《死んだ悪魔一家の日常》第四話 黒華の勉強

「黒華ー」

「………」

「學校は──おふっ!」

黒華に落ちを思い切り毆られた。

「てめぇ、いつも思うけどいきなり毆ってくんのやめろ!」

「…わかった」

案外素直だ、と見直していると黒華は父さんが飲んでいたワインの瓶を手に取った。

「いや、そういうことじゃねぇよ!モノで毆んな!!」

「ちっ」

舌打ちして瓶をテーブルに戻す妹。

前から思ってたが恐ろしいやつだ。

さすがゾンビ。生きを襲い、食うことしか頭にない。

黒華は腕を組んで俺を睨む。

「なんでそこまでして私を學校に行かせたがるの」

「ここが人間の暮らす世界だからだよ!人間ではない俺たちは人間以上に努力しないと生きていけない!」

そこまで言うと黒華は考え込んだ。

あ、やっと俺の説得が通じ……

「じゃあ、火星に行けばいいのかな……。ああ、でもそこには人間がいないからお腹が空いちゃう」

だめだ。説得とかそういうレベルの問題じゃない。

黒華が學校に行かない理由は二つ。

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一つは人間が大の苦手である。やつらのことは食うことしか頭にない。

もう一つは面倒くさがりでコミュ癥だから。

「それで、お前勉強できるのか?」

「教科書読んどけばね。私だってちゃんと勉強はしてるんだから」

黒華はジト目で俺を見てくる。

なんだ?妹よ。俺が勉強苦手で自稱優等生だとでも思ってるのか?

「仕方ない。今日は俺も休む!!」

「はあ!?」

皆さんどうも。黒華です。

今いる場所は私の部屋。そこまでは良いんだよ。そこまでは。

目の前で一年生の教科書を開く兄。

「なんで、お前が私の部屋にいるの!?」

「勉強教えようっていうのに無想だなー」

ため息をつくお兄にいだがとりあえず顔面パンチをかましたかったが、それはあっけなく止められる。

「お前の行は全て計算済みだ。ひれ伏せ外道め」

「あ''?」

右拳が震えた。

なんでこいつに止められるだよ!

「じゃ、まず地理からいきますか」

お兄ちゃんは地理の教科書を開いて、続いてノートを開く。

「じゃ、まず『陸:海』は?」

「3:8」

「馬鹿じゃねぇの!?」

お兄ちゃんは突然の暴言を吐いた。

「なんで3:8!?3:7だよ!なんで海が若干広くなってるの!?地球歪んでんの!?」

「ちょっとミスったの!!」

ちょっと間違えただけ!本當はわかってたよ、3:7でしょ!?はい、もうわかったから。

続いて歴史が始まった。

お兄ちゃんは歴史の教科書のある寫真を指差した。

「猿人、原人とあともう一つ、人間の直接の祖先は?」

「サヘラントロプス・チャデンシス」

「ふざけんなよこの野郎」

真面目に答えたつもりなのに冷ややかな目線を送ってくる兄。

「新人だ、ホモ・サピエンス!わかんねぇの?」

「あれ?でもさっき答えたのは…」

「あれは最古の人類だボケ!」

……………………………………………………………………………………

※サヘラントロプス・チャデンシス

アフリカのチャドで2001年に発見された現在のところ最古の人類。

の辺りの骨が出っ張ってるよ!

……………………………………………………………………………………

何処かで聞いたことあるから適當に答えたら案の定間違ってた。

社會が一番嫌いだ。人の名前とか行いだとか土地だとか別に覚えなくていいだろ!

「社會とか必要なくない!?」

「後々必要になってくるんだよ!」

「いらないよ!聖徳太子が何!?復活させるの!?なんで人間共の祖先のこと學ばなければならないの!野生の猿じゃん、なんで名前つけるのぉ!?」

怒って暴れたくなる衝に駆られ立ち上がったがお兄ちゃんに押さえつけられる。

「離せっ!私は人間を狩りに行く!!」

「待て!食いは後でだ!」

「お前を先に食ったろうかわりゃー!!」

お兄ちゃんは膝の裏を蹴飛ばしたから私は橫転してしまった。

結局席について社會の勉強をさせられるはめになる。

地獄だ。誰か助けて。

「よし、じゃあ。數學するか」

お兄ちゃんは數學の教科書を開いてプリントに問題を書き込んでいく。

「これ全部解け」

渡されたプリントをじっと見つめてシャープペンを手に取り問題を解いていく。

解き終わったプリントを兄に渡すと一息ついた。

お兄ちゃんはプリントに丸つけながら眉を顰めた。

「お前さあ…」

「何、間違えてた?」

「いや、あれだけ社會壊滅的だったのに、なんで數學全部合ってるんだ?」

兄が見せてきたのは全ての問題に丸がついたプリント。

「私、できる子なんで」

ドヤ顔をするとお兄ちゃんはため息をついた。

「だったら社會も本気出せよ…」

その後の數學の問題を次々に解いていき、あっという間に時間が過ぎたとき、お兄ちゃんは何度も頷き始めた。

「お前社會とかあれだったから暗記が無理なのかな…」

「さあ…?」

「じゃあ、理科も苦手なのかもな。ちょっと理科の問題作るから待っとけ」

「はーい」

「なん…だと…」

私は數學に続いて兄が作った理科の問題も全て解いてしまった。

兄は間違いがないか慎重に赤ペンで丸をつけていくが全部正解していた。

「噓だろ!?」

「だから言ったでしょう。私は家でもちゃんと勉強してるの!」

やっと私の実力に気づき全が震えたか兄者。さあひれ伏せ阿呆。

私は良い気になって兄を下に見てると突然兄が質問してきた。

「そうか、ちゃんと家で勉強してたのか…」

「そう!」

「社會は?」

「………………………………」

お兄ちゃんは疑わしそうな目で黙り込んだ私を見てくる。

「ちゃんと・・・・勉強してたんだよな?」

「………」

私はゆっくりと立ち上がって、部屋の出口まで一歩踏み出した。

「待ちやがれ!」

駆け出した私をお兄ちゃんが全速力で追いかける。

「社會ちゃんと勉強しろ!あれだけ數學と理科できるなら文系もいけるだろ!」

「ハッ、するか!私は人間共みたいに義務教育に縛られない!」

「聞き分けの悪い野郎め!」

そして兄弟の鬼ごっこは長時間続いた。

「紅輝君休み?」

青空と音子は紅輝の機を見つめながら首を傾げた。

「珍しい、紅輝君が休むとか」

「よっぽど病気だったのかもねぇ。犬アレルギーかな?」

「……犬じゃなくて狼な」

「あれ?別に犬養くんのことを言ったわけじゃないんだけど?」

青空と音子との間に亀裂が走る。

二人は、今頃兄弟の自宅で大運會が起こっていることを知る由もなかった。

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