ピンクのフリルがついたドレス、栗の髪はツインテールになっている。そして、髪の上には小さなティアラが飾りのように裝著されていた。

目鼻顔立ちは整っており、どこか貴族のような雰囲気もじさせる。

ミルシア王陛下。

それが彼の名前と、階級だった。

メリューさんは新聞をもって立ち上がると、ゆっくりとバックヤードへと戻っていく。

「いらっしゃいませ、ミルシア王陛下。まだちょっと時間が早いのですが……」

「それは重々承知しているわ！　けれど、ちょっと用事があってね。メリュー、あなた新聞は読んでいるかしら？」

「新聞。なら読んでいるが」

「それってアルキメディアタイムズ？」

「そうだけれど？」

「それならオーケイ。実はちょっと頼みがあってね……。いいかしら？」

よく見るとミルシア王陛下の背後には、彼よりし低い長のが立っていた。ベレー帽のような帽子を被って、手帳とペンを持っている。

簡単に言えば、記者のようなじ。

そんなじのが彼の背後に立っていた。

ミルシア王陛下はそれに気づいて、彼に問いかける。

「ほら。前に出ないと解らないでしょう？　いいから、挨拶だけでも早々に済ませてちょうだい」

そうして強引に前に出すミルシア王陛下。

は張した様子のまま、頭を下げた。

「はじめまして。私の名前はアルター・イノシスといいます。新聞記者を、務めています」

「新聞記者？」

俺は首を傾げる。一全、どうしてそのような業種の人間がここにやってきたのだろうか。

笑みを浮かべたのはミルシア王陛下だった。

「実は、アルキメディアタイムズはお店を紹介するコーナーがあるのよね。そこで宣伝されるといろんなお客がやってきて必ず集客増に繋がるという、とても素晴らしいものなのだけれど」

前置きした後に、アルターさんに手を添えた。

「今回、ボルケイノでその取材をしたい、と言ってきたのよ！」

「な、なんだってー！」

それは一大事だ！　もしそれが功すれば集客増は間違いない。最近新規客がなくなってきている現狀、新規客の獲得をどうすればいいかメリューさんは考えていたはずだ。

もしこれが本當にあることならば、願ってもいないチャンスだと思う。これは絶対にけるべき――。

「お言葉ですが、王陛下」

メリューさんは俺の思考を中斷するように言った。

「今回の申し出、お斷りしたく思います」

「……理由を聞かせてくれないかしら？」

突然の卻下にミルシア王陛下は怒りをわにすることなく、メリューさんに尋ねた。

メリューさんは頷いて、

「このお店は、確かに最近新規の客があまりってきていません。既存の常連さんによく來ていただいてなんとか経営を持っている狀態といっても半ば過言ではない」

「うむ。確かにそうだろうな。し前までは私がいた時もそれなりに人がいたらしいが、今はほとんど見かけることもない。私はそれを心配しているのだぞ？」