は棺桶の中に納まっているを見て、困する。

「人…………だよな？　でも、この棺桶見るからに古いよな。魔族か？」

そう、疑問點を上げてみるが、解決するものは一つとして見つからない。

は後ろにいる二人に聞いてみる。

「どうするべきだと思う？」

「いや私に聞かれても困るんですけど…………」

イルディーナは困り顔で言う。

まあ、逆の立場ならも同じ反応を返すのだが。

「ともかく、おこしてみないとなんとも言えないな」

はそう言ってのを揺さぶってみる。だが一切反応がない。

「軽くたたいても反応がないからな……仕方がない」

はいったん言葉を區切り、深呼吸を始める。

徐々に悪寒が走る鈴音とイルディーナをよそには魔力を練り上げ高めていく。

その魔力は、依然剣技決闘デュエルの時にもじた－－魔力の嵐。

だが、今回はその時よりもさらに質も量も跳ね上がっている。

魔力が大きすぎるのか、空間が軋み、壁にひびがり、地面が揺らいでいる。

このままでは崩落するだろう。

そう思った、その時----

フッ

と、魔力が一瞬で消えた。

納めた、ではなく消えたといったほうが正しいのかもしれない。

事実、魔力を放っていたも、魔力が消えたことになからず驚いているようだ。

は棺桶を見る。

中にっていたのが、発し始めた。

それを見ては確信する。先ほどまでの魔力はすべて、このに吸い取られたのだと。

それと同時に理解する。このは人間ではなく、魔族――いわゆる吸魔鬼ノスフェラトゥなのだと。

「こいつは、かなりやばいものを起こしたかものな…………」

吸魔鬼ノスフェラトゥ。それは、分類上では超大型魔アフリードクラスとなっているが、その能力と、魔法力、特にその知力の高さから、超弩級魔レジェンドクラスとも言われている。

吸魔鬼ノスフェラトゥのがゆっくりと目を開く。

「――――敵対生を発見。これより敵を殲滅する」

そう騒なことを言ったかと思うと、一瞬での懐に飛び込み、掌底を繰り出す。

「ッ！」

は攻撃をわざとけ止め、ダメージを殺しながら後ろへ下がる。

「なかなかいい攻撃繰り出すじゃねぇか」

きつい攻撃をけたはずなのに、は苦しむよりむしろうれしそうな聲で言う。

ダンジョンに來たのだ。そりゃあ強い奴とも戦いと思うのは男のというものである。

「生徒會長は遊撃、鈴音はバックアップ、俺が前衛で攻める。苦しくなったら生徒會長と鈴音でスイッチして役割を代しろ」

は短くそう言って刀を構え、突撃する。

「私に攻撃れるなど、百年早い」

吸魔鬼はノスフェラトゥは嘲笑を浮かべながらの攻撃をよけ、反撃する。

「盃をえし盟友よ　かつての契りにより限界を超えろ

我が手、我が足、我が力となり　汝が誇りを見せ付ける

超高濃度煉禍レフィニング」

超高濃度煉禍レフェニング。その名の通り、魔力で燃える炎を超高濃度の魔力で周囲を覆うことで、敵を骨をも焼き盡くして倒す魔法である。

中級魔法ギガノクラス程度の魔法ではあるが、魔力保有が大きければ大きいほど、その威力はあがり、上級魔法ディオガクラスでも防ぐのは困難になる。

「私は吸魔鬼ノスフェラトゥ。人間よりも魔力保有量ははるかに高い。お前がこれを防ぐすべなどない」

は勝利を確信しているのか、魔法を放っただけで満足げである。

「三觜島一刀流絶ノ型――――【空斷】」

そんなには何も言わず、燃え盛りこちらに向かってくる炎に対して一閃。

直後、あれだけ燃え盛っていた炎は跡形もなく消し飛んだ・・・・・・・・・・。

「なッ！？」

これにはもびっくりである。

はに対して諭すように言う。

「確かにお前の魔力はかなり量も質も申し分ない。だがな」

はそこで言葉を區切り、に対して殺気を放つ。

「てめぇみてぇなガキに負けるほど、弱くはねぇよ」

「ひッ！？」

は悲鳴を上げる。

だがそれも致し方ないのかもしれない。

あの・・の殺気を直に浴びたのだから。

「暴の彼方に置き去りにされ霊たちよ　現世に行けるものを縛れ

彼らは憎むべき罪人　罪人に侵食する幾千の鎖

生者を戒める怨嗟の鎖リスティック・バインド！」

「風よ、敵対するものに封じる力を――風符『風天縛陣』！」

イルディーナが魔法を、鈴音が呪を使う。

イルディーナの魔法も、鈴音の呪も相手を捕縛するために使うものである。

はの殺気でけず、捕縛される。

「くっ！」

は必死に逃れようとするが、を捩るたびに切り傷が生まれていく。

「抜け出そうとするのは勝手だが、けばくほど、お前のは切り刻まれていくぞ？」

の忠告に、は観念したようにくのを止めた。

「まさか私が人間ごと気に負けるなど…………」

はを睨みつける。

だがはその程度では怯みもせず、逆にに対して笑顔で威圧をかける。

「さて、まずはあんたの名前からだな。あ、もし斷ったらこの場で即首を刎ねるから」

の笑顔に怯えたのか、震えながら答える。

「わ、私の名前はイリヤ………………たぶん」

「たぶん？」

「だいぶ昔のことだから……自分の名前なんて覚えていない」

そう言っては悲し気にうつむく。

「昔とは、いったいどれくらいのことだ？」

「だいたい二百年前くらいのことだったと思う」

二百年！　は驚愕する。

見た目十二歳程度のが、実は最低でも二百歳もあることに。

「お前はいったい誰に封印された？」

がそう問うと、はうつむきながら答ええる。

「私を封印したのは…………黑葉と呼ばれていただった」

その名前を聞いたとき、は絶句する。

黑葉。はその人をよく知っている。

なぜならそれは、本來死んだはずの、の許嫁・・・・だったからである・・・・・・・・。