《蛆神様》第34話《魚市場》

あたしの名前は小島ハツナ。

島に移転する前の築治市場にお父さんと一緒に行くことになった高校一年生だ。

お父さん曰く、築治にはオススメの天ぷら屋さんがあるそうだ。

移転したら天ぷら屋さんは閉業するということらしいので、お店がなくなる前に子供たちに食べさせたい。お父さんはあたしにそういって、日曜の早朝四時に寢ているお兄ちゃんとお姉ちゃん、そしてあたしの三人を叩き起こした。

また急だな。

と、思ったけど、普段無口で休日は釣り以外は家にこもりがちのお父さんが子供を連れて積極的に外に出ようとしている。かなり珍しいことだ。

お母さんからも「付き合ってあげて」といわれたのもあるし、お父さんがオススメの天ぷら屋さんもそんなに味しいのか興味もあったから、あたしは築治に付き合うことにした。

ちなみに兄と姉の二人は起きることができず、家に置いていくことになった。

「Oh! Japanese fish market!」

金髪の外國人観客がカメラを構えて築治市場の道を塞いでいる。

「邪魔だ! どけ兄ちゃん!」

ターレットを運転する漁師さんが観客に向かって怒鳴った。

道が狹い。

築治が移転をするのも老朽化と荷置き場所が不足してきたからという理由だとお父さんから聞いたことがある。

移転前だからというのもあって、築治市場は全的にピリついた雰囲気が漂っていた。

「なんだ、あれ」

狹い道を歩いていると、あたしたちは人集りの群れぶつかった。

外國人観客らが、何かに向けてカメラを構えている。

「さぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! これからマグロの解ショーが始まるよ!」

白い帽子をかぶった板前さんらしきおじさんが、気な調子で外國人観客らにパフォーマンスをしている。

板前さんの手元には、大きな臺とまな板があった。

まな板の上には、の太ったおばさんが仰向けに寢そべっている。

「これよりこの《マグロのババア》を解していきます! みなさん刮目してください!」

板前さんがおばさんの首元にノコギリの刃を押し當てた。

フラッシュが炊く音に混じって、と骨が切り裂く音、おばさんの悲鳴が市場に響く。

臺の上には、黃い蛆神様のポスターがられていた。

「oh! It's Japanese famous show!」

いや、違うから。

あたしは外國人観客に向かって心の中でつぶやいた。

それから、お父さんがオススメの天ぷら屋さんに行ったけど、店は閉店していた。

家に帰るまで、お父さんは無言だった。

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