《輝の一等星》第五幕 エピローグ
暗黒の空、雲がかかっていて、月が隠れてしまっているのを見ながら、とある旅館の屋の上で賭刻黎は、靜かに目を閉じながら、戦いの始まりの夜、ここで武虎一郎と自の過去についてまるで言を告げているかのように話していたことを思い出していた。
あの時はまだ、自が生きてここへ戻ってくるとは夢にも思っていなかったか。いや、本當はこの結果までわかっていたような気がしてしまうのは不思議なことだ。
屋瓦は固く、目を閉じて腕枕をしていて、頭が痛かったので、上を起こして、傍に置かれた徳利に手を向けようとしたとき、後ろから聲をかけられる。
「病室にいなくて良いのかしらぁ?」
「……それは梅艶も同じじゃろう?」
振り返らずに答えると、彼は無言で黎の隣に座って、こちらを見て、黎の手に持った徳利をひったくる。
「未年は飲んじゃダメよぉ?」
「私はお主の母親だから大丈夫じゃ――なぞとは言わぬ、心配するでない、中にっているのは水じゃ、雰囲気だけじゃよ」
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「あら、ほんと」
徳利の中のにおいをかいで驚いていた梅艶は、しかし、水と言うことを知っても返してはくれなかった。
そんな彼の黎が抗議の視線を向けていると、ふっ、と笑った梅艶は「こっちに來なさい」と手をばしてくる。抵抗せずに、その手にを任せると、黎の頭は彼の太もも上に乗っかる。
同時に雲に隠れた月が見えて一筋のが彼たちを照らした。
「今日は月がきれいすぎるのう」
「……こういう日は、縁側で月見、かしら?」
「わかっているではないか」
いまは屋じゃがな、と付け足していると、梅艶は黎から取った徳利の水を持ってきた豬口にれて飲み始めた。
そして、すぐに顔を変える。
「これ、臭いじゃわからないけどお酒じゃないのぉ」
「…………さあ、妾は気付かなかったのう」
はぐらかしていると、「ふ~ん」と言った梅艶は「……飲みたいかしらぁ?」とからかうように聞いてくる。
ツーン、としながら彼の返答に無視していると、「冗談よぉ」とすぐに梅艶は笑って豬口の中を一気に飲み干した。
やはり彼の太ももは心地が良く、先ほど屋瓦で寢転んでみたせいか、その良さはまさに月と鼈だ。
そこでふと、昔こんな景があったような気がして記憶をたどる。
こうやって月見をしながら親子二人でのんびりとした時間を過ごしたのは、もう10年以上も前の話になるのか。あの時とは立場は逆だけれど。
もうこんな時間は得られないし、得てはいけないと思っていた。
(それもこれも、あの子のせい……いや、おかげかしらね)
この戦いの終結は昇竜城の崩壊と共に幕を閉じた。
馬場水仙は逃走し、また、詠と共にいたはずのリブラもいつの間にか消えていたらしい。つまり、オルクスとの闘いの容は何も進まなかったわけだ。
しかし、城で行われたこの小さな戦爭の參加者は300人にも上り、生き殘ったのはわずかに30名足らず。それが敵味方含めての數なのだから、たちの戦いの裏でどれだけの人間のプレフュードたちの命が、どれだけの背景があり、散っていったことだろうか。
それでも、生き殘った者たちは、前を向かなければならなかった。
この爭いが無意味なことにならないために。
これが終わりではない、いや、むしろこれからが始まりと言っていいだろう。
きっとあの子は避けたがるだろうが、この先に多くの死は免れない。
「この場にはもう一人、いなければならないのではないか?」
「あの子はまだ未年よ、落ち著いた月見の席にはまだ早いわぁ」
「なんじゃ? 焼いておるのか?」
「そっ、そんなわけないわよぉ!」
梅艶の珍しく必死な言い方に黎は思わず笑ってしまう。
しすねたような彼のこんな表はこの地下世界で、他の誰も見ていない妥當と思い、獨り占めしているような気がして嬉しくなった。
涼にはまだ何も話していなかった。どうして梅艶が姉なのか、黎との関係がどういったものなのか。いずれ離さなければならないとは思っている一方で、もしかしたら彼へすべて話すことは一生ないかもしれないとも思う。
聡明な彼ならば話さずとも察してしまい、わかってくれると思ってしまうのは、流石に我が子を過大評価し過ぎだろうか。
靜かになった夜空の下で、思わず考えていたことが口から洩れる。
「私は今回、たくさんのを失った、過去、仲間、そして信用……」
「…………」
無言で見下ろしていた梅艶に「しかしじゃ」と黎が続ける。
どの角度から見ても人だな、と心しながら、手をばして梅艶の頬をさすると、くすぐったそうな表を取って、時の姿と一瞬かぶったものだから、どうにもおしく思えてしまう。
「それでもたった一つ、取り戻せたことで、私はこの上なく満足しておる……やはり、妾は隨分と愚かな人間のようじゃな」
そうやって微笑むと、上にいる梅艶と目が合って、彼は豬口を口につけながら空を仰いでいた。
そして、ポツリ、と、
「……私としては、嬉しいわよぉ?」
そんな梅艶の呟いた言葉は小さすぎたことと、その瞬間に風が吹いたことで、聞き取ることができなかった。
それでも、彼が何を言ったのか、なんとなくわかった気がして、黎は目を閉じてその足の上に頭を預ける。
數えきれないほどの星々が広がる空の元、こうして、偽りの月が綺麗すぎる夜は更けていったのであった。
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