《彼が俺を好きすぎてヤバい》うまく言えないが、とにかくヤバい。(2)

「つーばーさーくーーん」

か細い聲とともに、トン……トン……と、窓を叩く白くて小柄な手のひら。

どうやってここまで? いったい何をしに? 沢山の疑問が浮かぶ中、彼が続けて言う。

「夜這いにきたよぉ」

「帰れ」

迷わず即答する。

「なんで!?」

「目的にたいして一番危険で功率が低い方法を使う奴があるか」

相部屋の男子寮なんて、俺以外の奴が部屋にいたらアウトな上に、見つかったら退寮ものだ(俺が)。

「心配しないでぇ。ドアは開かないようにしてあるからぁ」

語尾にハートマークを付けるくらいの甘い聲とは裏腹に、騒なことを言う。慌てて確認すると、廊下に出るドアは、鍵もかかっていないのにびくともしなかった。

「でも、誰か來る前に中にれてぇ」

「斷る」

「銀髪碧眼の眉目秀麗なつばさくーん。お部屋に・れ・て」

「黒髪貓目の天真爛漫なはるかさん。見た目を譽めても開けませんよ」

「しょうがない……。【施錠解除おぉぷーーんせさみー!! オープン!】」

遙はるかがびながら指を下から上に振ると、鍵が獨りでにいて解錠される。

ガラリと窓が開く音がして、カーテンの向こうから薄手の下著ベビードールを著た華奢なが、夜風にショートボブを靡なびかせて、部屋にり込んできた。

「【荒縄でー、拘束!】」

遙はるかが続けてぶと、彼が後ろ手に持っていた縄が蛇のように波打ち、瞬時に俺のに巻き付いた。急にきが取れなくなった俺は、なすすべもなく背後のベッドに倒れこむ。

「さァ、観念するのデース」

倒れた俺の上に馬乗りになった遙はるかが、怪しげな聲を出しながら、ズボンのボタンに手をかける。俺は懸命に止めようとする。

「まーっ! ちょ、まって」

「待たないもーん」

「いやいやいやいや。なんだこれ。ギャグ? お前がやろうとしていることと、この絵面のギャップ!」

「翼つばさくんが混しているうちがチャンスなのでーす」

「意味分かんねえよぉ!」

「ぬふぬふ」

経験上、こいつがこういう謎の擬音を使った笑い方をしているときは、何を言ってもダメだ。

しょうがないので、深くため息をつき、深呼吸をし、なるべく落ち著いてから靜かに話しかける。

「遙はるか」

俺の聲に、彼の手がピクリとして止まる。

「ほどいてくれないか?」

優しく語りかけたつもりだったが、遙はるかは悲しそうな顔で首を橫に振る。

ダメ押しに、小首をかしげながら切なげに言ってみた。

「これじゃあ抱きしめることもできないだろ?」

俺たちはしばらく黙って見つめあうだけだったが、彼が観念したように下を向いたまま俺にかけた縄をほどいた。

俺がほどけた縄を振り払って脇にどけている間、遙はるかはずっと俯いている。

縄をどけて、そっと両腕を広げる。遙はるかが無邪気に俺のに飛び込んできた。

そんな遙はるかを、シーツでけ止める。

「!??」

している遙はるかをよそに、手早く簀巻すまきにして、さっきの縄でぐるぐる巻きにしていく。

「のー! のー!!」

遙はるかが自分のおかれた狀況に気づいて騒ぎ出したときには、作業が完了し、俺は放置していた紅茶をすすっていた。遙はるかが來る前に淹れたものは、すっかり冷めていた。

「ふえーん……ふえーん……」

あまりにも悲しげに泣くので多の罪悪に苛さいなまれる。

頭をでてなだめながら、ひとまずドアを解除してもらおう……、と口を開く前に、激しくドアを叩く音が聞こえた。

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