《闇夜の世界と消滅者》二話 偶然の出會い
は走っていた。
まだ日も昇っていない住宅街を、リズミカルな足音が響いている。
朝の走り込みをしているのだろう。
長い金髪が風になびいている。
やがて疲れたのか、近場の公園で足を止めた。
気になるその風貌は…………
「ふぅ~。今日はなかなかに疲れましたね」
いわずもがなである。
それも十人が見れば十人とも魅了するであろうである。
…………それを本人が自覚しているかどうかは置いておくとして。
そういえば、とは思い出したように呟く。
「今日は転生が來る日でしたね………」
この時期に転など、近年まれに見ないことである。いったいどのような人が來るのか、は非常に興味があった。
なにせほかの學校に転するのは相當困難なことであり、たとえ相手の學校が許可を出しても、超難関な試験を突破できなければ転は実現不可能なのである。
だが、その難関な試験を突破してきたということは、それだけ強い人であるということである。
しかも、単なるうわさでしかないが、試験の時、試験を5人相手にして圧勝したという噂が流れていた。転してくるということだけで充分なネタになるのに、そのうえプロの騎士である試験5人を相手にして圧勝したとなれば、それは世界的に有名になるというものである。
そんな経緯があって、はかなりその転生に興味を持っているわけだった。
「いったいどれほど強い方なのでしょうか………」
そう、空想に耽っていると、背後から聲がかかった。
「あぶねぇ!!」
その聲が聞こえたかと思うと、は何かにぶつかったような衝撃をけて、地面に倒れこんだ。
「いっつつ~………。いったい何ですか…………?」
そうぼやきつつ閉じた目を開いてみると、男が倒れていた。
自分の上にかぶさる格好で。
…………なるほど。
自分はこの男にぶつかって倒れたらしい。
…………。
………………………。
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
そうびながらは顔を真っ赤にして、かぶさってきた男めがけて渾の平手を放つ。
バチーン、と朝の公園に心地よく響いた。
打たれた男は向こうに吹っ飛ばされ、壁に激突した。
しばらく橫たわっていたが、やがてよろよろと起き上がりながら、自分をぶったへ非難の目を向ける。
「いっつ……………何しやがるこのアマ………」
「いきなりぶつかって、しかもに被さっておきながらなんて態度ですか!」
「確かに悪いとは思っている。だが俺はちゃんと危ないって勧告したんだから、被さってしまったのは明らかにあんたがよけなかったからだろう」
「いきなり聲をかけれたうえ、かけられてから一秒半程度しか時間がなかったというのに、どうやって避けろというのですか⁉」
は堪らず聲を荒げる。
「…………とりあえず、自己紹介をしましょうか。お互い名前がわからないのは不便ですしね」
そいう言っては襟を正して名乗る。
「私は國立魔道騎士ベルクリオ學園生徒會會長、イルディーナ・ベルファです。あなたの名は?」
イルディーナは男に問う。
「あー、今日から個々の學園に通うことになった三觜島みししまれんだ。一応そっちに連絡は行ってるだろ?」
「え、え? 転校生? あなたが?」
この男があの、噂の転校生? この男が?
「それって本當なんですか……………?」
イルディーナが信じられないという風に問う。
「なんか地味にひどいことを思われたような気がしたんだが。まあそれは置いておくとして、俺が転校生だぞ」
それを聞き、イルディーナはそれまでずっと気になっていたことを聞くことにした。
「あなたって、本當に男なのですか?」
「男だよ!どっからどうみても男だろうが!」
はそう言っているが、どこからもどう見てもにしか見えない。
さっきはのから男だろうと見當をつけていたのだが、顔や全のパーツを見ると、どう見てもにしか見えない。
この件に関しては取り敢えず置いておくとして、イルディーナはもう一つ気になることがあった。
「正直に答えてほしいのですが、転校生である三觜島君が、なぜこんな朝早い時間からこんなところにいるのですか?」
それはあんたもだろう………と言いたい心を必死に抑えて、は答える。
「いやぁー聞いてくれよ」
これは二日前のことである。
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