《-COStMOSt- 世界変革の語》intermission-2:力への道
喫茶【野空ノゾラ】、そこは黒瀬宅から徒歩3分の喫茶店であり、私達もよく使わせてもらっている店。2人が向かい合って座るテーブルセットが2つと、ソファーの長椅子でテーブルを挾んだ4人席が3つ。その中で口からすぐの2人席で、私と競華くんは座っていた。
「……ワクワクするね」
「何がだ?」
「久方振りにキミと2人きりで話すんだ。キミほど理的で高貴な人間を私は知らない。対話ができるのを喜ぶのは、仕方ないことさ」
「……ふん」
競華くんは腕組みをしながら、鼻を鳴らしてそっぽを向いた。顔には出ないが、意外と照れ屋だからね。世間で言うツンデレというやつだろう。そんな事を言えば怒られるのは目に見えているし、口にはしないが。
前置きもほどほどに、私達は対話を始める。
「……文化祭が終わって、どうだい? 何か思うところはあるかね?」
「思うところ、か。ならば近な話をしよう」
競華くんは組んだ腕をほどき、右手で何かを摑むような仕草をする。
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「……力があるとしよう。筋力でも知力でも、資金力でもいい。力だ。しかし、その力はなんのために振るうのか。正しい使い道に力を使うとして、正しい道とは何か。議論をしよう、晴子――」
「…………」
威圧するような眼力を持って私の目をまっすぐ見てくる。近な話……それは北野くんだろう。文化祭も終わって――と、私は言った。文化祭で、北野くんは明らかに力の使い方を間違えている。弾を設置したり、幸矢くんを奔走させて王水の素材を集めさせたり、イタズラの度合いを超えていた。知識はあるというのに、無意味な事に力を振るうのはもったいなくて仕方がない。
「……北野くんは、自分が楽しければそれでいいという、自分を中心とした考えで行している。私自、その考え方は嫌いではないがね。力の振るわれ方を間違われると、正直困る」
「今回の件は、北野が弾を作った事を警察に言えば逮捕にでき、年院に送れた。しかし、何故お前はそうしなかった? 貴様も力の使い方を間違えてるんじゃないのか?」
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「…………」
強気な言いは相変わらずで無遠慮だった。競華くんにとっては、この議論も戦いの1つなのだろう。私もその戦いに盡くすとしようか。
「私は間違えてなどいないよ。北野くんを警察に突き出すのはいつでもできるだろう。私はそれだけの迷行為をけたし、送るのも手だった。……しかし、それでは更生することもできない。アレだけ曲がった格をしておるのだ、常人が彼を更生させるのは、骨が折れるだろう」
「ほう……。貴様が北野を更生する、と?」
「そのつもりだよ。私の"力"は話す事だけだ。言葉を持って人をる。だからこそ、北野くんも更生したいね」
「…………」
競華くんは再度腕組みをし、私から視線を逃した。思案しているのだろう、私とする會話を。
議論とは、駒のない將棋のようなものだ。相手が何を話すのかを予測し、その會話をシミュレーションして最終的に自分の意見を通す。そのためには相手を自分の話したい方に導したり、話せる範囲を狹くしたりする。相手の行の裏を読み、王手を決める。我々の會話はそういうものだ。
それでも尚、私は負けない。
何故なら――私が噓をつかないからだ。(※1)
「……晴子よ。貴様の力は私もよく知っている。多弁で話しながら相手の仕草から格、話す目的を見抜く観察力、人を従える統率力は目に見張るものがある」
「ほう。高く買ってもらえて栄だよ」
「しかし、その力を持ってしても、人間を構するには至らないだろう。対話を重ねるごとに相手も反論を重ねてくる。それはな、永遠に理解しあい、更生することなどできない」
「…………」
競華くんの言葉に、私はあえて頷いた。彼の言うこともまた正論だろう。互いに信念を持つものが議論をすると、その信念が折れない限りは反論を永遠にやり続ける。
でも、私が言いたいのはそうじゃない。
「――アルキメデス、知ってるかい?」
私の言葉に、彼は目を細めて記憶のページをそのまま朗読する。
「アルキメデス……古代ギリシャの數學者か。流靜力學、てこ、アルキメデスの原理……」
「そう、そのアルキメデスだ。彼の有名なエピソードで黃金の冠というのを知っているかな。王様に金の王冠が本當に金だけでできているか調べろと言われ、で悩んでいるうちに風呂にり、風呂の中で彼は、水に沈めた時の浮力を使えば解けると思いついた。彼は喜びのあまり服を著るのも忘れ、大通りをで走って帰ったそうだ」
「…………?」
競華くんはこの話を聞いて、何が言いたいのかわからないというような顔をしていた。しかし、彼は気付いているのだろうか? そうやってけでいるうちは、この対話は私のペースになっていると。
「――つまりだよ。真理や真相について閃き、はたまた理解をした時、人は知的好奇心が満たされ、最大限に喜びをじる。ならば、私は北野くんに。本當に正しい道を教えてやればいいだけのことさ……」
私の言葉に対し、競華くんの反論はなかった。
――ほら、噓をつかなければ勝ってしまう。真理、それは覆らない絶対の事実。つまり、真理を口にすれば、議論は全て勝つのだ。相手がちゃんと、理解できる者ならばね。そして、競華くんは理解できる者だ。私の言葉を理解するのだろう。
私は今まで、他の人の道を照らし、何が正しいのか、自分のためになるのか、それを説いたから築けた人徳がある。それを知っている競華くんが、私の言葉を否定することはできない。
「……。貴様の言い回しは、予想外で困る」
「そうかい? 私は大したことを言ったつもりはないよ」
「ああ……。他人の言葉を借りて話すのは、大したことではない。しかし、私は貴様の言葉に負けた」
彼は目を伏せ、潔く負けを認めた。しかし、これで良いのだろう。彼の"力"はプログラミングだし、私とは生きてる世界が違う。そのくせこれだけの地力があるのだから、敵に回したらいかに恐ろしいか、考えただけで嫌になる。
一応勝った私は、やんわりと勝ったことを認める発言をした。
「ははは。私が話で負けたら、私の特徴がなくなってしまうではないか」
「戯言たわごとを……幸矢の言う、漫畫みたいな握力があるじゃないか」
「……生まれ持ったものについては、私がどうこう言うことはできないのだが」
思わぬ話の逸らされ方に、私はため息を吐いた。漫畫みたいな握力、それは噓じゃない。生まれつき筋繊維が常人の3倍あったらしく、握力は右手で171kgある。努力で手にれたわけじゃないし、あんまり話題に挙げられたくない。
しかし、競華くんはここから話を繋げてくる。
「だがそれも"力"だろう? 他の人間よりも強いこと、それは力だ。人間の力は3つ。生まれ持ったもの、人生で築いたもの、他者からの贈與」
「自分で築いていない力に、一何の意味がある。意図せず手にした力を使って地位や名聲を手にれたって、人間は満足しないさ」
「……そうだな。努力をする中で人間は目的を持ち、目標を達する事で幸福になる。それも尊い幸福の1つだ。……ならば、努力により得た力は、自分の目的のために使う。それで良いのか?」
私はその問いに答える前に、1つ尋ねる。
「それは君が思っていることかい? 努力により得た力は、努力の中で掲げた標べを辿ると」
「そうだな、私の信念の1つだ。怠惰は嫌いだから、努力についてよく考える。名前も"競華"だしな」
「……そうかい」
私は微笑んでその言葉をけ止めた。
競い勝つ華。彼の名前の由來はそれだけだ。深い意味があるより、1つのまっすぐな意味というのも、私は好きだ。
競う、つまりは戦い。戦いに勝つには武――知恵や策略、筋力や力が必要だ。それを得るには力、努力が要る。だからこそ、彼は力について語るのだろう。
「話を戻そうか。そうだね、目的のために使う。それはよい事だ。自分の目的を達し、幸福になる。……幸福は人間の生きる究極的理由だからね。それはとてもよい」
一度口を閉じ、目も閉じる。
質問の中を考えると答えるのが難しいが――そうだな。矢張りこう答えよう。
「でもね、他人も幸せならもっとよい。人間の生きる目的自は幸福だ。他人も幸せにできれば、それはよい事だろう?」
「だがそれでは、"他者は努力せず幸福になって良い"ということになるが?」
実に正しい質問の切り返しだった。キミならそう返してくるだろうと思っていた。
競華くんは愚者が嫌いだ。だからいつも獨りで居る。誇りさえあれば寂しさなどないし、気高き者は常つねに孤獨なのだから。
しかし、私は彼の友として在る。――それは"力"によって得たものだ。(※2)
「殘念だが、キミの言うことは違うよ。力ある者は力なき者に教えればよい。目的を得て、幸福になるための道しるべを。人をその軌道に乗せることができれば、労せず幸福を得るということはなくなる。だからね、他人に幸せになる道を示すだけでいい。それが力ある者が愚か者へしてやることだと思う」
そう思うからこそ、私はこれまで活できた。生徒會長として、クラス委員として、人に道を示してきた。これが最大の人助けだと思って――。
「……そうか」
「納得してくれるかな?」
「……。ああ。貴様という人間に言われれば、納得せざるを得まい」
競華くんは深く溜め息を吐いた。どこか呆れるような、それとも安心するような、そんな仕草に私は微笑みを返すのだった。
※1:真理という事実は覆らないため、真理という本當の事を言えば言論に負けることはない。つまり、噓を言わなければつけいる隙もないということ。(例:人間の生きる最終目標は幸福であること)
※2:晴子は競華に、生きる方向を示していないし、競華は自分の生きる道は自分で決めている。しかし、2人が仲良くなれたのは晴子の力であることに間違いはない。
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