《ぼっちの俺、居候の彼act.20/弁當

稚園の頃から、津月の事は可いと思っていた。

でも俺は好きという気持ちがわかんなかったし、ただ可くてし天然な彼と一緒に遊べてればいいやと、満足していたのだろう。

小學4年生になって、俺と揚羽、親父はDNA鑑定に向かった。

結果は教えられたけどその頃は意味が分からず、6年生の頃に診斷書を見つけて、その日から揚羽を守ろうと心に誓った。

母親の浮気は、もっと前から知っていた。

小學3年の頃、夏休みにたまたまやっていた晝ドラを見て得た不倫の知識が母親にし當てはまって、攜帯のメールを見るとしてるとか好きとか、そんな安い言葉を知らない男に送っていたから。

俺は昔からよく落ち著いてると言われたし、この事実は誰にも言わなかったし、親父も気付いてるようだったから、言うまでもなかったし。

でも、その時から俺はなんてクソだと思ったんだろう。

ただ、1番の要因は、中學の――

輝流てるる――

――君がボクを選ばないから――

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――だから死んだんだよ――

…………。

……。

×××××

悪夢だった。

中學3年、最悪な日を夢に見てしまった。

黒く、が垂れるようなカーテンから差し込むでさえ、今ではウンザリする。

「……はぁ」

隨分と早い朝だったが、俺はを起こそうとして――に引っ付く存在に気付く。

すぐ左に顔を傾けると、そこには髪を下ろした津月の寢顔が。

右に顔を傾けると、目の前には目を閉じた頭姫の顔があった。

昨日は作曲をしやり、風呂って炊飯に飯をれてすぐに寢たが、後から布団の中に潛り込んできたのだろう。

雙方から抱きつかれ、きが取れなくなっていた。

いや、らかいを得られてこれはこれで役得だし、目覚ましが鳴る前に起きたからもうしこの狀態を楽しんでもいいが――

「ってわけにもいかねーよな」

俺は2人の腕を、優しくかし退けて、パジャマながらも無防備に眠る2人を見て、俺はリビングに向かうのだった。

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(つーか、よくシングルベッドに3人もって、一晩誰も落ちなかったよな)

などとどうでもいい事を考えながら朝メシを作り始める。

そういえば最近、メシを作る時や洗いの時にヘッドホンをしていないが、料理中に話し掛けられるんだから仕方ないだろう。

思えば隨分と生活が変化していた。

音楽を作るだけの毎日が、今ではリビングで雑談して過ごす時間の方が長い。

知人も我が家に足を運ぶことが増え、ぼっちらしからぬ生活だった。

いくら俺がイケメンでバラの人生を送るいい男だからって、ぼっちじゃなくなるのは困る。

何が困るって、一番困るのは揚羽の被害が移ることだ。

津月はいいが、頭姫にまで被害が拡大すると、俺にはどうしようもない。

あと、に囲まれると俺に刺さる男子の視線が怖い。

というかそろそろチャラ男が俺に聲掛けて來ないかとビクビクするんだが。

「とっしぃぃぃぃいいいいいいい!!!!」

「あんだよ、うっせーな」

唐突に扉が開き、彼に余る頭姫のパジャマを著た、津月がプンスカ怒って出て來た。

髪が解けている津月を見るのは新鮮だが、怒り顔が全てを臺無しにしていた。

「何っ!? あの目覚ましの音何っ!!!?」

「呪いみたいなもんだ。おめでとう、今日がお前の命日だ」

「怖いじゃんっ!! 朝から最悪だよぉ〜……」

涙目でトボトボと洗面所の方に向かって行く津月。

が退室する代わりに、また1人リビングに現れた。

「朝からうるさいよぅ……。利明ぃ〜……」

「おう、おはよう。顔洗ってこい」

「……なんか、お父さんみたい」

「…………」

実際やってる事シングルファザーと変わらんしな――とは口が裂けても言えなかった。

困った事に、津月の分まで朝飯を作ったら弁當の分のメシが足りなくなり、俺の弁當は作れなかった。

當然その事は黙っていたが、津月の弁當も作らなかったのでおあいこだろう。

というわけで學校に向かうわけだが……。

「お前、制服ねーじゃん」

「今日はお仕事あるから、お休みするお☆」 

津月は仕事があるらしい。

おそらくアイドル関連なんだろうが、それなら良いや。

「じゃ、俺らは學校行くから。あ、これ合鍵な」

「合鍵くれるの!?」

「おう。お前は信じてる」

「うぅっ……ありがとーうっ!!!」

昨日の私服に著替え直した津月が抱きついてくる。

衝撃のあまり倒れそうになるが、今倒れると押し倒されるじになるし、そうすると頭姫が怖いのでなんとか堪える。

「來たけりゃ勝手に來て良いから。ただイタズラするなよ?」

「はーいっ♪ ふんふんふーん♪ 行って來まーす♪」

「おーう」

「ツッキー、行ってらっしゃい」

ドタバタして玄関を開け、津月は出て行った。

殘された俺らも、もう8時を過ぎていたので外に出た。

6月という梅雨の季節も過ぎたせいか、晴れた日が続いている。

それが幸か不幸か定まらぬものの、隣に歩く頭姫が笑っているので良い事にした。

校門を潛り、靴を履き替えて2-5へ。

まだし早い時間だが、既にちらほらと人が居た。

こんな時間から來てゲームしてる奴、話してる奴、頭姫みたいに勉強をし出す奴、いろんな奴がいる。

その中の1人が俺を見て立ち上がり、こちらへ歩いて來た。

この學校は髪染めOKだ。

だから津月も茶髪だし、金髪、赤髪なんてのも居る。

俺に向かってきた奴は短い金髪の男子で、ワイシャツの中からネックレスと紫のシャツが見え、見るからに不良だった。

しかし、名前は知らない。

「おい、お前」

低いのに明るい聲調の、変な聲だった。

いきなりお前とは失禮千萬だが、俺もコイツの名前を知らないから対等だろう。

おれは初めて頭姫に接したように、まずは敬語からった。

「何ですか?」

「お前さ、ツッキーと仲いいじゃん? なんで? お前、ぼっちなのにさぁ」

稚園と小學校が一緒で、よく遊んでたんですよ。まさかアイドルになるとは思いませんでしたけどね。しかし、思えば當時から可かったし、素質ってヤツなんでしょう」

小學校が一緒、という所まで聞いて、彼は納得したような顔をしていた。

まぁ、ぼっちの俺なんかが人気者の津月を獨り占めしてるじ?になるのが許せんのはわかる。

俺はなんで津月に人気が出るのか不思議なくらいだが、外見は大事って事だろう、うん。

はただのバカだしな。

稚園小學校が一緒で、あんなにベタベタするのか? まさかとは思うが、お前、ツッキーと付き合ってるんじゃねぇだろうな」

「彼が一方的に俺の事好きなだけで、別に付き合ってませんよ?」

「…………」

男はモノも言えなくなり、口をパクパクさせて魚みたいになった。

なんだよ、津月と付き合うチャンスある分にはいいだろ。

「付き合ってないんだから、いいじゃないですか。津月が好きなら、貴方がアタックを掛ければいい。私なんかより惚れられる存在になるでしょう」

「そ、そうだな……。なんか、悪かったよ」

「では作業をするので」

俺がヘッドホンを付けてMIDIキーボードを取り出すと、男はどこかに消えて行った。

って、どうせ教室の中なんだろうけど。

今日もいつもと変わらない、長閑な1日だ。

教室に來てからのルーティンは変わらない、いつものようにDAWを起させてし譜面を打ち込んで、朝のHRが始まるのだった。

「あっ」

という間に晝休みになったが、今聲に出した「あっ」は、驚きの「あっ」だ。

晝にもなると、こんないつも通りの日には弁當も持って來てると思ったが、鞄を手にした瞬間、持って來てない事を理解する。

仕方なく、俺は購買のある1階に向かった。

1年から3年まで、多くの人間が寄って集たかって飯を買い求める異空間は々苦手だが、ため息まじりに1階に降りた。

そんな時、ポンッと俺の肩を叩く手がある。

し暗い廊下で振り返ると、そこにはポニーテール頭の妹、揚羽が立って居た。

ついでに、その隣にはセミロングの金髪の子が居る。

誰だコイツ。

「やほっ、兄さん。最近楽しそうだね、関係が」

「よう、最の妹よ。関係言うな、友人関係だ。そして隣の奴は誰?」

俺が金髪の子を指差すと、揚羽がその指を握る。

めっちゃ力ってるし、折れそうなんだけど。

プンスカ怒りながら、揚羽は俺に叱責する。

「人の友達を指ささない! 彼はオリガ、ロシアから來たんだよ? 可いでしょ〜♪」

「ちょっ、アゲハ……」

揚羽はの子同士の特権とばかりに金髪の、オリガを抱きしめた。

ロシア出――今まで見た中で誰よりも白いを持っているし、カタコトだから腑に落ちた。

ふむ……。

「俺の周りさ、可の子多過ぎじゃね? 最近おかしいんだけど」

「私の周りが可いの! 私が可いからね、類は友を呼ぶってやつだよ」

「お前、頭姫しらねーじゃん。アイツもかなり人なんだけどな」

「あぁ、兄さんの居候? 私の周り、あんなのの比にならないぐらい可いから。みんなツッキーレベルだから」

「じゃあ妹経由でハーレムさせて頂こう」

華麗なる右ストレートが俺の左頬に決まった。

妹よ、いつから笑顔で人を毆れるようになったんだ?

兄さんは悲しいぞ。

「あ、アノ……」

「ん?」

「……ハジメマシテ」

「初めまして」

「…………」

挨拶が済むと彼は俯いてしまい、それ以上會話が続かなかった。

そんな彼に向けて、揚羽は再度抱きつく。

「オリガはね、まだ日本語勉強中だから、私が教育係なんだよ? だから、兄さんみたいなゴ○ブリと會話させないようにしなきゃ」

人って悪い蟲が寄るから大変だな。なぁ、人な妹よ」

「兄さん、殺すよ?」

何故そうなるのか。

ここまで嫌われると、かえってじる。

「さ、行こ、オリガ。こんな男と一緒に居たら、クズになっちゃう」

「揚羽は既に口ぶりがクズだから、安心していいぞ」

軽口を叩くも無視され、揚羽は上の階に上がって行った。

そういえば、揚羽は購買でメシを買ってるんだな。

この前も自販機で売ってるブリックパックの牛飲んでたし。

もし出來るなら、弁當を作ってやりたい。

揚羽と、津月と3人で昔みたいに過ごすのも良い。

そこに一彌や、頭姫がって……。

5人で弁當を広げられたら良いなって、そんな幻想を抱いたんだ。

それがいけなかったんだろうか。

世界は本當に、夢を持つ者に冷たいと思う。

《お母さん、余命3日だって――》

電話越しにそんな冷たい聲が聴こえたのは、夜の事だった――。

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