あたしの名前は小島ハツナ。

登校した初っ端から急の全校集會が行われることに、なんとなく嫌な予がしている高校一年生だ。

「悲しいお知らせがあります」

育館の壇上に立つ校長先生が、丁寧かつ重苦しい口調で告げた。

「みなさん。もうご存知でしょうが、うちの學校付近には古くから【蛆神様】という神様が棲んでいます」

校長先生はスーツのポケットから黃のポスターを取り出し、生徒全員に見えるように掲げた。

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※注意※

この近辺での願いごとはご遠慮お願いします。

願いごとによる事故等につきましては一切責任を負いません。

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「ここに書いてある注意文言があるにも関わらず、最近、我が校の生徒が願いごとを用していると報せがきています。私は我が校の生徒に限ってそういった不祥事はないと信じていましたが、ついに被害が起こりました」

校長は拳で口を隠し、咳払いをしてから前に向き直る。

「二年生をけ持つ社會科の山口先生。みなさんの間では彼の容姿がマスコットキャラクターの『黒ヒゲじじい危機一髪』に似ているから『黒ヒゲじじい』と呼んでいるそうですね」

舞臺袖に目を向ける校長が、「山口先生、こちらへ」といった。

足を引きずりながら、山口先生が舞臺袖から現れる。

悲鳴が育館に響いた。

「いくら容姿が似ているからといって、先生を《黒ヒゲじじいにそのもの》にしていいわけがありません！　わかりますか？　みなさん！」

上半が有刺鉄線でぐるぐる巻き。有刺鉄線の隙間にカラフルなおもちゃの剣がいくつも突き刺さっており、刺しこまれた箇所からがだらだらと垂れている。

山口先生の口は、黒ひげジジイと同じく猿轡がはめ込まれていて、もごもごと口をかして何かを喋ろうとしていた。

「誰が犯人なのか今は問いません。もし心當たりがある方は後で職員室に來てください！」

マイクに向かって校長が聲を荒げた。

生徒は全員黙って山口先生を見つめている。

「え、今更？」

トモミがぼそりと呟いた。

あたしも同じことをじた。

終