《(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~》『』の料理・前編
ヴァンパイア。
またの名を吸鬼と呼ばれるそれは、人のを吸うことを食事としている種族。
……と、大層な説明をしたけれど、実際俺もそれくらいしか知らない。フィクションでは良く登場している、と言うくらいかな。
さて、どうしてこんなことを話しているとすれば――。
「が足りぬ。……おい、そこの店員、を吸わせろ」
「それはちょっと出來ない注文ですね、申し訳ありません」
カウンター席に座っている一人ののことが原因だった。
純白のドレスにを包んだそのは、見たじで高貴な出で立ちであることが理解出來る。
しかし今は気が立っているのか、八重歯を見せて頻りにあるものがやってくることを気にしている。
もう理解出來ている人も多いかもしれないが、彼は吸鬼だった。それも、吸鬼の王國に住む、それらを統べる王だった。
なぜそのような人が居るのか、ということについては割しておこう。ボルケイノにるための扉は世界各地に點在しているため、ろうと思えばどの世界からもることが出來る。
そうしてそのは何名かのお付きとともにってきて、開口一番こう言った。
『を寄越せ』
あいにく、そのようなメニューも無いし、流石にを提供するわけにもいかない。誰のを與えればいいのか、って話になるし。
そういうわけでメリューさんを筆頭にを提供することについては拒否した。
しかし、代わりにメリューさんはこう言いのけた。
「を提供することは出來ませんが、に関する料理であれば提供することは出來ます。それではダメでしょうか?」
「に関する料理? 食べることでを吸収するという類か?」
「そういう類ではありませんが……恐らくを提供出來ない私たちの最善策であるとがられます。そしてこれは……そうですね、折衝案とも言えるでしょう」
「折衝案……か。解った、ならばその料理を貰おうか。ただ、私は現狀をしている狀況にある。急いでくれよ。そうでないとこの子のを吸うてしまうかもしれない」
そう言ってはサクラを見つめた。サクラは怖がってしまい、聲をあげてしまうところだったが、すんでのところでそれを抑え込んだ。
「ありがとうございます。それでは、々お待ちください。……お付きの方々にも同じメニューを提供して問題ありませんか?」
「ああ、問題ないとも。いいから早く料理を作ってくれ。私は調理には疎いが、それなりに時間がかかるのだろう? ならばここで無駄話をしている場合ではないだろう?」
「そうですね、お気遣いありがとうございます」
お辭儀をしてメリューさんは廚房へと向かっていった。
記憶の再生、終了。
因みに、ちょうどこの出來事があったのが、十分前くらいのことになる。にもかかわらず、すでに王様はイライラしている。カルシウムが足りないのではないだろうか? そんな冗談も言えないくらい迫あふれる空気に包まれていた。
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