《(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~》竜の盟約・前編

そして、最終日。最後のお客さんが帰っていったのを見送ってから、私たちは片付けを開始した。このボルケイノは私たちがいなくなったと同時に消失するから、掃除をする必要は正直言って考えられないのだけれど、ティアが「飛ぶ鳥跡を濁さずと言うでしょう」との鶴の一聲でそうせざるを得なかった。

「……ふう。なんとか終わったな。あとはみんなに今までの給與を渡せば、ちょうど良くなるはず。ええと、ミルシアがやってくるのはあと一時間後だったっけ?」

「メリューさん」

ケイタの聲が聞こえたので、私は振り返る。

そこに立っていたケイタは、どこか顔を真っ赤にさせていた。

「……どうした、ケイタ? 顔を真っ赤にさせて」

「ほんとうに、ボルケイノは終わっちゃうんですか?」

「…………ああ。それについては、変えようのない事実だ」

「そうですよね。呪いが、治ったから、ボルケイノも終わるんですよね。でも、もうしだけ続けたかったな、という思いもあります」

「それは私もだ。竜にかけられた呪いとはいえ、この生活が辛かったわけではない。むしろ楽しかった日々であったことも頷ける。まあ、仕方が無いことだよ。奇跡と言っても良い確率で私たちは出會い、ともに過ごした。それだけで良いだろう?」

「でも……」

ケイタの言葉を聞いた直後、直ぐ傍でカウンターを拭いていたはずのティアが私の隣に立っていた。

「なら、変えてみましょうか」

「は?」

唐突だった。

剎那、ティアとケイタを包み込むように障壁ができあがり、私ははじき出される形で障壁から出してしまった。

「ティア……っ!」

「確かに、竜の呪いはあなたにはかかっていました。そしてそれは解けて、あなたは人間に戻れる。だけれど、それってつまらないですよね? ボルケイノをずっと続けたい。あなたたちはいつかそう思うはず! だから私は父上に聞いて考えたのですよ。ボルケイノを続ける方法……『竜の盟約』を行う方法を」

「やめて……やめて、ティア。あなたはいったい何をしようとしているのか、分からないけれど……、とても恐ろしいことをしようとしているのだけは伝わってくる! やめて、お願いだから、やらないで……」

「噓を吐くな。お前達はんでいただろう。この仮想家族の景を。そして私の役目を何であるかを皆は忘れているのではないか? 私はメリューの『罰』の執行人にして監視役。そしてその間に、彼の罪は清算されたが、しかし彼たちはボルケイノの継続をんだ。竜の力があってこそのボルケイノ。このボルケイノには竜の力が、ボルケイノの空間を維持するためには必要不可欠なのよ。……だから、『新たな竜』に出現してもらうの」

ティアのその笑顔は妖艶で、冷たくて、それでいて恐ろしかった。

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