《男比が偏った歪な社會で生き抜く 〜僕はの子に振り回される》27話

コラムは、世界中のに読まれた。多くの人に興味を持ってもらえたけど……それだけだ。

がコラムを書いて世界中に発信する。この世界にとっては新しい一歩かもしれないけど、僕にはどうしても足りないし、しだけ焦りもじている。

この世界に生まれ変わって、社會につぶされそうになったを見てきた。

の程知らずかもしれないけど、そういった彼たちを助けてあげたい。

競爭に疲れたに一時の気晴らしを。

やはり 一方的に報を発信する コラムでだけでは足りないだろう。セキュリティの問題もあるし仕方がないかもしれないけど、アイドルと言うのであればファンとの流は欠かせないし、実現させたい。

で多かった「僕に會いたい、もっと知りたい系」。一度は不採用としてゴミ箱にれたけど、の強い願だというのには間違いない。完全に葉えてあげることは出來ないけど、もうし歩み寄れるんじゃないかな?

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予想以上の反響に興が冷めやらぬ中、僕はベッドの中でそんなことを考えながら眠りについた。

寢る前に考えことをしていたせいか、目覚まし時計を止めても頭はボーっとしたままだ。

朝食を作ろうとして1階に降りると、楓さんがソファーで読書していた。カバーが付いているから本の容は分からないけど、ニヤつきながら読んでいるから系なのかな? ジーっと見つめていたせいか僕の視線に気が付いた楓さんが、本から目を話して僕の方に顔を向けた。

「ユキトさん。おはようございます」

「楓さんもおはよう。その本は當たりだったの?」

「あ、これですか」

楓さんは恥ずかしそうに持っている本を見る。

あれ? これってれたらいけない容だったのかな!? 朝から失敗しちゃったかもしれない……。

「ごめん。今の質問忘れて」

「あ、いえ、違うんです! 人に話せないような本じゃないですよ!」

「そうなの? 聞いても大丈夫?」

「はい。私が読んでいた本は……男の人數が平等の世界に迷い込んだの人生を描いたお話なんです」

僕のいた世界ではやや男の方が余り気味だったけど、この世界よりかは男の數は同數に近い。もっと気軽に外で遊べたし、道を歩くだけで警戒しなくても済んだ。そんなことを思い出していると前世の事が懐かしくなる。

なんとなく気持ちが落ち気味になった僕は、朝食の用意を後回しにして楓さんに本の容を聞いてみることにした。

「どんなお話なの?」

「え?  男が聞いても面白くないと思います……それでも興味あります?」

「うん!」

僕はそう言うと、楓さんの隣に座って話してくれるのをじっと待つ。

「きっぱり斷言されると話すしかありませんね。拙い説明になるかもしれませんが、お聞きください」

楓さんは小さくため息を吐いてから、ゆっくりと説明を始めた。

特にこれといった才能も持たず、男と付き合うどころか話したことのないは、出世競爭に負けて會社を追われ退職してしまう。さらに難病にかかってしまい、まさに失意のどん底で死んでしまった。彼は死ぬ間際「次の人生では私を見下した奴らを見返せるような人生を送りたい」と願ったそうだ。

が唯一、普通の人と違った點は最後の願いが葉ったことだろう。

の數が平等の世界に転生。しかも人として生まれた彼は數多くの男から言い寄られ、からは頼られる存在として確固たる地位を作った。さらにその勢いはとどまるころなく、ついにはアイドルとしてデビューすることになったようだ。

世界が変わっても、こういった話は創られて人気が出るんだ……ん? アイドル?

「アイドルとしてデビューするって、いきなりテレビに出たの?」

「違うんです! 彼は前世で下積みの大切さを理解していたので、最初は地下アイドルとしてファンを増やしていったんです!」

「地下……アイドル……」

前世の地下アイドルと言えば、ファンとの距離が近いことで有名だった。小さなライブ會場で歌い、ファンの聲援に応えながら活を続ける。僕が昨日の夜、考えていた形に一番近い。だからと言っての前で歌うわけにはいかないし、顔出を出して畫配信するのもしリスクがある。この問題を解決するにはどうすれば……。

「ユキトさん?」

急に黙り考え込んだ僕を心配した楓さんが、心配そうな顔をして聲をかけてくれた。

「あ、ごめん。ちょっと考え事してたんだ」

「私の話は分かりにくかったのでしょうか?」

「そうじゃないんだ! 楓さんは何も悪くないよ! ただちょっと、彼はその後どうなったのかなってね」

僕の悩みを楓さんに話しても迷をかけてしまうだけだ。そう思って、地下アイドルになった彼の続きを聞いてみることにした。

「その後は順調に進み、最後は野外で盛大なライブをしました。CGを使った豪華な演出でファンを魅了したそうです」

CG? そうか! CGという手があったか!!

「ありがとう! 悩みが解決しそうだ!」

「ど、どうもいたしまして? 私、ユキトさんのお役に立てたんですか?」

「もちろんだよ!」

僕は思わず楓さんに抱きついてしまった。

タイミングよくリビングに來た彩瀬さんが「羨ましい!」って聲が聞こえるけど、今だけは気にしない。新しい道を切り開くきっかけを與えてくれ、楓さんへのお禮なんだから。

顔を真っ赤にして固まっている楓さんを離すと、急いで朝食を作り部屋に戻る。

ノートを開いて忘れる前に思いついたことを一気に書き起こす。

「世界中のと話したいからネット配信。ファンと流するために、週一回の頻度で生放送も必要だね。顔は出せないから3DCGのアバターを使って、きはモーションキャプチャーかな? ここは技に詳しい人にアドバイスをもらいたいところだね……。後で皆に相談してみるか」

この世界は男比が偏っているだけで、文明レベルは劣るどころかし上だ。前世にあったシステムはこの世界でも當然ある。例えば畫サイトやチャット機能。生放送している人への投げ銭。そしてアバターを使った映像配信だ。

どの家庭もVR環境は整っているので、現実世界に疲れたが仮想空間にり浸る話も珍しくはない。その逆に、現実世界で暴れまわる人もいるけどね…….。

とにかく環境は整っているんだ、あとは僕がやると決まれば全てがき出すはず。皆に相談してアイデアを固めて母さんに相談かな。生放送で流して、コラムでプライベートのちょっとした出來事をつづる。なんだかできそうな気がしてきた。

ノートにまとめ終わると、通學バッグに押し込めて楓さんと彩瀬さんと一緒に家を出る。授業中もずっと映像配信の事で頭がいっぱいで、容はってこなかった。そんな僕は、晝休みになると飯島さんもって食堂の個室に直行。みんなに相談した。

3人から反対意見は出なかったし、

「私、將來のために映像の勉強をしていました。3DCG、配信に必要な技は一通り學んでいます。手伝わせてください!」

と、すぐに働けるようにと學んでいた技が僕の役に立つということで、特に飯島さんが積極的に賛してくれた。

モデリングから、僕のきに合わせてCGをかすモーションキャプチャーの使い方まで分かるそうだ。詳しい話はよく分からないけど、機材の購問題さえクリアすれば、僕の考えは実現できそうだ。

「みんなありがとう。家に帰ったら 母さんと絵さん に相談してみる。きっと説得してみせるから!」

こうしてコラムから始まったネットアイドル事業は、僕の想像を超える以上のスピードで新展開を迎えることになった。

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