《何もできない貴方が大好き。》登校
三上家の玄関で伊吹を待つこと5分。
バタバタ急ぎ足で制服に著替えた伊吹が來た。
靴を慌ただしく履きながら伊吹は言う。
「...ごめんね!ほんっと毎日ごめん!!」
「いいよいいよ、ほら行こ」
こうやって必死に謝られるのもいつものこと。
伊吹にはちゃんと反省のは見えているが、毎朝ギリギリまで寢ている。
以前、伊吹のお母さんは毎日寢坊してしまう伊吹を見て、困った顔で私に言ってきたことがあった。
『いつもごめんね。千聖ちゃんも遅刻しちゃうかもしれないから、置いて行っていいわよ』
きっと気を遣ってくれたのだろう。
でもその時の私は首を橫に振った。
だって私は、伊吹と一緒に行きたいから待ってるんだから。
その思いはあの時から何年も経った今でも絶対に変わらない。
「「行ってきます!」」
私と伊吹は稚園から高校全てが同じなので、かなり多くの時間を一緒にいる。
こうやって學校に登校するときもいつも一緒に歩いて行っている。
登校中、橫を見るとそこにはいつものように眠そうな伊吹がいた。
元々パーマがかかった髪が寢癖でさらに酷くなっている。
中高男子の制服はブレザーで、ネクタイをするきまりになっているから毎日ネクタイしてきているのに、伊吹は一向にネクタイを結ぶことができないまま。
寢坊して慌てていたこともあるだろうが、ネクタイはうまく結べてないし、シャツは新しいのにシワシワだった。
もう高校生になったのに、伊吹はだらしない。
だからこそ、私がいてあげなくちゃ。
私は別に構わないんだけど、他の人からするとちょっと印象悪いんだろうな。
初日だから印象は大切だ。
そう思ったので、まだ時間はあるか確認して、伊吹を引き止めた。
「...ん?なぁに?」
「かがんで。屆かないから」
私たちの仲は今も変わらないが、今では長に私が見上げるまで大きく差がでた。
伊吹は稚園の頃から泣き蟲なのが今と変わらないのに長は180センチもある。
私は150センチちょいしかないから、かがんでもらわなきゃ、髪を溶かせないのだ。
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