《ダーティ・スー ~語(せかい)をにかける敵役~》Task6 エース達に恥をかかせろ!

「だからぁ、みんなはお友達なんですって。ゆぅいはロナちゃんも連れ戻したかったのに、ひどいですぅ!」

元に両拳を寄せて、しなを作って首を振る泥棒貓ちゃん。

それにしても強烈なぶりっ子が出てきやがったな。

こんな奴がギルドマスター?

よせよ、全國のロリータが般若のツラでデモ行進を始めちまうぜ。

「うっせ、ばーか。どうせいいようにこき使うだけだろ。ペットの鬼軍曹を使ってさ?

飴と鞭を上手く使ってるつもりなんだろうけど、通じないからね?

周りを見なよ。下半直結か、スコア目當てのバトキチしかいないじゃん」

そこに元カレ君も含まれているのか。

まあ、同はするまいよ。

てめぇで蒔いた種だ。

「そ、それよりも、ロナ! よくやったじゃないか、あの黃のガンマンを手懐けるなんて!」

「どういうフラグ管理だったんだ? クエスト功の條件は? まさかチートじゃ……」

他のメンバーが、ご機嫌取りなのか知らんが、ロナにり寄ってくる。

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ロナは俯いて黙ったままだ。

『救えない、報われないよ……なるべく説得しようと思ってたけど、やっぱり思い浮かばなかった。昔馴染みがみんなしてこのザマだ』

『だから俺に頼ったんだろ?』

『そうですよ』

そろそろモブ共と一緒くたにされる今の狀況を、卒業しておくか。

「さて、ここまでのやり取りは、しかと聞き屆けたぜ。お前さん達は、無罪だ」

辺りがざわめく。

「中りだったのか!?」

「すげえ、すげえよ運営! 久々に期待値を上回った!」

「マンネリしてたからなあ」

俺が意思を持っている事に気付いた點については褒めてやってもいい。

だが、いくらなんでもそういう結論は、心配になってくるぜ。

それとも、勘のいい奴は追い出されたのか?

まあいい。

次の宣言を彼らに聞かせてやるだけだ。

「新しい日々を恐れるなら、その目を閉ざし続けろ。

そうするだけで、夜は永遠にお前さんのものだ」

爭いも忘れて、奴らは額を突き合わせる。

「変化するのは悪い事じゃないって事か?」

「いや、もしかしたら別の意味合いが……GMのリドルだったら、無視して戦うよりは素直に解いたほうが経験値の効率がいい」

……間抜けが。

半分は正解だった。

殘り半分は、どうやらお前さん達が解き明かすには余白が足りないようだ。

『まさかとは思いますが……気付いてました? その、あたしがもう……』

『くたばってるって事かい』

『そうです』

途中で気付いた。

元カレちゃんの反応で気付いたと言うべきかね。

まったく、俺とした事が。

嫌な思い出があるのは気付いていた。

好きな男を寢取られたんだろ。

あのお姫様に。

だがいくらなんでも、化けて出てくるとは予想外だったぜ。

何故くたばっちまったんだ。

どうやって?

自殺か?

……何をグズグズと。

俺らしくもない。

『お前さんは夜を手にれている。俺にとっては下らない理由で。

だが、お前さんにとっては誰よりも大切な理由で』

『やっぱりね……』

『気付かないとでも思ったかい。お化けのお嬢さん。

何もかもを奪われたのが、お前さんの最大の絶だろ?』

この言葉は、ほとんどハッタリだ。

理由は一つ。

で街道を歩く奴はいないからさ。

『怪に不幸自慢をするつもりはありませんよ。あたしは、そこまで墮ちちゃいない』

カメラの前でぶち撒ける程度には落ちぶれていただろうに。

……いや、言うまい。

『だったら一つだけ頼みがある』

『何でしょう』

『俺を嫌いになってくれ』

返事も待たず、俺は指からアイテムを取り出す。

……魔神の石版。

この時の為だけに取っておいてよかったぜ。

やっぱり、こういうイベントってのは、ここぞって時にキメるのが一番だろ?

「さて、街道警察のエース“アンデルト”君」

アンデルト。

元カレ君のキャラクター名がそれだった。

多分ロナは本名を知ってるだろうが、訊くのは野暮ってもんだ。

「お前さんはコインだ。俺の手の平の上で、どちらの面を見せてくれるかな?」

魔神の石版を発させ、俺達の五倍ほどは大きい、巨大な化けを呼び出す。

むくじゃらで、ところどころに鱗を付けた、顔のあちこちから角を生やした化けだ。

流石は魔神の石版!

呼び出すモンスターも、格が違うぜ。

しかも!

二匹同時召喚だ!

大枚はたいた甲斐があるってもんだぜ!

で、石版を使って解ったのは、呼び出してから30秒はかない事だ。

そこで、このターゲットボールを使う。

ぶつけた相手に、敵が向かっていくアイテムだ。

「――どっちを守る?」

俺はロナとゆぅい姫に、それぞれターゲットボールを使ってやった。

ゆぅい姫の取り巻きは遠距離職ばかり。

こういうゲームで騎士っぽい職業の奴は大抵、味方を守る系のスキルを持っている筈だ。

「うおおおおおおおッ!!」

アンデルトは、わずかに逡巡を見せつつも走っていった。

ロナのほうへと。

そして、魔神の一撃を大剣で防ぐ。

「……どうして」

ロナは、驚きよりも困といった様相だ。

、何を迷っている?

終えの疑念をよそに、アンデルトはロナの質問に答える。

それも、俺があまり好きじゃない言い方で。

「俺……やっぱり見捨てられないよ。クエスト的にこれが正解とか、そんなんじゃなくて、さ。

やっぱり、好きだったんだ。今でも、好きなんだ。もう、あの頃のBig Springは戻ってこない。

どんなに祈ったって、お前は生き返らない。でも、でもさ……!」

興醒めだ。

あのお姫様に浮気しておきながら、ロミオめいたポエムを垂れ流しやがって。

ほら見ろよ!

見捨てられたお姫様は、魔神に躙されてお怒りだぜ!

「ふええ! どうして!? 罠だって気付いてないんですかぁ!?」

「そうだよアンデルト! お前、後で反省會、あ、痛ッ、ぎゃあ!」

お姫様と取り巻き共は、魔神の攻撃に為すもなく嬲り殺しにされていく。

ゲームなんだから痛みなんて無いだろうが、その気持ちは解らんでもない。

ついつい、ダメージを食らうと言っちまうんだよな。

対するアンデルトは、そりゃあもう立派なもんだ。

ダメージをけて力ゲージを削られながらも、ロナに振り向いて必死に言葉を紡いでいる。

「俺、このギルドを抜けるよ。楽しく冒険するみんなを、悪意から守る……それが最初の目的だったのに、いつからか俺も……――」

だが、それも終わった。

俺がロナのを奪ったからだ。

ロナは俺を突き飛ばし、ししてからアンデルトに向き直る。

「……今度、噓ついたら、化けて出てやるから」

ロナはアンデルトの首に、丸鋸を投げる。

命中して、アンデルトは力ゲージを失った。

俺は用済みになった二匹の魔神に銃と煙の槍を総員して、さくっと片付けた。

あとはここにいるのは、で震えている録畫擔當くらいか。

「いい事を教えてやろう。俺を倒すのに、レベルは必須じゃなかった。

それなりの腕前さえあれば、時間さえ許せば、レベル1でも倒せた」

煙の槍を右手に持つ。

左手で、自分自の心臓を指差す。

「急所を攻撃するだけで良かったのさ。たった、それだけだ。レベルに頼りきったのが、そもそもの間違いだぜ」

俺は録畫擔當の心臓に、煙の槍を突き立てた。

大層な茶番は、これにて終了だ。

なのに、懐中時計はらない。

こりゃあどういう事だ?

依頼書の、

“Big Springに恥をかかせろ”と、

“依頼主を満足させろ”という二つの要件を満たしたと思うんだが。

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