《男比が偏った歪な社會で生き抜く 〜僕はの子に振り回される》25話

社會的に優遇されているのは間違いなく男だ。

例えば、ごく一部の例外を除いて、男はどんな犯罪を犯しても死刑はありえない。さらに男用の刑務所もない。仮に人を殺したとしても、人里離れた山奧にされてを囲って余生を過ごすぐらいだ。

他にも、僕が渋谷でに襲われたとき、懇願書を書いて不起訴にしてもらうように、男の主張は意見をれてもらいやすい。

前世の男からすると「それ罰になるの?」と思うほど、男は守られている。

それが正しいかどうか僕にはわからないけど、現実はそうなっている。

でもそれが、男と男が爭い合う場合はどうなるか?

の數がないうえに男同士がお互いに距離を取り、関わらないようにしているため、滅多に発生しない、でも、ゼロというわけではない。

稀にだけど発生する、社會的に優遇されている男同士のトラブルを解決するのは非常に面倒であり、下手をすればを巻き込んで大きな爭いにまで発展する場合がある。

実際、過去に男同士のトラブルが原因で、男のハーレムやその家族などが爭いに參加。さらにお金や男と結婚できる権利などで煽り、関係ないも參加する事態になり、その結果、最終的には紛にまで発展したこともある。

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その事件で人類()は自分たちの本能のおぞましさ、男を適切に管理する必要に気づき、表向きには社會的に優遇する目的で男ランク制度が出來上がった。

でも実際は、効率良く男を管理するのと同時に、男に優劣をつけて男同士が爭った場合の判斷材料に使われている。

「最後は僕の憶測もっているけど、これがランク制度ができた経緯だよ」

「そんな歴史がったんですね。數字がない方が良いぐらいしか知りませんでした」

リビングで僕の話を聞いていた楓さんが深く頷く。一緒にいる母さん、絵さん、彩瀬さん、さおりさんも僕の話を聞いてくれている。

「それで今回の件だと、男同士の爭いに該當しそうなんだ」

さおりさんのお母さんと晩飯を食べた翌日、お見合い業者経由で相手の男に連絡を取ったところまでは良かったけど、「後から出てきてを奪い取る格が気にらない」といった否定的な回答が返ってきた。

それを言われてしまったら僕の方からは何も言い返せない。なんせ事実だから。とはいえそれは心面であり、さおりさんは正式にハーレムにったわけでもないので、法的には問題がない。そうやって突っ返すこともできる。

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でも、この世界における男同士の爭いはご法度だ。特に今回は別の國の人と爭う可能が高い。ここは相手のを逆なでしないように、僕たちは和解の條件を聞き出す方向で進めようとしていた。

お見合い業者も同じ考えでいていて、爭いに発展しないように男トラブル専門の弁護士をすぐに紹介してくれ、和解のために積極的にいてくれる。

「男のランクが4つ以上離れていた場合は、法律に反しない限り問答無用でランクの高い人の意見が通るんだけど、僕はランク3で相手は6だったから、和解渉が必要なんだ。それで出してもらった條件なんだけど三千萬用意しろだって」

「ブフッ! ……金額が三千萬って多すぎない!?」

彩瀬さんが、法外な金額に驚いて口に含んでいたお茶をこぼしそうになっていた。

ハンカチを取り出して慌てて服を拭いているけど、そんな姿を橫目に僕は話を続けた。

「多いと思うけど、め事を避けるのであれば仕方がないよ。一応、分割支払いには対応してくれるみたい」

「分割支払いするにも大きな金額です。私も協力しますが、返し終わるのに數年は必要ですね……」

楓さんはお金の面でも協力してくれると宣言してくれた。脳では返済プランを組み立てているのかもしれない。でも、に頼るなんて男が廃る……いや、この世界だと甘えたほうがいいのかな?

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そんな風に悩んでいると、ずっと黙って話を聞いていた母さんがゆっくりと話し出した。

「男のワガママを聞くのはの甲斐。三千萬を支払って、さっさとこの問題を終わらせましょ。幸いユキちゃんの補助金には一切手をつけていないから、それを使えば問題ないわ」

「これ以上、ご迷をおかけするのは……」

僕たちが和解金を支払う流れになったのに驚いたようで、さおりさんは申し訳なさそうな表をしながら言った。

「気にしないでいいわ。の問題を金で解決させようとする男なんてろくな人間じゃないわ。後腐れなく縁を切りましょう。その代わり、ユキちゃんのことしっかり面倒を見るのよ?」

「……それでいいのでしょうか……」

三千萬という大金とその代償が釣り合っていないとじて、さらに萎してしまっている。確かに僕が同じ立場だとしたら同じような態度になるだろう。

「いつも調子がときが続くとは限らないわ。自分が辛い時でも、年老いてしまっても、ユキちゃんとずっと一緒にいるのよ? それに今みたいにワガママな面もあるし大丈夫かしら?」

一時的な関係ではなく、これからの人生を僕と一緒に過ごす。それは非常に大変なことだし、さらに養い続けるのであれば働き続けなければならない。きっと養ったお金は和解金を上回る額になるだろう。

そう考えるのであれば、三千萬はローンを組んでいると言える……かな?

「はい!」

なんだか騙された気もするけど、母さんの話を聞いて決意を固めたのだろう、控えめな彼にしては驚くほどはっきりと答えた。

「さおりさんはそれでいいかもしれないけど、僕のワガママで家のお金を使うのは気がひけるよ……」

ワガママを言っている自覚はあるし、それで家のお金を使うのも違う気がする。やはり、自分で蒔いた種は自分で刈り取るべきだ。それが、この世界の常識と照らし合わせると一般的ではない考えだとしてもそれは譲れない。

「ユキちゃんがいるから手にったお金よ? 気にする必要ないわ」

「そうだとしても気にするよ。自分で稼いだお金じゃないし……」

現実的に考えて、僕には支払い能力はない。だから和解金を一時的に出してもらう必要はある。でも、そのあとアルバイト……はできないけど、インターネットを使ってお金を稼いで、母さんに支払うことは可能かもしれない。

そう考えて口を開きかけた瞬間に、母さんから意外な提案が出た。

「そうねぇ……それなら自分でお金を稼いでみる?」

「え? いいの?」

母さんから働いて稼ぐことを提案されるとは思わず、驚いてしまった。

「この前會ったミカさんに、ユキちゃんと一緒に働けないか相談されていたから、モデルっぽいお仕事でよければ紹介できるわ。」

「っぽい?」

モデルだけではないということかな?

「いくら私のユキちゃんだとしても、いきなり雑誌モデルややテレビのタレントになるのは難しいわ。まずは、ネット上で有名になりましょ」

「え? 有名?」

母さんの頭の中では、計畫が出來上がっているようだけど、頭の中が覗けない僕では話がつながらず、會話に追いついていけない。

「景子姉さんは、將來的には有名な蕓能タレントになってしいと考えている。その第一歩としてネットアイドルになることを提案しているよ」

そんな僕を見かねて、絵さんがフォローをしてくれた。

「有名になるかどうか後で考えるとしても、男はネットで報を発信することができないよね?」

のインターネット利用は制限されている。

特に、ネットストーキングの危険があるからといって、SNSやblogといった報を発信するWEBサービスは、見ることはできるけど投稿はできない。例外があるとすれば、取材されてメディアに掲載されるといった企業を挾んで公開した場合だろう。

そんな狀況なのに、ネットアイドルになることはできるのだろうか?

「ユキちゃんはし勘違いしているわね。正確には政府の検閲さえ通ればSNSやblogに投稿できるわよ。申請や検閲の制構築といった面倒な作業があるけど、そこは全部ミカさんにお願いしちゃえば問題にならないわ」

の片方をだけを上げて、フフフと口に出して笑っている。

今までに見たことがない悪いことを企んでいそうな笑顔だった。

「それで、ユキちゃんはどうする?」

が働ける機會は數ない。ネットストーキングのリスクがあったとしても、このチャンスを逃したら死ぬまで働くことができないかもしれない。

それに、男を求めるは多く、そのはけ口としてネットアイドルとして活するのは悪くない。前世の男子高校生がグラビアアイドルを見るのと同じ覚で、利用してもらえるかもしれない……いや、それ以上かもしれないな……。

確かに僕自々な意味で使われるのはし怖いけど、僕がこの前決意した「男を求める。男に振り回されて不幸になるを助ける」ことにもつながると思う。

どうせ普通の仕事につくことはできないんだし、ここはけるしかないだろう。そう考えて、母さんが提案した仕事を引きける決意をした。

「やる!」

「それでこそ私のユキちゃん。決まったことを、さおりさんのお母さんとミカさんに連絡しなきゃね」

その日のうちにミカさんに連絡をすると、こっちが引くぐらいの勢いで提案をれてくれ、翌日、我が家で條件面のすり合わせをする打ち合わせをすることになった。

◆◆◆

「今日は貴重なお話しをいただきありがとうございます」

本日は日曜日。休日にもかかわらず、ミカさんは家に來てくれた。この前會った時と変わらず、軽いウェーブのかかったセミロングの髪がとてもよく似合っている。

挨拶が終わると、母さんと僕とミカさんがリビングのソファーに座り話し合いが始まった。

「早速ですが、《ユキトくんネットアイドル化計畫》の企畫書をお持ちしました」

いきなり予想外の単語が飛び出してきたので、顔が引きつる。

昨日、用件を伝えたばかりなのに計畫書ができていることに驚いてしまった。數枚にまとめられた紙をめくり容を確かめていく。計畫書の名前は恥ずかしいけど、容は現実的だった。

「まず手始めとして私が編集長を務めているメディアにコラムを連載してもらいます。容は相談がいいと思いますが、それはユキトくんのご意向を聞きながら決めいければと思っています」

相談か……どこまでできるか分からないけど、あくまで一個人の意見として書くのであれば問題ないかな……?

「コラムで人気が出てきたら、公式SNSで定期的に投稿してファンに報を提供します。《今日は朝からコーヒーを飲みました》といった當たり障りのない投稿であれば検閲もクリアできると思います。私どもが開発した専用のアプリを使えば、畫像のExifイグジフは自的に削除されるので、検閲と合わせて考えるとプライベートの報が洩する可能は低いと思われます」

スマートフォンやデジタルカメラで撮影した寫真には、撮影した場所や時間などの報が埋め込まれている。それを一般的にはExifと呼んでいるんだけど、この報をもとに住所を特定するネットストーカーもいるため、ネットに報を公開するのであれば気をつけなければいけないポイントだ。

的にはどうやって検閲するのかしら?」

「ユキトくんが投稿すると、公開前に我々に報がとどきます。それを私が、個人が特定できそうな報がないか確認します。問題があればユキトくんに連絡をして容を調整してもらう予定です。それのやりとり終われば、政府の検閲チームに報を渡し公開する流れです。私が所屬している會社は政府の検閲チームと繋がりがあり、軽く打診したところ前向きな回答をいただいているので、この流れで問題なく制が組めるかと思います」

昨日の今日で政府の人と話がついているとは思わなかった。やっぱりこの手の依頼は専門の人に任せるのが最適なのだろう。

コラムとSNSの投稿と検閲は、これで問題なさそうだ。

「細かいところは調整したいけど、大筋の流れは問題なさそうね」

「ありがとうございます。話を戻しますが、SNSを使ってファンを拡大したら最後は畫サイトで、畫を配信してもらう予定です。もちろん録畫放送になります。《ユキトくんの手作り料理講座》や《読者の質問に答えるコーナー》といったものが良いかと思いますが、まだ最終的には決まっていません」

畫を配信してようやくネットアイドルになれるわけか。

「お金、マネタイズはどうするの?」

母さんがお金の話をするということは、企畫には納得したのだろう。

「將來的には課金システムなども考えられますが、最初は広告でお金を稼ごうと考えています。ユキトくんにお支払いする金額は広告で稼いだお金から、4割をお渡しする形を考えています」

「検閲の人件費、サーバー費などを考えれば悪くはないわ。ユキちゃん良い?」

「うん。企畫の容もお金も大丈夫。頑張れば頑張った分お金がるしね」

そういってグッと手を握る。

アクセスが集まればお金が稼げるのであれば、頑張るしかない。學業と並行するのは大変かもしれないけど、自分が決めたことだ。どんな結果になるかわからないけど、最後までやり通そう。

「そうですね。毎日は難しいと思いますが、更新頻度が高ければアクセスは稼ぎやすいかと思います。特に、同じようなことをしている男はいないので今が狙い目かと」

「それじゃ後は細かいところをすり合わせて、契約をまとめましょうか」

そしてついに、ネットアイドルに向けての第一歩を踏み出すことが決まった。

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