《(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~》ケイタのクラスメイト・承

踵を返して、俺は桜と向かい合う。

「どうした、桜? 俺に何か用か?」

「何か用か、ではないわ。どうしてあなたが毎日こんなにそそくさと帰ってしまうのか、それについて今日こそ解決させてもらうわよ!」

ぴしっ! と俺を指さして桜は言った。

というか小學校の頃に人のことを指ささないと習わなかったのか?

桜の話は続く。

「取り敢えずそんなことはどうだっていいの。そんな細かいことよりも、私が気になっているのはたった一つ。……どうして定時ダッシュする必要があるのか、ということよ。家に帰って、何かするほどの用事があるということ?」

定時ダッシュとか社會人みたいな言い回ししやがって。

なんというかどこか背びした言い回ししている気がするんだよなあ、桜は。昔からいつもそうだ。いつもそうなんだよ。

俺は溜息を吐いて、桜に話す。

「じゃあ、桜。言うけれどさ、それを俺がお前に言う必要は有るのか? 理解できないと言っても過言ではないし、そこまで突っ込まれるともはやプライバシーの問題にもなると思うのだけれど?」

「何言っているのよ、私はあなたのお母さんから守るよう言われているの。だから、あなたがそそくさと帰っている理由を聞くのも當然の理由でしょう?」

どこが、だ。

どういう理由なのだ、と。

そもそも母さんがどうして桜にそういう風にゆだねたのかが理解できない。一応言っておくけれど、思春期の男の子って一番があるところだし、それを母親や異に知られたくない段階だってことは、知っているだろ。それくらい理解してくれよ。

そこのところ、母さんと桜は似ているんだよなあ……。が真面目、というか。真面目すぎるだけなのだと思うけれど。

そんなことはどうだっていい。

問題はどうやって桜を振り切るか、だ。このままだと確実にボルケイノに行く時間が無くなってしまう。無くなってしまう、とはどういうことか? それはつまり、メリューさんにとことん怒られてしまう、ということだ。

所詮雇われのである俺は、雇い主であるメリューさんに逆らえるわけもない。逆らうとしたら、それこそボルケイノを辭めるときだろう。まあ、そんなタイミングは當分訪れないだろうけれど。

「ねえ、聞いているかしら?」

「ああ、聞いているよ。聞いているとも。けれど、桜の質問には答えられない。俺は急いでいるんだ。申し訳ないけれど、またいつかの機會に話すことにするよ」

「そう言って……! 話す機會なんて永遠に現れないじゃない! 追い続けるからね、私は!」

もう間に合わない――そう思って俺は走り出す。

すでに靴に履き替えていたから、外に走り出すことは簡単だ。桜は運神経もいいけれど、俺より足が速いことは無い。だから全力で走れば追いつかれることは無い――!

そして背後を振り向くと、案の定追いついていないようだった。

勝った……! と俺は心の中でガッツポーズをして、なおも町の中へと走っていく。

目的地はボルケイノへと繋がる異世界への扉。

そこは俺にしか見えないし(正確に言えば俺と、俺にれている人間になるのかな)、許可されている人間にしかることは出來ない。だから扉まで逃げ切ってしまえば――。

そう思って、俺は走っていく。目的地へと、殘された時間はもうあまりない。

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