《闇夜の世界と消滅者》二十二話 迷宮探検 2 要求

イルディーナは驚きを隠せずにいた。

使い魔がしゃべるというのはレアなケースだ。

天空都市ハーピッドの大天魔ウィルガルトスのドラゴマギアでさえ、言葉を話すことはない。

「紹介する。こいつは幻狼種のシャード。こいつの言う通りそこらへんの魔よりも知が高い魔だ。親が超弩級魔レジェンドクラスだから、戦闘能力も申し分ない」

「よろしく頼むぞ」

シャードが先にあいさつをしたので、慌ててイルディーナは挨拶を返す。

「申し遅れました。メルクリオ學園生徒會會長、イルディーナ・ベルファと申します。以後お見知りおきを」

「うむ、禮儀正しい者で安心した。そっちの小娘は確か……主の妹の……………………」

「三觜島鈴音と申します。兄様の使い魔と出會えて、栄思います」

鈴音が腰を折って禮をする。

「うむ。貴公のような妹がいて主は幸せだな。我の妹もこのように素直であればよいのだが………」

「お前の妹、確かシャルディだったか? あいつほど賢い狼はいないだろう」

「確かに賢いが、中途半端に賢い分、無茶をしやすい。我がストッパーとして働かなければいずれあいつは自分のを滅ぼすことになろう」

シャードはに対しても厳しい。それゆえに誤解をけやすいが、はいいやつなのだ。

「いくらお前が悪い奴ぶったって俺には通用しないぜ」

「………別に我は悪い奴ぶっているわけでは………」

「どうせ今回のことを條件に妹の世話をしてほしい、なんていう約束でも結ぶつもりだったか?」

「………ばれておったか」

「當たり前だ。何年の付き合いだと思ってる」

シャードはため息をつき、 を見上げる。

「確かに我はシャルディのことをおぬしに頼もうとした。しかしよいのか? 我と主との要求が釣り合っておらぬように思えるが………」

確かにシャードの言う通りだろう。しかし、今回は急ぎの件だ。悠長なことを言っている場合ではない。

「今回は特別だ。そのかわり、シャルディの件はこの件が片付いてからだ」

そうは言い切ると、後ろを振り向き、イルディーナと鈴音に向かって問う。

「というわけでそろそろ向かおうと思うが、準備はいいか?」

「愚問ですよ兄様。私はいつでも準備萬端でございます」

「私も、すでに覚悟は決めています。いつでも大丈夫です」

の問いにイルディーナと鈴音は覚悟を決めた様子で答えた。

「それじゃあ、行こうか」

そうして、一行は迷宮《草薙》に向かって進みだした

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