《男比が偏った歪な社會で生き抜く 〜僕はの子に振り回される》26話

「すごい量のメール……」

ネットアイドルになる宣言から一週間。

ミカさんの會社が運営してるwebサイトで相談の告知をしてから三日。

僕は百通を超えるお悩み相談のメールを見て顔が引きつっていた。

「ねぇ。これはどうすれば良いと思う?」

大量のメールに圧倒されて、僕の部屋でくつろいでいた楓さん、彩瀬さん、さおりさんの三人に聲をかけてしまった。

「お困りですか?」

最初に反応してくれた楓さんは、そう言いながら腰をし浮かべると、溫がじられるほどの距離まで近寄って座った。その瞬間、彼から柑橘系の匂いが漂ってきて、一瞬心臓が跳ね上がってしまった。

今までは、として意識することはなかったんだけど、最近は近くにいるだけでドキドキしてしまう。でも、そんな態度を見せてしまったら間違いなく襲われてしまうので、冷靜な表を裝って僕は話を続けることにした。

「うん。ミカさんから、このメールの中から答えられそうな質問を探してと言われているんだけど、百通以上もあると探すだけで一日が終わっちゃいそうだよ……」

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「確かに多いですね……私はユキトの部屋でくつろいでいるだけで暇ですから、手伝いましょうか?」

「私も!」

「私もお手伝いします」

楓さんの提案を聞いた彩瀬さん、さおりさんも僕に近づいて、聲をそろえて手伝うことを手伝うことを宣言してくれた。

ノートパソコンからメールをプリントアウトしてからそれぞれの主観で、答えられそうな相談を選別していく。

そのなかには、ミカさんのチェックれで「男を働かせるな!」という誹謗中傷メールもあったけど、そういうメールはクシャクシャにしてからゴミ箱にれて忘れることにした。

手分けして選別していると、相談の容は大きく三つに分類できることに気づいた。

一番多かったのは、會いたい・ユキトを知りたい系。

例えばこんなじだ。

「私は今年20歳になるです。ユキトさんあなたの名前を見ただけで一目惚れしました。どうか私と會ってもらえませんか? 電話番號はXXX-XXXX-XXXXです。お會いしてくれたらなんでもします!!」

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一目惚れの使い方間違っているし、僕の名前を見ただけで惚れるって、どんだけ飢えているんだろう? それに、なんでもしますといっているけど、會ったらパクッと食べられちゃいそうで怖い……。

この紙は丁寧に折り畳んでから不採用コーナーにれた。

二番目に多かったのは、ハーレムのトラブル。

「今年15歳になるです。私は、とある男のハーレムにっていますが、同じ時期にったが、私よりでかい顔をしているのが気にりません。なんとか排除したいと思っています。男に嫌われないように排除する方法を教えてください」

これも相談じゃないよね……。

同士の爭いを止められるほどのコミュニケーション能力は持ち合わせていません。見なかったことにします。ごめんなさい……。

そして最後は、まともな相談。

「私は今年45歳になるです。結婚はできませんでしたが、運良く二十年前に人としてハーレムのメンバーに加えてもらいました。ですが、最近は若いにばかりに手を出して、私のことを見てくれません。どうすればもう一度振り向いてもらえるのでしょうか?」

お、重い……。

このお仕事を引きけた時は「好きな人にラブレターを渡したいんですけど、いつ渡せばいいですか?」といった甘酸っぱい相談が來ると思ってた。でも、現実は重い相談の方が多い。

相談役として引きけた以上、この手の重い相談も真髄に答えなければいけないのだろうけど、しだけ気が重くなる。

會いたい・ユキトを知りたい系は論外。ハーレムトラブルも一回目としては適切でないと判斷して不採用コーナー行き。

純粋な相談が二十件殘ったので、今度は四人全員で一枚ずつ容を味する。

「ユキト。男が好む型についての質問なんてどうでしょうか?」

そう言って楓さんが渡してくれた紙には、男とっての理想的な型について相談している容だった。

「個人差がありそうだけど、僕なりの見解ってことでよければ答えられると思う。ありがとう。この回答を考えてみるよ」

「ユキト君……これなんてどうかな?」

今度はさおりさんが紙を渡してくれた。容は、「に抱かれても良いと思うシチュエーションを教えてください」という相談だった。

前世では男を押し倒すシーンが多かったけど、この世界では逆転している。

これはなんとなくで確証はないんだけど、は一度、的刺激をけると一気にが高まり、解消しなければずっとムラムラしてしまうタイプのを抱えているようにじる。そしてムラムラを解消させるまでは、下半に振り回される。そんなイメージが強い。

ちなみにこの仮説(?)のサンプル數は2。若いと一緒に暮らしていたらなんとなく察してしまうものだよね。

「ありがと。これも考えてみるよ」

ちょっと橫道にそれちゃったけど、さおりさんが見せてくれた相談は問題なさそうだし、これも頑張って回答を書くことに決めた。

「私も見つけた! これどう?」

みんなに後れをとってはいけないと思ったようで、彩瀬さんは読んでいた紙を慌てて渡してくれた。

「ユキトさんは、どんながタイプですか? ってこれは、最初に排除した、會いたい・ユキトを知りたい系だよね……」

「うん。でも、採用されればユキトが答えてくれるんだよね? 私、ユキトの好きなタイプが知りたいなぁって、思うの!」

その一言を聞いて楓さん、さおりさんが勢いよく、彩瀬さんの方に振り向くと同じセリフを言葉にする。

「「その発想はなかった」」

なるべく一般論として答えようとは思っていたけど、相談の答えには僕の好みがある程度反映される。そのことを利用しようと考えて、彩瀬さんは質問を選んだようだ。

そういった視點からもう一度、「男にとっての理想的な型」「に抱かれても良いと思うシチュエーションを教えてください」の質問をみると、「僕が好きな型」「このシチュエーションなら、僕のことを押し倒してもいいよ」と翻訳することもできる。

……相談の仕事を引きけたのは早まったかな。

僕がそんなことを考えているあいだに三人とも僕の方に近寄り、回答を書こうとしていたノートパソコンをのぞいている。

「ユキト。回答を書きましょう。そして、まず始めに私に見せてください」

「ずるい! 私の方が先だよ!」

「後でいいから私にも見せてもらえると嬉しいな……」

しているのか、三人とも鼻息が荒い気がする。

「相談の回答は、なるべく客観的に書こうと思っているから、読んでも僕の好みがわかるわけじゃないよ?」

「でも……ユキト君が回答する以上、自分が嫌だと思うことを書いたりしないよね? だったらやっぱり參考になるから見たいな……」

さおりさんの指摘は正しい。

言い返すことも出來ずに、僕は黙ってしまった。

「と、とりあえず回答は一人でかけるから、みんな部屋から出て行ってくれないかな? みんながいると集中できそうにないや」

そう言うと、しぶしぶとだけどみんな出て行ってくれた。

さて、相談の回答はどうしようか。僕は腕を組みながら、當初予定していた以上に頭を悩ませていた。

◆◆◆

今日は、相談の回答が公開される日だ。

出勤時間に読んでもらえるように七時に公開する予定で、朝食の準備をしながら記事が公開されるのをまっていた。

悩みすぎて回答を書くのに二日も使ってしまったけど、時間をかけたなりの容にはなったと思っている。

実は今、どのぐらいの人に読まれるのか楽しみだったりする。

「七時になりました。ユキト相談コーナーを表示します」

タイマー設定をしていたので、時間になると音聲システムのtamaがwebサイトを表示してくれた。コーナーのトップには僕のシルエットがあり、寫真はないものの男が答えてくれているような、そんな雰囲気が出ているデザインだ。

ちょうど朝ごはんを食卓に並べたところだったので、すぐにスマートフォンを手に取りサイトを見ることにする。

「え? どういうこと……見間違えかな」

時刻は七時五分。

記事を公開してから五分だ。にもかかわらず、すでにシェアされた數は三桁を超えていた。なんとなくページを再読込してから、もう一度シェア數を見てみると今度は四桁になっていた。

すごい勢いで増えていく數字に、喜びよりも先にちょっとした恐怖をじる。

朝食を食べ終わったあと、移中や休み時間中でも気になってしまい、何度も記事にアクセスする。その度に、數字が増えていく。

そしてお晝ご飯を食べている時に、ミカさんから電話が來た。

「先日お世話になったミカです。お話しする時間ありますか?」

「ユキトです。お晝休み中なので大丈夫です。何かありましたか?」

からクレームが來たのではないかと思い、心ではビクビクしながらミカさんの言葉を待った。

「海外のメディアから、記事を英語に翻訳して掲載したいと依頼が來ています。どうしましょうか? ユキトさんがよければ、弊社としては掲載の許可を出したいと思っています。もちろん、それ相応のお金はいただく予定です」

僕の予想を良い意味で裏切る話だった。

早くお金を稼がないといけないし、世界的に話題になってくれるのであれば、ネットアイドルを目指している僕たちにとっては好都合だ。斷る理由はない。

「英語訳した原文をチェックさせてもらえれば大丈夫です」

「わかりました。その方向で調整します。英語訳が屆いたらまた電話します」

その日の夕方には英語訳した記事が、イギリスのメディアに掲載され、それが呼び水となって世界各國のニュースサイトにも掲載され、僕の相談コーナーは、たった一日で世界中の人に知れ渡ってしまった。

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