《ACT(アクト)~俺の婚約者はSな毒舌キャラを演じてる…~》全ては計畫通りです……
「次の予定はまたラインを送りますわね」
「ええ。わかったわ」
喫茶店から解散場所である最寄駅へと移した二人。
「それにしても、なごちゃん? 本當にワタクシの家の車に一緒に乗っていかなくてもよろしいの? もうしで到著するみたいですけれど」
「大丈夫よ。私の家も電車で數駅で駅からもすぐだし」
「そうですの……ただ近いとは言っても夜道ですし、くれぐれも気を付けるんですのよ?」
「もう、心配し過ぎよ――それじゃあね」
「ええ、それでは、また」
そしてしばらく雑談した後、二人は別れた。
一人駅の方へと歩くなごみに、笑顔で手を振りながらその後ろ姿を見送る下之城。
そして、數歩歩き、それに気付いたなごみも振り返ると、頬を赤らめ恥らいながら手を振り返す。
良い景だ。――そんなことを思いながらし離れた場所で二人の様子を見守る俺と栞。
そして……
「よ、お疲れ」
「お疲れ様です、先輩」
なごみの後ろ姿が完全に駅の中へと見えなくなったのを確認してから、下之城の下へと姿を現した。
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「あら、お二人ともご苦労様ですわ」
「どうやら上手くいったみたいだな」
「ええ、當然ですわ。ワタクシを誰だと思ってますの?」
この必要以上に自信満々なじにも最近ようやく慣れつつある。
「まぁでも、今日のところはあなた方にも謝しなくてはいけませんわね」
そんな小生意気なお嬢様は相変わらずの上から目線で謝の意を告げてきた。
「特に、栞ちゃんでしたっけ?」
「あ、はい!」
「あなたが立案なさった計畫のお蔭で、なごちゃんとの仲を深めることができましたわ。――この下之城優奈、心より謝申し上げますわ」
「そ、そんな! 私は別に……」
禮儀正しく頭を下げる下之城に、謙遜する妹の栞。
そう。今回、俺達と下之城はなごみには緒で協力関係を結んでいた。
“なごみに、ちゃんと心を開ける親友を作ってもらいたい”――という願いから、なごみからの相談をけた後、準備~當日まで、俺達は栞主導でいろいろと裏でいていた。
例えば、一緒に出掛ける相手である下之城に事を全て説明して協力を煽いだり、
例えば、なごみ母に頼んで、當日の早い段階でなごみのスマホの充電が著れるように細工してもらったり、
例えば、なごみが焦っていたり、助けを求めるようなそぶりをしてもわざと気付かないフリをしたり……。
「最初お話を頂いた時は半信半疑でしたけど…まさかこんなに上手くいくとは思いませんでしたわ」
「はい、私もいろんなトラブルを想定してたんですけど…今日はほとんど出番はありませんでしたね」
恐らくなごみの素直な格のお蔭だろう。栞が立案した計畫は驚く程スムーズに進み、無事功をし遂げた。
「ま、いろいろ準備は大変だったが、無事功して何よりだな」
「あの、準備してたのほとんど私なんだけど?お兄ちゃんはずっと『ホントにこれでいいのか?』とか一人で心配してただけだったじゃん!」
「あら、酷いお兄さんも居たものですね」
「……面目ないです」
……まぁ、細かいことは置いといて!今回だけで“なごみに、ちゃんと心を開ける親友を作ってもらう”――っていう目標を達できたかは本人に聞いてみなけりゃ分からんが、なくとも下之城との仲はかなり深められたに違いない。
恐らく目標達の日もそう遠くはないだろう。
「下之城、なごみのこと、これからもよろしく頼むな」
「ふっ、そんなのあなたに言われるまでもありませんわ」
これまで俺一人だったなごみが心許せる相手が一人増える。
そんな現実に今までなごみを獨占狀態だった俺は若干の寂しさをじつつも、
「よかった……」
心の底から喜んでいた。
「それじゃあ、ワタクシはもう行きますわ。そろそろ迎えの車が來る時間ですので」
「おう、そうか。今日はありがとな」
「先輩、今日はありがとうございました」
「こちらこそ、ですわ」
そう言って、下之城はまるでなごみに向けるかのような笑顔を殘して歩いて行く。
が、しかし、
「あ!」
彼はし歩いたところで何かを思い出したかのように立ち止まるとこちらを振り返り、
「藤岡奏太」
「ん?」
突然俺の名前を呼び、
「ワタクシ、まずはこのままどんどんなごちゃんと仲良くなって、なごちゃんから“親友”と呼ばれるように頑張るつもりですわ。ですが、ワタクシそれで終わりにするつもりはありませんわ」
「え? どういう――」
「ワタクシ、以前言いましたわよね?『 なごちゃんの人になること、諦めるつもりはない』って。――その気持ち、勿論今も変わっておりませんので」
「……ま、マジで?」
こちらに不敵な笑みを向けてきた。
「お前、まだ諦めてなかったのかよ……。俺が言うのもなんだけど、お前に勝ち目ねぇだろ……」
「そうやって余裕でいられるのも今のうちですわ。今後は今まで以上にどんどん攻めていきますので、そのおつもりで! ――それでは!!」
それだけ言い殘して、下之城優奈はルンルン気分で去って行った。そして、
「お兄ちゃん、もしかして私達…なごみちゃんの友達の人選、間違えたんじゃないかな……?」
「奇遇だな、栞。お兄ちゃんも今同じことを思っていたところだ……」
俺と栞はそんな彼の後ろ姿を苦笑いを浮かべながら見送っていた。
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