《ACT(アクト)~俺の婚約者はSな毒舌キャラを演じてる…~》お兄ちゃんだけじゃない…私にとってはお義姉ちゃんも憧れの存在です。

――誰か…助けて…!!

知らない男の人に絡まれて、強引に連れていかれそうになっていた私達。

「あなた達、待ちなさい!!」

そんなピンチに駆け付けてくれたのは、意外な人だった。

「!!」

「波志江先輩!!」

振り返るとそこには、肩で息をしたお兄ちゃん…ではなく、その彼――なごみちゃんが立っていた。

「な、なごみちゃん…?なんで…?」

「さっきはいきなりのことで言いそびれたけど…どうしても栞ちゃんに言っておきたいことがあって追いかけて來たのよ。――まぁ、どうやらそんな場合じゃないみたいだけど」

は私達の狀況を見ると、男達の方へ不敵な微笑を浮かべて見せた。

今ここにいる彼は”私の知っているなごみちゃん”じゃない…それは分かってる。

それでも、自分のことより彼を案じずにはいられなかった。

だって…見えたから…。言葉や態度とは裏腹に恐怖に怯える彼の姿が…。

「おいおい、お嬢ちゃん。なんだよ急に」

「もしかして君も仲間にれてほしいとか?」

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「あら、寢言は寢て言うものよ。どうして私があなた達みたいな犯罪モブ男達の仲間にらなければいけないの?」

下卑た笑みを浮かべながらからかう男達に対して、全く臆することなく、嘲笑じりに皮を返すなごみちゃん…

「おい、誰が犯罪モブだって?あ?」

「お嬢ちゃん、あんまり生意気なこと言ってっと、犯しちゃうよ?」

「ほら、やっぱり犯罪者じゃない。しかもそうやってすぐにキレるところを見ると、知能も低能なようね。低能犯罪モブ男…ホント救いようがないわね。ここまでくると逆に哀れだわ」

これだけ偉そうな上から目線で毒を吐きまくり、小バカにしたような言で相手を煽りまくっていながらも、よく見ると彼の足は小刻みに震えている。

何でこの狀況で強がっていられるの…?

何でさっきあれだけ言いたい放題言われた相手のために、そんなに無理できるの…?

何で逃げないの…?なごみちゃんだって怖いんでしょ!?私達なんて放っておいてさっさと逃げなよ!!

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――何度もびそうになりながら、口には出せなかった。だって、なんとなくここで口を挾むことで必死に戦う彼の想いを臺無しにしてしまうんじゃないかと思ってしまったから…。

そんな中、ふとじた――あれ…?こんなこと、前にもあったような…。

が、しかし、狀況はその記憶を思い出そうとすることを許さなかった。

「テメェ、俺らがには手出さねぇと思ってんじゃねぇだろうな…!!」

「いくらでもここまでコケにされちゃあ、俺達も我慢の限界って奴だぜ」

男達が自分達に対して舐め切った態度を取り続けるなごみちゃんに暴力をチラつかせ始めたのだ。

が、しかし…

「なるほど。結局言葉では勝てないから力づくでって発想…ホント単細胞ね。逆に複雑な悩みがなさそうで羨ましいわ」

「テメェ!!絶対ぇ泣かす!!」

「もう泣いて謝っても許してやんねぇからな!!」

それをけてもなごみちゃんの態度は全く変わらず。

それに腹を立てた二人の男のうち一人は走った目で拳を握り、ズンズンと彼との距離を詰めていき、

「やってやれ、シンヤ!」

「なごみちゃん!」

「波志江先輩!!」

そして、その距離はゼロに…。しかし、

「毆るならどうぞご自由に」

それでもなごみちゃんはまったく引かず…

「テメェ!!」

「――ただ、あなた達が警察のお世話になりたいのなら、の話だけど」

「!!」

手足すらしもかすことなく、言葉だけで男からのきを防いで見せた。

「何もそんなに驚くことはないでしょう?――だって未年の拐未遂に婦暴行未遂…どれも立派な犯罪よ?それに、さっきから數はないけれどここを通り過ぎていった通行人は何人かいたわ」

「は?テメェ何言って――」

「あら、これだけ言っても分からないのかしら。さすが単細胞さんは違うわね」

「あ?ふざけんじゃ――」

「私はこう言っているのよ。――あなた達のやっていることは犯罪で目撃者もいる…つまり、私が被害を訴えればあなた達は立派な犯罪者の仲間りってこと」

「「!!」」

男達は目を見開き、なごみちゃんに毆りかかっていた男は慌てて拳を引っ込めた。

「一応言っておくけど、これ以上私やその子達に危害を加えた瞬間に私は警察に駆け込ませてもらうわ。見たじあなた達は未年ってじではないし、法で裁かれるのは確実ね」

男達が何も言い返せず青ざめる中、緩めることなく畳みかける彼

「単細胞に加えて、今後は”未年に手を出したロリコン犯罪者”という肩書がしいのなら、煮るなり焼くなりお好きにどうぞ?」

立場は完全に逆転していた。

そして、

「…チッ!もう行こうぜ?」

「テメェ…次會った時は覚えてろよ?」

結局冷靜な判斷をした二人の男は捨て臺詞を吐いて立ち去って行き。

なごみちゃんはその後ろ姿が完全に見えなくなったのを確認すると…

「二人とも大丈夫!?」

「ちょっ!?」

「く、苦しいです、先輩…」

慌ててこちらに駆け寄ってきて、勢いよく私達二人に抱きついてきた。

「もう…本當に、心配したん、だから…!!」

そして、抱きついたまま嗚咽をらす…。

「な、何で私達のために…自分だって怖がってたくせに…」

「だって、二人が困ってたから…」

「でも!私、さっきなごみちゃんにあんなに酷いこと言って…」

「そんなの関係ないよ!そんなの、栞ちゃん達を見捨てる理由にはならないよ!!」

嗚咽をらしながらみっともなく泣きながらぶ姿からは、先ほどまでの偉そうで堂々とした振る舞いは見る影もなく…すっかり私のよく知る”昔のなごみちゃん”に戻っていた。

――そうか!そういえばあの時も!!

その姿に私ははっとして、さっきから思い出しそうで思い出せなかった一つの出來事を思い出した。

※※※※

――あれは、確か私がまだ稚園でなごみちゃんが小學校に行き始めたばっかりの時。

その日はたまたまお兄ちゃんがいなくて私となごみちゃんは二人だけで遊んでいた。

そこで、私達は運悪く放し飼いの大型犬に遭遇してしまい…

『ワン!ワン!ワン!』

『ヤダ…こっち、來ないで…』

勢いよく吠えられた私達は泣きながら怯えていた。

普段ならこういう時は決まってお兄ちゃんが助けてくれるが、今日はいない…。

『助けて…お兄ちゃん…』

それでも、私は無意識のうちにお兄ちゃんに助けを求めていた。そんな時…

『あ、あっちにいって!こ、こっち來ちゃ…ダメ!!』

ついさっきまで一緒に怯えていたなごみちゃんが私を庇うようにして前に立ちはだかった。

『し、しおりちゃんは、私が守るんだもん!!』

高校生になった今でも私は鮮明に覚えてる。

涙で顔をグシャグシャにして、怖くてをガクガク震わせながら犬に立ち向かう、小さいけど大きい…頼もしすぎるその背中を…。

※※※※

「――そっか…何も、変わってなんかいなかったんだ…」

自然と、無意識にその言葉は私の口から突いて出た。

昔とは正反対と言ってもいい、常に上から目線で息をするように毒を吐く…。

しかし…っこの部分は全く変わっていなかった。

人見知りで、優しくて、お兄ちゃんのことが大好きで…そして、自分は臆病で怖がりなくせに他人のためとなるとそんなの関係なしに必死になれる…私はそんな彼のことが大好きで、そんな彼に憧れたんだった…。波志江なごみという人間は、何も変わっていなかった。

「そういえばなごみちゃん、私に言いたいことがあったんじゃなかったの?」

「あ!そういえば!!」

なごみちゃんは私の指摘をけてハッとし、慌てて抱き著いていた私達から離れると、「コホン」と一つ咳払いをしてから改まって私の方を向き直り、

「栞ちゃんは奏太君に迷をかけるなって言ってたけど、それは無理」

「え?」

「実はつい最近まで私も奏太君に迷かけないために意地張ってたんだけど、彼にそれは無理だって教えられちゃった。――だから、これからも迷かけることはあると思う」

時折笑みを見せつつも、終始真剣な口調で私に語りかける。

「でも!だからこそ!私は決めたの――迷をかけるばっかりじゃなく、奏太君からも安心して迷をかけてもらえるようなになろうって」

「!!」

「そのためにも、私は”今の學校での私”は辭められない。たとえ栞ちゃんから言われても」

その瞳には『何を言われても絶対に譲らない』という強い意志が籠っていた気がした。

”波志江なごみという人間は、何も変わっていなかった”

…ううん、違う。彼は確かにこの會えなかった數年で変わっていた。――昔よりも、はるかに強くて頼りになって…そして、安心してお兄ちゃんを任せられるひとに…。

「そっか…」

私は思い知らされた。

自分が良かれと思ってやっていたことは単なる自己満足で、ただのおせっかいで、有難迷で…むしろ、お兄ちゃんにとってはただの邪魔でしかなかったのだと…。

むしろ変わらなきゃいけないのは、私の方だった…。

「さっきはいろいろ言ってごめんなさい。私の言ったことは忘れて?――それから、改めてカップル立おめでとう」

「え?でも――」

「いいから、いいから――お兄ちゃんのこと、これからもよろしくね?なごみちゃん…ううん」

もう迷わない。

これからは大好きなお兄ちゃんのためにも…そして、私自のためにも、二人のことを見守り、そして応援しよう。

自然とそう思うことができ、気づけば私は、心の底からの笑顔を向けていた。

「お義姉ちゃん!」

――そう。他の誰でもない。私の未來のお義姉ちゃんに…。

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