「……メリューさん、遅いね？」

「そうだね。うーん、ちょっと手間取っているのかな？」

メリューさんがいつもより若干遅れている。とはいえ、それでも未だ十五分程度だから、全然普通の店に比べれば早いほうかもしれないけれど、それにしてもし遅いように見える。

ちょっと心配になったので、俺はサクラをカウンターに置いてメリューさんを見に行くために廚房に向かおうとしたが、

「メリューなら問題ないよ」

久しぶりに登場したティアさんが、俺にそういった。

ティアさんは相変わらず何か重たい本を読んでいた。ちなみに久しぶりに登場、とは言ったけれど會話に參加しなかった、というだけで常にお店には來ている。ティアさんには休みはないのだろうか？　と思うけれど、まあ、ここに住んでいるようなものだから休みは無いようなもので問題ないのだろう。きっと。

「問題ない、とは？」

「時間はかかっているけれど、トラブルが発生しているというわけではない……ということ。それに、あまりまだ時間はかかっていないほうだ。一番時間がかかったときは一時間程度かかったこともある。それを考えるとスピードは上がったほうだと思うけれど？」

いや、そういう問題でもないような気がするけれど……。

そう思ったが、ティアさんにはあまりそういう問答は通用しない。なんというか、うまいじに避けていくスタイルなのだ。

「ねえ、まだ料理は出來ないのかしら？」

案の定、王様からの催促。

まあ、理解できないことでもないが。

「申し訳ありません。もうしだけお待ちいただけませんでしょうか。きっとお客様が満足する料理が……」

「お客様、大変お待たせいたしました」

そう言ってメリューさんが登場したのは、ちょうどその時だった。

メリューさんは丼を持っている。

それが料理だというのだろうか。

「遅かったわね。けれど……、うん、いい香り」

カウンターにそれを置いて、メリューさんは言った。

「レバーとニラの炒めをごはんに乗せてみました」

それを聞いて俺とサクラは同時に納得した。

レバーとニラの炒め。レバニラ。

レバニラといえば、鉄分を多く含んだ料理の代名詞だ。る程、そういうことだったのか。これならば確かにを提供する必要はない。貧になったら鉄分を、というくらいと鉄分は切っても切れない関係だからな。

「レバーと……ニラ？」

「ええ。レバーとは、肝臓のことですね。今回はブタの肝臓を使用しています。これを食べると、を作るための構要素が多く含まれているので、とてもには良いものと言えますよ。あ、ご安心してください。ニンニクはっていません。ほんとうはれるともっと味しくなるのは事実なのですがね……」

悲しそうにメリューさんはそう付け足したが、王様にはそんなこと関係なかった。

それよりも初めての料理に興味津々の様子だった。