《四ツ葉荘の管理人は知らない間にモテモテです》冬海と図書室で

おれは春花と一緒にスーパーに寄ったあと帰宅したが、辺りはもう真っ暗だった。

「秋乃先輩と冬海、大丈夫かな?」

エントランスホールでエレベーターを待っていた時に、思わずこぼれた言葉に春花も頷いた。

「晩飯の仕度なら私がしてるから、二人を迎えに行ってきてくれる? やっぱり男の子も一緒にいたほうが安心だと思うし」

「ごめん、任せた。荷置いたら、行ってくる」

管理人室に荷を置き、春花に後を任せると、おれは學校に向かった。

連絡を取ると、秋乃先輩の部活はまだ終わってないらしく、冬海もまだ図書室にいた。

「ありがとうね、蒼太くん。きてくれて、本當に嬉しい」

冬海は頬を赤らめながら禮を言う。

「気にすんなよ、おれも春花も二人のことが心配だったから來ただけだし」

「それでも嬉しいものは嬉しいんだよ」

至近距離での冬海の笑顔に、なんだか恥ずかしくなったおれは話題を変えることにした。

「そういえばなんで冬海は四ツ葉荘から通ってるんだ? 別に実家は學校から遠くないだろ?」

冬海の顔が一気に赤くなる。なんだか聞いてはいけないことだったのだろうか。

「そ、それは、ほら……將をんとすれば馬から、とかなんとか……」

ん? 全然わからない。

「この場合、緑さんは馬で……って、なに言ってるんだろ……とにかく、緑さんと仲良くなりたかったから……かな?」

「よくわからないけど、そんなに姉ちゃんと仲良くなりたかったんだな」

「うん……まぁ、そんなじです……」

なんだか意気消沈している冬海とおれの間に、きまずい空気が流れる。そんな空気を壊してくれたのは、扉の開く音だった。

「おまたせ、冬海ちゃん、四ツ葉くん。遅くなっちゃってごめんね」

「そろそろ図書室も締めるから、気をつけて帰ろよ」

そこには小さな長に見合わないギターを背負った竜膽先輩と鍵を持つ立葵先生がいた。

「はい、わかりました。冬海、荷とか大丈夫か?」

冬海を見ると、なんだかさっきまでの距離より離れて立っていた。

「大丈夫、うん、みんなで帰ろっか! うん!」

なんだかやけくそな冬海に、みんなびっくりしたが、誰も冬海に聞くことはなかった。いや、聞けなかった。

「あー、蒼太、今日の晩飯はなんだ? それを楽しみにして、もうちょっと仕事を頑張るかな」

「うん、秋乃も楽しみ! 春花ちゃんがやってくれてるんだよね、あとでお禮を言わなきゃ!」

立葵先生の話題転換のパスは秀逸だった。竜膽先輩もそれに乗っかると、あとはおれがゴールを決めるだけだ。

「今日は、生姜焼きと味噌、あとサラダです。ふりかけと漬とか買ったので、飯も進みますよ」

二人は盛り上げるように、楽しみや味しそうと言ってくれる。段々、冬海も冷靜に戻ったようで、會話に笑顔を浮かべて相槌を打つ。

冬海の変な雰囲気がなくなったのをじ、立葵先生がドアを開けた。

「ほら、もう帰る時間だぞ。おいしいご飯と春花のためにさっさと帰れ」

立葵先生の言葉に、各々返事をし、三人で四つ葉荘への帰路に著いた。

「おかえりなさい! 晩飯できてるから、夏樹先生が帰ってくる前にお風呂どーぞ」

春花は管理人室で待っていてくれていた。しかもお風呂も準備してくれているなんてありがたい。

々任せてごめんな、あと、ありがとう」

「ううん、気にしないで。ほら、私もちょっと部屋に帰ってくるからお風呂って、癒されてきて」

春花はそう言って部屋を出ていった。やっぱり、今の生活は幸せだと実する。

今度は冬海の気持ちをもっとわかりたいな、と思いながら風呂に向かった。

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