あたしの名前は小島ハツナ。

最近はまっている海外ドラマは、金髪人な優さんがセクシーな歌とダンスを披するミュージカルドラマだ。

「危ない！」

お母さんから醤油を買ってきてっていわれて、隣町のスーパーで買いをしたその帰り道だ。

道の真ん中で突然、當たりを食らった。

當たりをもろにけた衝撃で、あたしのはアスファルトの上を転がった。

「は？　なに？」

「気をつけろ！　町にモンスターが溢れかえってる！」

おもちゃのピストルを構えた年が、あたしに指をさして意味不明なことを口走る。

モンスター？　え？　何それ？

っていうか、ぶつかっといて何もなし？

なんだこいつ。

「ぐるるるあぁ」

獣の鳴き聲が聞こえた。

振り返ると、ヨダレを垂らした謎の化けがあたしの近くにいた。

「伏せろ！」

年はおもちゃの銃を化けに向けて構え、口で「バンバン！」といった。

化けの頭あたりが小さな破裂を起こし、咆哮とともに地面に倒れる。

「え？」

化けの頭から、緑のが垂れ流れていた。

待って待って。なに？　まず説明して。

「大丈夫か？　君、僕がいなかったらあいつらにやられていたぞ！」

「あんた誰？」

「僕はナガヨシ。君と同じ高校に通う二年生さ」

ナガヨシと名乗った年が、あたしの手を取った。

ナガヨシはあたしより背の低い小柄な年だった。

「えっと、ナガヨシ先輩、ですか？　あの、どういうことですこれ」

「全ては僕が原因なんだ。僕はただのホラー映畫が好きな映畫オタクだ」

はぁ、そうですか。

「ついさっき、【蛆神様】が近くにいることを忘れていて、ついさっき僕は妄想を口走ってしまったんだ。《化けと戦うことのできるヒーローになれますように》って」

「……つまり、これは先輩が願ったことで作られた化けってことですか？」

「そういうことだ！　君を巻き込んですまない！　だけど、安心してくれ！　僕が君を命がけで守る！」

ナガヨシはハリウッド映畫のアクションスターを意識したかのような銃の構えをし、きょろきょろと周囲を見渡した。

化けが道路のあちこちから湧いて出てきた。

「きたな！　モンスター！　喰らえ！」

銃を構え、ナガヨシは「バンバンバン！」と連呼する。

化けたちのに飛沫が跳ね、雄びの咆哮が轟いた。

「バンバンバンバンバンバン！」

所構わずナガヨシは撃ちまくる。

化けたちはナガヨシ目掛けて次々襲ってきた。

あたしはそれを見て気づいた。

「先輩。つかぬ事を伺いますが、さっきお願いしたのって《化けと戦うことのできるヒーローになれますように》でしたっけ？」

ナガヨシは「バンバンバン！」と連呼しながら首を縦に振った。

なるほど。

そういうことか。

「あのぉー、忙しいところ申し訳ないですけど、いっていいすか？」

あたしはナガヨシの肩を叩くけど、ナガヨシは化けを撃することに忙しくてこちらに振り向こうとしない。

んー、気づかないかなぁこの人。

この化け。

さっきから、あたしとか他の通行人には目もくれていない。まるで無視だ。

ナガヨシだけに攻撃している。

それって結構重要だったりするんだけど、気にしてないみたいだな。

「ぐぁあ！」

一瞬の隙をつき、化けがナガヨシの右肩に噛み付いた。

それをきっかけに、次々と化けがナガヨシに飛びかかった。

「くそぉ！　これまでか！　俺のことはいい！　逃げるんだ！　君だけでも生き殘るんだぁあああ！」

が貪る音が聞こえる。

通行人が汚いを見るような目でそれを見ると、さっさとその場から立ち去っていく。

うん。じゃ、そうさせてもらうわ。

地面に落ちたビニール袋を拾い上げるあたしは、臓を化けに貪られ続けるナガヨシに背中を向けた。

海外ドラマは野暮ったいアクションヒーローものじゃなくて、ミュージカルが好きだ。

そうあたしは思いながら、帰路に著いた。

終