《ACT(アクト)~俺の婚約者はSな毒舌キャラを演じてる…~》と妹って別腹だよね?

新町エリカ達による拉致事件から數日後の晝休み。

俺はなごみと二人、今日も貸し切り狀態の屋上でなごみが作った弁當を満喫していた。

「奏太君、やっぱりまだ痛い…?」

「ああ。さすがにあんだけ毆られたからな。口の中はまだ口炎だらけだな」

ちなみにあの事件後、なごみは二人っきりの時だけ”素の格”に戻すことにしたらしい。

「本當にごめんね…」

「だから気にすんなって言ったろ?それに口も全然食えない程痛いわけじゃねぇし、こんなのすぐ治るって」

自責の念にかられてシュンとするなごみ…。

ヤバい…めちゃくちゃ可いんですけど…。

昔の大好きだった頃そのままの彼の姿に、心テンション上げ中の俺。

どれくらいテンションが上がっているかというと、未だズタズタの口に勢いよく弁當をかきこんでも痛みをじない――

「!!!」

「そ、奏太君!?そんなに急いで食べるから…大丈夫!?保健室行く!?」

「だ、大丈夫だ…」

すみません、噓です。普通に口の中めっちゃ痛いっす・・・。

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「ま、まぁそれはさておき、あの後アイツらはどうなんだ?」

俺は涙目になりつつ、これ以上ボロを出さないように話題を変えた。

「あぁ、新町さん達のこと?」

「ああ」

まぁ、実際気になってはいた。

実際事件後すぐに俺となごみに謝罪してきた新町達だったが、その時の態度はとても反省しているようには見えなかったし、まだ恨も殘ってるっぽかったからな。

俺が知らないだけで、また裏でコソコソやってなければいいんだが…。

「うん、大丈夫だよ。ちゃんと謝ってくれたし、後から何かされたりもしてない。まぁ、私のことが嫌いっていうのは今も変わってないみたいだけど…」

俺の問いかけになごみは苦笑じりにそう答えた。

「そっか。まだ懲りずに嫌がらせしてくるようならこっちも対応考えなきゃいけないと思ってたが…それは必要ないみたいだな」

「うん、大丈夫!心配してくれてありがとう!」

曇りない笑顔で返すなごみを見て、俺がとりあえず安堵していると、

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「あ、そうだ!」

なごみが何か思いついたように手を叩いた。

「あ?なんだ?」

「今週の土曜日、奏太君の家行ってもいい?」

珍しくを乗り出し目を輝かせる我が彼

「ああ、別にいいぜ?でもなんで俺の家なんかに――!!」

そこまで言いかけたところでハッと気が付いた。

そういえばあの拉致事件でうやむやになってはいたが、元々はあの日俺達は自宅デートをする予定で、なごみの奴も完全に”その気”になっていた。

と、ということは…まさかそういうことってことでいいんでしょうか!?

「そういえばこっちに戻ってきてから、まだおばさんに挨拶してなかったから――」

「大丈夫!俺以外の家族もその日は外出させ――オホン!ゴホン!!ゴハン!!」

…なんとか咄嗟に咳込んで誤魔化すことに功したらしい。

「だ、大丈夫…?」

「お、おう!大丈夫だ!」

あぶねぇ!めちゃくちゃちゃんとした理由じゃん!!勘違いして一人舞い上がるところだったわ!!

「いや、ごめんね。うちのお母さんが挨拶行って來いってうるさくて…。ほら、うちのお母さんと奏太君のお母さん仲良かったじゃん?うちのお母さんはちょっと仕事が忙しいらしくてまだしばらく挨拶に行けないらしいんだけど、私だけでも行ってきなさいって…迷だった…?」

「い、いやいや!全然迷なんかじゃねぇよ!!むしろうちの母さんも喜ぶと思うぜ!?」

っていうか、この前のやり取り踏まえれば普通”そっち系”の思考になっちゃうでしょ!なんでこの子はこういう時に限って俺と真逆の思考しちゃうの!?空気読もうよ!空気!!

「本當にいいの…?」

「OK!OK!むしろ大歓迎だっつーの!!ほら、母さんだけじゃなくて妹の栞も喜ぶだろうし!!」

「そっか、よかった!――ありがとね!」

なんとなく、この時ばかりはコイツの純粋な笑顔を真正面から見れなかった…。

「でも、そっかぁ。栞ちゃんと會うのも久しぶりだなぁ。確か栞ちゃんも今年高校生だよね!?大人っぽくなってるのかなぁ」

俺がうしろめたさをじている中、なごみはそんなこと気付くことなく、昔の記憶を懐かしんでいた。まぁ、コイツと栞、結構仲良かったもんな。

「栞ちゃんにも早く會いたいなぁ」

「?そんなに會いたいならすぐにでも會えるだろ?」

「え?どういうこと…?」

……あ、そういえばいろいろあって言うの忘れてたかも。

「いや、栞なんだけど、実は――」

――と、まだなごみに未開示の報を伝えようとしたその時…

ガチャ

不意に屋上の扉が開かれ、一人の生徒がってきた。

お!もしかしてわざわざ説明する必要なかったか?この流れでってくる奴といったら――

「いやぁ、すまん!今日は遅くなっちま――」

「お前じゃねぇよ!!」

「…え?」

ってきたのはまさに今、現在進行形で噂をしていた我がしの妹…ではなく、ただのハーレム王だった。

「いや、出會い頭に辛辣過ぎじゃね!?俺なんかした!?」

「いやぁ、マジで空気読もうぜ…?完全に今の流れは俺の妹登場の奴だったじゃん?」

「知らねぇよ!!」

大きなため息をらす俺に元気よくツッコミをれる俺の親友・太田平。

時計を見ると既に時刻は12時半を回っていた。どうやら今日は自らのハーレム達を撒くのに手間取ったらしかった。

「こんにちは、太田君」

「よっ、なごみちゃん。今日も相変わらずその喋り方なんだね…」

「當然でしょ?あなたとは約束があるから可能な限りキツイ言葉は吐かないつもりだけど、喋り方に文句をつけられる筋合いはないわ」

「はは…相変わらず辛辣だね…」

そして、あっという間になごみは”人前用の毒舌キャラ”へと切り替えていた。

あくまでなごみが”素の格”を見せるのは俺と二人の時だけ。

実際、第三者がいるときは”人前用のキャラ”にすることを頑なに貫く彼は、今のように突然第三者が現れた時でも用にキャラの切り替える。この変わりの早さ、最早達人技と言ってもいいかもしれんな…。

「それで、何の話してたんだ?」

「ああ、俺の妹の話だよ」

「ああ!栞ちゃんか!!確かこの學校にいるんだよな」

「…どういうことかしら、奏太君?私聞いてないんだけど」

…うん。さっき言おうと思ったんだけどね?

「悪い。話すタイミングなくて…」

「いえ、大丈夫。奏太君の間の悪さなんて想定よ。むしろ最初から期待なんてしてないわ。というより、奏太君には何の期待もしてないわ」

「…なんかお前、平に毒吐けない分、俺にぶつけようとしてない?言っとくけど俺の心、結構繊細だからね?あんまり言われると泣くよ?」

「心配ないわ。泣いてしまったときは泣き止むまで優しくめてあげるから」

「とんだマッチポンプもあったもんだな!!」

例の一件以來、どんどん鋭さを増す彼の言葉の暴力に対処する俺。最近徐々にこの役割にも慣れてきたことは喜んでいいものなのだろうか…。と、小さな悩みを抱く中、

「それで、お前の可い妹ちゃんがどうしたって?」

平が冷靜に話を戻した。が、しかし…

「おい、平。お前言い方には気をつけろよ?」

「何が気に食わないんだよ?お前がゴチャゴチャうるさいから、ちゃんと”可い”妹って言っただろ?」

「アホか!”可い”じゃねぇ!”超絶可い”に決まってんだろうが!!」

一応知らない人のために教えておいてやろう。――俺はシスコンだ。

勿論人的な意味で好きなわけではないが、もし『妹と世界平和どちらを選ぶ?』と聞かれれば迷わず”妹”と答えるくらいにはシスコンだ。

そして、妹の方もブラコンだ。

高校生になった今も休みの日に、『お兄ちゃん、一緒に買い行こ!』とってきたり、朝に弱い俺のため、毎日『お兄ちゃん起きて!』と起こしてくれるくらいのお兄ちゃん大好きっ子だ。

「つまり、何が言いたいかというと…俺と栞は両想いってことだ!わかったか!!」

「いや、分かったけど…お前それ、婚約者の前で言うセリフじゃないだろ…」

「……」

あ…すみません、完全に失念していました。

「い、いやいや!妹は家族じゃん?そもそも人とか婚約者とは別だろ?」

「婚約者もほとんど家族みたいなものだと思うけど?」

「ほ、ほら!よく言う”ラブ”と”ライク”の違い的な――」

「なるほど。つまり奏太君は栞ちゃんのことをしていないってことでいいのかしら?」

「…ほら!家族ってあるだろ!?それだよそれ!!」

「へぇ」

ジト目を向けるなごみ…。おそらく俺の顔面の筋達は引くほど引きつっていたことだろう。

「あ、あの…なごみさん…?」

の嫉妬ってマジでこえぇ…。――心の底からそう思いながら焦っていると、

「ふふっ、冗談よ」

「…え?」

不意になごみが噴き出した。

「ふふっ…ごめんなさい…けなくオロオロとしている奏太君が面白くてつい…」

「おい、笑いすぎだろ…」

結局弄ばれてるだけだった。全く笑いこらえられていない様子に若干イラっとした俺だったが…実に楽しそうななごみの顔を見て、そんな気持ちはすぐに失せた。……まぁ、元々悪いのは俺だしな。

「かははっ!奏太、お前バカだろ!」

「お前は笑うんじゃねぇよ!」

だけど、この時の俺は知らなかった……この數日後、冷靜さを失う程溺している妹と俺自との関係にヒビがってしまうということを…。

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