《ACT(アクト)~俺の婚約者はSな毒舌キャラを演じてる…~》すみません、”妹ルート”はフィクションの中だけでお願いします…
「お兄ちゃん!早くしないと學校遅刻しちゃうよ~」
「ん…あと1時間…」
「長いよ!せめて分単位で要求してよ!」
「じゃあ、あと60分…」
「正解!――って、そういうことじゃなくて!早く起きてよ~!」
朝。
今日もいつも通り“しっかり者の妹に起こされるお兄ちゃん”という誰もが羨むイベントを堪能しながら目を覚ます俺。
薄目で聲のする方を見上げると、そこにはし頬を膨らませながらも甲斐甲斐しく兄を起こそうとしている妹の姿が。
我が最の妹、藤岡栞。――ショートボブで整えられし茶がかった髪、ぷくっと膨らませていることによって一段とらかそうに見える頬、き通るような白い、パッチリとした大きな目…全ての要素が彼をだと証明している。
え?こんな妹に毎朝起こしてもらえるなんて羨まし過ぎるって?
いやいや、確かに誰もが羨むシチュエーションであるのは否定しないが、こうも毎朝験していると、正直ありがたみも薄れてくるというものだ。実際に験してみれば分かるはず。
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……とまぁ、そんなことを言いつつ、俺が、毎朝可い妹が起こしに來てくれるのを、実は毎日心待ちにしているのは言うまでもない。
――大丈夫!自分がシスコンであるということは自覚しているから!!
「もう…ご飯できてるから早く著替えて降りてきてね!」
心の中で誰に対してか分からない言い訳をしながら布団にくるまり続けていると、當の妹は若干呆れたような顔でため息をつくと、さっさと下の階にあるリビングへと降りて行ってしまった。
「さ、毎朝恒例のイベントも終わったことだし、さっさと起きるか」
この後すぐに俺が起き上がったのは言うまでもない。
妹による”お兄ちゃん早く起きてよ!イベント”が終わってしまった以上、もう布団にくるまっている意味などないからな。時間は有限なのだ。
「さて、今日の朝飯はなんだろうな」
既に用意されているであろう、妹が作る朝ごはんに若干テンションを上げつつリビングへと降りて行くと、
「あ、お兄ちゃん!洗い片付かないから早く食べちゃって!」
既に朝食を終えた妹が洗いをしていた。
両親ともに朝早く仕事に行ってしまうため、我が家の朝食登板は妹が擔當してくれている。
毎日自分の準備もあるというのに、お兄ちゃんを起こしてくれるだけでなく朝飯まで作ってくれるなんて…本當によくできた妹だ。
「お兄ちゃん…なんで泣いてるの…?ちょっと気持ち悪いんだけど…」
ちょっと引き気味の栞ちゃん…もしかしてこれがよく聞く反抗期という奴だろうか。だが、俺はこんなことでくじける弱な心は持ち合わせていない。
「すまんな、栞。ちょっとお前の可さと嫁力の高さにしちまってな…」
「なっ!?って、あ!!」
ガシャン!
流し臺に洗っている最中のフライパンを落としてしまったらしいが、ケガはなし。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫!――もう…お兄ちゃんが”可い”とか言うから…」
恨み節を言いながらも顔は真っ赤に染める栞。
うん、今日も安定の可さだな。やっぱり朝は栞のツンデレを見ないと始まらん。
「もう!さっさと朝ご飯食べちゃってよね!!食全然片付かないじゃん!!」
「悪い悪い。――じゃ、いただきます」
「召し上がれっ!!」
今日も俺は妹のツンデレを眺めながら味しい朝ご飯を食べ始めた。これだけで白飯3杯はいけるね!
「あ、栞。そういえばお前、波志江なごみって知ってるか?中學の頃までよくうちに遊びに來てたんだが」
ふと、今週末なごみがうちに來るということを思い出し、今のうちに栞にも伝えておこうと話しを振ってみた。
「え?波志江なごみって…もしかしてなごみちゃんのこと?」
「そうそう。実はアイツ、うちの高校に転校してきてさ」
「えぇ!!本當!?」
驚きのあまり洗いの手を止めこちらを振り返る栞。
「ああ。それでアイツ、今週の土曜にうちに挨拶に來たいって言ってんだけど――」
「會いたい!私もなごみちゃんに會いたい!!」
『予定ないんだったらお前も會わないか?』と聞き終わる前にOKの返事が返ってきた。それにしてもめちゃくちゃ食いついてきたな。
まぁ、コイツ結構なごみに懐いてたみたいだし當然っちゃ當然か。
「なごみちゃん、久しぶりだなぁ。前會ったのって4年くらい前だっけ?可くなってるんだろうなぁ」
昔の姿から現在のなごみの姿を楽しそうに思い描く栞。
「あ、そういえばお兄ちゃん。なごみちゃんとは結局どうなったの?」
「は?どうなったって…何のことだ?」
「もう…今更誤魔化すことないじゃん。なごみちゃんがお兄ちゃんのこと好きだってことは誰でもわかるレベルだったし。お兄ちゃんも好きだったんでしょ?なごみちゃんのこと」
「なっ!?」
今度はあからさまいニヤニヤしながら問いかけてくる。
え?確かになごみが俺のこと好きってのはバレバレだったけど、俺の方もバレてたの?
「え?もしかしてお兄ちゃん、あれで誤魔化せてるつもりだったの?」
「え?…もしかしてバレてたの…?」
「もしかしなくてもバレバレだよ!っていうか、むしろ気づいてないのお互いだけだったんじゃない?」
「い、いやいや!俺めちゃくちゃポーカーフェイスだったし――」
「いや、モロ顔に出まくってたよ…?逆にあれでポーカーフェイスのつもりだったってことの方が驚きだよ…」
マジかよ…。上手く隠してるつもりだったのに…。っていうか、本人は誤魔化せてるつもりで周りにはバレバレって、めちゃくちゃ恥ずかしい奴じゃん!!
……まぁ、いいか。無事にも就したわけだし。
「それで?結果はどうなったの?もしかして、まだどっちも告白してないの!?」
さらにを乗り出してぐいぐい質問してくる可い妹。
そういえば栞にはなごみと付き合ってるどころか結婚の約束してること言ってなかったな。
ちなみに、この前母さんになごみが転校してきたことを話したら、まだ誰にも報告してないはずなのに、何故か俺達が結婚の約束をしていることすら既に知っていた…。なんか俺のプライバシー家族に筒抜け過ぎじゃね…?
「あ~、そういえばお前には言ってなかったか…。実は俺達、今付き合ってんだよ」
まぁ、當時から俺達が両想いだったことは知られてるっぽいし、今更隠すようなことでもないもんな。っていうか、どうせ今週の土曜までには言うつもりだったし。
――などと考えながら、俺は何でもないような口調で告げた。
「あ~やっぱりまだ告白してなかっ……え?なんだって…?」
どうやら栞の中では、未だに俺達が互いに意識しつつもじれったい関係を続けている景を思い描いていたのだろう。俺の答えに、自分の耳の方を疑い聞き返した。
「いや、だから俺達、今付き合ってんだって。―-あ、でも、既に結婚の約束もしてるから、関係的に言えば俺達は人じゃなくて、”婚約者”ってことになるな」
「え!?付き合って…っていうか、結婚!?噓でしょ!?いつの間に!?」
「栞、とりあえず落ち著こうか…。俺、めちゃくちゃ揺らされてるから…」
余程驚いたのか、無意識のうちに俺の襟を摑み前後に揺さぶるほど取りす栞。
「ご、ごめん!――でもそっか…二人、付き合ってるんだ…」
ようやく解放された…。ちなみに、今の揺さぶりで俺のワイシャツの第一ボタンは弾け飛んでしまったらしい。
「いや、お前驚きすぎ…っていうか取りしすぎだろ」
「ごめん、この展開は予想してなくって…」
未だに信じられないといった様子の栞。
まぁ、そこらのラノベとかであれば”実は妹も俺のことが好きで、ここから兄妹の関係がギクシャクしていく…”――なんてベタな展開が待っているのだろうが、うちは違う。
確かに、俺は栞のことが大好きだし、栞も俺のことが大好きなはず。だが、それはあくまで家族として…兄妹としての。人としてのとは別なのだ。
むしろ、栞なら俺となごみの関係を祝福してくれたり、なごみの義妹になることを喜んだりするはず。
「安心しろ、我が妹よ!お兄ちゃんはたとえ彼ができても、妹へのをないがしろになんてしない!むしろ妹へのはこれまで以上に増してるから!!」
「そ、そっか…。お兄ちゃんもついに彼持ちかぁ…」
……あれ?なんだろう…心なしか栞の表が寂しそうに見えるんだが…。
「おめでとう、お兄ちゃん!なごみちゃん泣かしたりしたら、許さないからね!――それじゃあ、私先に行くから…」
「え?お、おい!栞!?」
栞は誤魔化したような笑顔を見せると、まだ洗いも途中だというのに逃げるようにして臺所から飛び出して行ってしまった…。
一人取り殘される俺…
言っておくが俺はハーレム系ラノベに登場するような鈍系主人公などではない。むしろ他人の言には敏過ぎるくらいだ。
したがって、このような場面で『アイツ、急にどうしたんだよ…』とかほざくつもりは頭ない。
そして、そんな俺が思うにこの狀況は…
「おいおい、これ…もしかして、フラグ立っちゃったんじゃね…?ここでまさかの”栞ルート”突…?」
現狀からそんな分析結果を導き出した俺の顔が引きつった笑みを浮かべていたのは言うまでもなかった…。
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