれど、しだけ、不安な気持ちになった。
二十時を回ると、ボルケイノも店じまい。
片付けの準備を始めて、シャッターを閉める。そしてカウンターの奧にあるネジを締めることで、ボルケイノへの干渉を防ぐことができる。どういう原理でいているのかは定かではないが、これによって別世界の橋を開閉することができるのだという。まあ、ハイテクノロジーって話だろう。もし俺が科學者やスパイだというのならばこの技を何とか奪おうと試みるのだろうが、あいにく俺はただの學生だ。だから、そんなことはしなくていい。そんなことをする必要なんて、まったくないのだから。
片付けが終わったころになると、メリューさんが僕を呼び止めた。
「おっ、片付けが終わったか? だったら、夕食を食べようじゃないか。今日はちょうど余ったカレーがあるからそれを調理した、カレーチャーハンとハンバーグだ。ちょっとボリュームがあるやもしれないが、それは我慢してくれ」
道理でカレーのにおいがすると思った。
俺は頷くと、手に持っていた皿の塊を整理して、棚に仕舞った。
メリューさんのいる廚房に行くと、カレーのにおいが立ち込めていた。スパイスの香り、とでも言えばいいだろうか。それが混ざりに混ざって、獨特の香りを出している。
廚房のテーブルには皿が三つおかれていた。容はどれも一緒で、カレーチャーハンの上にハンバーグが載せられている。ハンバーグにはデミグラスソースがかかっていて、とても味しそうだ。
「さあ、持っていくのを手伝ってくれ。ティアも忙しいようだから、ティアの分も持って行ってくれよ。私はこれを洗わないといけないからな」
そう言ってフライパンとヘラを手に持ったメリューさん。
それを見て、俺は小さく頷いた。
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