《ダーティ・スー ~語(せかい)をにかける敵役~》Task3 憐れな犠牲者達に引導を渡せ

暴れまわる魔達。

立ち向かう戦士達。

それと、逃げう犠牲者達。

さあどこだ?

正義のヒーローはどこだ?

俺は自分自を正義や悪と規定するなんて事はしない。

今、命は奪っていないし、規約違反は何一つやっていない。

ただの敵役さ。

用意された危機なんてものは、本當の危機じゃない。

ユーザーの勝利を約束された出來レースなんて、所詮は箱庭のおままごとにすぎない。

「せいぜい頑張って戦ってくれ! 善良なる市民の諸君! 箱庭の生み出した獣達が、お前さんと踴りたいらしいぜ」

俺に応える奴はいない。

みんな倒す事に一杯だ。

それにしても、奴らは汗を流さないが、焦った表は作れるんだな。

神経質や様々なアレが作用して、とかそういうノリかね。

あー、やめだ。

そういう面倒なお勉強は前世で死ぬほどやったし、実際に死んだ。

勤勉な敵役も悪くはないが、俺の趣味じゃない。

ましてや能書きを並べ立てるだけの奴を見ると、その口にクソを詰め込んだ上で冷凍してやりたくなるくらいに腹が立つ。

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そう、腹が立つのさ。

いつも冷靜な、この俺が!

「くらえ! 我ら聖堂特戦隊の奧義が一つ! ドラマチック☆ビギニング☆ファイヤー!」

「説明しよう! ドラマチック☆ビギニング☆ファイヤーとは勝ちジョブである神にサブで戦士を上げた通稱神戦士のスキル“ホーリーエンチャント”を普通に強武であるデモリッシャーに付與して更に神戦士に次いで激アツな純正魔法職の通稱“専攻ウィズ”による“ファイヤーエンチャント”を仕様のを突いて時間差でバフを重ね威力をオーバーフローさせ――」

ズドン!

「――ぐはぁっ!」

そこまでだぜ、能書き野郎。

そう、こいつみたいな奴だ!

お前らみたいなのが一番、胃袋によろしくない。

持って回った複雑怪奇な理屈を並べ立てたところで、やる事は一緒だ。

通るか通らないか。

それだけが問題だ。

戦場は學校じゃねぇのさ。

ハマグリにでも転生して出なおして來やがれ。

『なんか、怒ってません?』

『口うるさい奴は嫌いでね。ところで、召喚したモンスターでプレイヤーを殺した場合も、PK行為に當たるかい』

『て思うじゃないですか? ならないんですよ』

『あ、そうなんだ……じゃあ別の方法を考えるか』

『あんたって奴はっ!』

『怒ってるのか?』

『見境のない奴は大嫌いでしてね』

ロナの言葉をよく思い返してみれば、ある一つの事実と符合する。

見境のない奴が嫌いで、「あのとは違う」と言った。

Big Springのにはやけに詳しい。

すると、同組織に所屬する一人のがメインターゲットなんだろう。

殘念ながらこれらは憶測の域を出ない。

……まさかとは思うがよ。

のもつれじゃねぇだろうな?

くぅ~! 勘弁してしいぜ!

『とはいえ、宣言はした。醫者の匙は投げられた。そいつを誰が拾うかは、悪魔のみぞ知るのさ』

モンスターと遊んでいる犠牲者諸君を、ドロップ品の大弓で狙い撃つ。

『俺がしでもダメージを與えた場合は、告発されるんだろ?』

『よく解りましたね、クソ野郎』

広場でまとまっている連中が、ゴーレムみたいな奴を相手に魔法をバカスカ撃っている。

俺は屋伝いに連中の背後に周り、煙の槍を投擲した。

するとどうだ。

隊列の崩れた魔法使い共は、ゴーレムに叩き潰された。

「うわ、詠唱妨害とかファックだろ……」

その中の誰かが、呪詛を吐きながら霧散していく。

こうすりゃ俺の名前が、奴らの記録ログに刻まれるんだろ?

で、俺はあっという間に殺者として曬し上げだ。

お寫真、待ってるぜ!

かっこよく撮ってくれよ?

『悔しかったら復活リスポンしてリベンジしに來ればいいのさ。ここではそれができるんだろ?』

『たかがゲームとでも言いたげですね』

『されどゲームだ。勝ちたい奴は挑めばいいし、そうでない奴はこの賭けを降りればいい。いるか、いないか。それだけさ』

『難しい言い回しで煙に巻くの、悪い癖ですよ』

『あー、よしてくれ。養鶏場の雌鶏めんどりは卵を産んでくれさえすればそれでいい。朝の報せは雄鶏おんどりの役目だ』

『黙って依頼功を見屆けて報酬だけ寄越せって事ですかね』

『話が早くて助かるね』

『うるせえバナナ野郎。報酬減額すっぞ』

『しろよ、減額。俺はその分の埋め合わせに、戦利品をかっぱらっちまえばいいだけさ。

それにしても助かったぜ。プレイヤーを直接ブッ殺すって話だったら、いくら俺でも遠慮してた』

『それやると、々とマズいですからね。ただでさえ、あたしが反則してるのに……』

それは、幽霊狀態でける事についてか?

細かい事はいいか。

そろそろ、エースの諸君が出張ってきてくれてもいい頃合いだろう。

おや。

悪態をつきながらモンスターハウスと化した路地裏で闘する前衛ジョブの一行様を発見!

じゃあ俺は屋の上にタル弾を設置して、と……。

「頭上注意の看板が無かった事が、お前さんにとって一番の不幸だ」

蹴落とす。

派手に発音が響いて、憐れな犠牲者はモンスター共々吹っ飛んでいった。

壁や地面にベシャっと叩きつけられ、ししてから霧散していく。

『マジむごいわー……ドン引きだわー……』

『とか言って、楽しんでいるように見えるがね?』

ここで屋を登って、単騎で俺に戦いを挑んでくる勇者が現れた。

その勇敢さに敬意を表して、銃は封印しようじゃないか。

近接縛りの一騎打ちだ。

じりじりと、お互いに距離を保ちながら、まるで円を描くように歩く。

そして時折、兇刃がやってくる。

一撃が、確実に俺の命を奪おうとしているのが解る。

サイドステップで回避しながら観察するので一杯だ。

奴の油斷のない眼差しは、達人のそれだ。

対する俺は素人だが、負けたとしても失うものがその日の稼ぎくらいだからな。

そして飯が無くてもビヨンドは死なない。

不死なのさ。

その事実が、俺に冷靜さを與えている。

もちろん、一度くたばったせいでニヒリズムに目覚めたというのもあるがね。

閑話休題だ。

俺はあれこれ説明するのは大嫌いなんだ。

間を持たせる為とか何とか、そういうのはガマの油売りにでも任せておけばいいだろ。

それみろ。

イカした革鎧の勇者様が焦れて距離を詰めてきた。

基本的に、勝負は後出しが上手く行きさえすればどうにでもなるんだよ。

「獲った」

振り下ろされた剣を、俺は蹴飛ばして弾いた。

橫に倒れた勇敢な戦士の頭に、俺は容赦なく踵かかとを叩き付ける。

地面に倒れ伏した勇者“自暴帝チパッケヤ”くんは、そのまま塵になった。

まあ、地下通路のアンドレイよりは、いいセンスだと思うぜ……。

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