ダーウィンの進化論は、ご存知だろうか。生は「同じ種族でも伝的な変異は親から子へ伝わり、その変異が自や子孫の生存率に関わってくる」というもの。いわゆる自然淘汰(自然選択説)と呼ばれるものだ。

では、どのような伝子を殘すべきか？

この選択は、住んでいる環境によって大きく左右される。晝間は危険だから夜に生きる生、子供の生存率が低いから多産になった生。男比が著しく偏った結果、男よりが強くなる生−−環境による選択圧だ。

気が遠くなるほどの永い年月をかけて環境に適応した結果、この世界のは強さを手にれたようだ。

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L字型のソファに座って壁掛けのテレビを見ていると、後ろから仁王立した母さんに聲をかけられた。聲からするとし怒っているようにじたので慌てて振り向く。

「腕力では、男の子はの子に勝てないの。十分に注意しなさい！」

初等學校に通い始めてから何回も注意されていたが、実がないため前世と同じ覚で同級生と流していたら、ついにキレたらしい。眉間にしわを寄せながら近づいてくると、左手で僕の頭を摑んできた。

「の子の強さを見せてあげる」

不敵な笑顔を浮かべた母さんの右手には、未開封の缶コーヒー。「何をするんだろう？」と疑問に思った瞬間、目の前で缶コーヒーが「グシャッ」と一瞬でつぶされ、飛び出したが顔に飛び散る。

「ヒェッ……」

反的に涙が流れ足をガタガタさせ、そうつぶやいた僕は悪くないだろう。あんな細い腕のどこから、そんな握力が出せるのだろう。しかも明らかに、前世の鍛えた男より握力が上だぞ。

「ユキちゃん。わかった？　の子は、みんなこのぐらいのことはできるの。いい機會だから、男用の護を習ってもらおうかしら」

目の前の脅威によっての恐ろしさを実した僕は慌てて首を縦に振ろうとしたが、頭がかない。母さん、そろそろ頭から手を離して。頭からミシミシとした音が聞こえるよ……。可い息子の危機だよ！

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あとで分かったのだが、男とでは筋の質が違うらしい。の筋は細いががあり、短期間に出せる力に優れた筋。また、戦いに優れたが優遇されていたため、男より高長で反神経も良いらしい。恐らくサルの時代から強いメス()が選ばれ続けた結果なのだろう。やはり、この世界は似ているようで似ていない。

とはいえ流石に、生理や妊娠といった機能をから取り上げることはできなかったらしい。一定期間、力が落ちる日がどうしても出來てしまう。それをカバーするために、はハーレムを作り數で補っているのだろう。

そしてその筋力よりさらに恐ろしいのが、男を発見する能力。

正確に表現するのであれば、男を発見する五。視覚・聴覚・覚・味覚・嗅覚が優れている。特に二次徴を迎えた男が近くにいるとすぐに分かるらしい。誤魔化すことは、ほぼ不可能とのこと。さらに、進化(?)した一部のは第六まで備わっており、覚的に男が存在する位置までわかるそうだ。

男を守るために筋や反神経が発達し、守るべき男を見つけるために五が発達する。これが、進化的軍拡競爭なのか？　ダーウィンさん、この世界でも伝子は、頑張ってお仕事していますよ。

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母さんの強引な説得の結果、5歳から相手の力をけ流す護を習い、7年が経過した12歳になった誕生日の翌日。ついに、母さんと絵さんから男について教わることになった。今世における教育が始まったのだ。

「ユキちゃん。もう12歳になったし、もう數年したら結婚しなければならない歳になりました。ハーレムについて々と教えます」

「結婚しないとダメなの？　僕は、母さんと絵さんがいてくれれば、他の人はいらないよ」

一瞬、笑顔になったが真面目な顔に戻り、母さんは話を続ける。

「それは素晴らしい未來だけど、ダメなの。國際男保護法で、男のハーレム作りと結婚、子作りは義務とさているの」

「男はハーレムメンバーの數だけ腕に細い腕をし、は右の小指に指をする。結婚したら、それが左の薬指になるの。トラブル防止のため、これは世界共通よ」

絵さんも追い打ちをかけるように、必要を説く。

「これは、ユキちゃんを守るために必要な法律なんだよ。周りに信頼できるがいないと、いつ、誰に襲われるか分からないからね」

「そうね。あなたを守るための法律よ」

この12年間で、を守ってくれるが必要なのも理解できるようになった。でも、前世で結婚に失敗した僕には、的はこの法律を否定したい。

「はね。男を守るのと同時に襲ってしまうの」

「襲う？」

「そう。ハーレムに所屬していないは、男を的に襲ってしまうの。いくら知恵や理といったものがあっても、本能には逆らえないの。男を求める本能の前には、理という鎧は脆いものよ。は生まれながらにしてハンターとしての素養を持っているの」

「男を襲うことは重罪だから、二度とでてこれなくなるけどね」

「母さんや絵さんも、僕を襲うの？」

そこまではっきり言われると思わなかったので、何も考えず思ったことを聞いてしまった。

「ユキちゃんは、たまに変なことを言うね！　私たちは家族だから大丈夫だよ。線引きが難しいんだけど、”男がお互いを信頼している”関係が築けていると本能も収まるんだよね。不思議なことに」

「この男というところが重要だから。子供がいても娘だったら當てはまらない。人工授して子供を産んでも娘だと、結局、男を追いかけちゃうんだよね」

これは近親相と、一人のが多くの男を囲い込まないといった種としてのタブーが本能が働いているのかな？　伝子さん、もうしなんとかならなかったんですか！ お仕事が中途半端ですよ！

「だからこそ、ハーレムを作るときはの充足が大事なの。ユキちゃんがハーレムを作るときは、が心ともに満ち足りているかちゃんとケアするの！ これができない男は三流よ」

何が悲しくて実の母親にハーレムの運用テクニックを教えてもらているんだ……。予想以上に恥ずかしいぞこれ。

「私はアメリカ人男のハーレムにったことがあるけど、結局合わなかったなぁ。管理が雑すぎる。やっぱり同じ日本人人のハーレムの方がしっくりくる」

絵さんもハーレムにっていたことがるんだ、なんだかショックをけてしまった。母さんはそのことに気づかず話を進めている。

「そして最も注意しなければいけないのが、他の男よ。ランクによって上限があるといっても、上限までを囲っている人はないわ。枠を殘しているの。何故だかわかる？」

「ううん」

「それはね、魅力的なが見つかったらすぐにハーレムに加えるためよ。そして、魅力的ながフリーだってことは、ほとんどないわ。だから男同士でを奪い合うの」

「力の強さをアピールをする場合もあれば、料理の腕をアピールする場合もあるし、ハーレムメンバーを使って対象のがハーレムから抜け出すように仕掛ける場合もあるわ」

「ハーレムからは簡単に抜け出すことができるの？」

「その人次第だけど、次に所屬するハーレムが決まっていれば簡単に抜け出すわね。次が決まってなくても男に想をつかして抜け出す場合もあるし、男にそれを拒否する権利はないわ」

ある意味対等な関係なのか……な？

「の趣味が異なる、上限までハーレムメンバーを揃えている、といった場合じゃないと男と仲良くするのは危険よ」

もともと期待していなかったけど、この世界で男友達を作るのは諦めた方が良さそうだ。他にも通といった一般的な容から、力剤や妊娠促進剤といったお薬の話、避妊の方法まで聞いたけど、右から左に流れて言った。

どうしても、もう一度、結婚して子供を作る決心がつかない。大切な想いがあせて朽ちてゆくのは、もう耐えられない。

そして、母さん仕事の都合で數年ごとに引っ越すことを理由に、16歳になってもハーレムを作らず、最後の転勤と言われて日本に住むことになった。