《ダーティ・スー ~語(せかい)をにかける敵役~》Task4 反逆者を追跡しろ

首無し野郎との熱的な出會いから、かれこれ二週間は月と太のツラを互に拝んできた。

今回、俺達はドッグレースの景品にはならなかった。

追っているのは俺達で、追われているのはゾンビの勇者様だ。

「こんな長丁場になるなんて、想定外でしたね」

朝霧の立ち込める山道を歩きながら、隣のロナの愚癡を聞く。

悪くはない朝だ。

眠らない俺達に、朝も夜も無いがね。

それで私語厳ってのも、蕓が無いってもんだろう。

散歩がてら文字通り花を摘みに行って遊んでも、バチは當たるまい。

「だが、有り難い事に依頼主は気長に待ってくれるそうだぜ。クソッタレ陛下に栄あれって奴だ」

「どこが気長ですか。土下座させて足蹴にしてきたじゃないですか。

まだ見付からないのかって。見つかるまで帰ってくるなとまで言われましたよね?」

「誰かれ構わず頭を踏みつけて起する特殊癖なんだろう」

ロナは渋面を作って、舌を出す。

「おえっ……それならスーさんに踏まれるほうがまだマシですよ」

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「南極で食うフレンチのコース料理と同じくらいセンスのないジョークだ」

「……」

おやおや、図星かよ。

だからって俺のスネを蹴る事はないだろうに、まったく世話の焼けるお嬢さんだ。

「そういうとこ、ムカつく」

「駄目だったか? 俺はフレンチを食った事が無い」

「そうじゃないんですよ」

……おい。

熱っぽい視線を送るのはやめてくれ。

永遠の過ちをむのか?

「見えない髭を見ようとしても、俺の顔から髭は生えないぜ」

「思ったんですが、どうして汚れ役なんてやってるんです?」

「納得できる答えは手元に無い」

「納得するかどうかは、あたしが聞いて決めます」

「うっ……」

參ったな。

どこかで酒でも浴びてきたか?

いや、ビヨンドは酔わない質の筈だ。

「今、話すべきなのかね」

「むしろ、今じゃないと、どうせはぐらかすつもりでしょう?

いつものように、小難しい言葉で、文字通り煙に巻いて」

「……」

誰がこいつにれ知恵をした?

夢のお告げか?

ひらめきの神様か?

枕元に立つ亡霊か?

「先に言っておくぜ。俺は、近な奴に興味を持たれるのがあまり得意じゃない」

牽制のつもりだったんだが、ロナは気っぽく口元を釣り上げて、俺を上目遣いで見るだけだ。

更には後ろ手を揺らして、何やら得意げに鼻で笑う。

「へぇ。にトラウマでもあるんですか? だったらお揃いじゃないですか、あたしと。

いつも涼しい顔をしているんですから、さぞかし経験富なんでしょうねえ」

めんどくせぇ。

純潔である事を告白すれば、きっとこいつは得意気に見下してくるに違いない。

俺はマゾヒストじゃねぇ。

そんな目的の為にこいつを側に置いたわけじゃない。

俺なんかと一緒にいたら幸せになれないから、引っ越しを手伝う為だ。

その過程での聲で俺の空っぽの臓を満たしてしいから、俺はこうして……。

……なんで俺は、こんなにしみったれた事を考えている?

「今はこれで我慢しろよ。新しい男を見繕ってやる」

ロナの額に口付けをしてやった。

前世とは違うんだ。

俺は、ダーティ・スーで在り続ける。

「……こんなの、ずるいですよ」

額を押さえながら赤面するロナに、俺は一つの答えを示してやる。

「丸で往來を歩く文明人がいるか? 心にも服を著るのが人間の在りようってもんだ」

ヒーハァー!

はぐらかしてやったぜ!

危うく上玉をキズモノにするところだった。

渡るなら吊橋よりも石橋がいい。

壊せば派手に崩れてくれるからな。

問題は、いつロナに、その崩れた石橋を見せてやるかだ。

「よそ見はその辺にしておく事さ。前を見ろよ。俺達の青い鳥は、すぐそこの木の枝に止まっている」

うらぶれた村落に、こそこそと近付いていく勇者様。

白晝堂々、廃村でお泊りでも決め込もうってハラか。

よくよく見れば生活はあるから、日曜の晩餐に木のっ子でもかじっているような場所なんだろう。

無神論者の俺は気楽でいいぜ。

そういう生活をしていても、きっと神様を恨まずに済む。

「ヒイロ・アカシって名前だと青より赤が似合いそうですね。赤い鳥なら、さながら不死鳥ですかね」

「じゃかあしいぜ。俺の真似事なんざ百年早い」

「果たして百年後にも同じ臺詞を言えるのでしょうか」

「……」

こういう事はあまりキャラじゃないんだが、ちょっと予定を変更してもいいだろう。

ロナ。

俺がお前さんを側に置いた一番の理由は、お前さんの中こそぎほじくったクソ野郎が誰なのかを確かめる為だ。

駄目なんだよ。

空っぽになった中を、俺ので満たすべきじゃないんだ。

れる者全てが恐怖する、史上最悪のゲスト。

のぼせたハナタレ共の正義を真正面からブチのめす、最兇の自由人。

それが俺であるべきだ。

俺だけ・・が、そう在るべき・・・・なんだ。

頼むよ。

傷とは無縁でいさせてくれ。

俺自の検証が充分であるという認識・・を、その空っぽの心臓に刻んでくれ。

「……ロナ。お前さんに一つのタスクを與える」

「どうぞ、何なりと」

「近いうちに、俺は奴に全力を盡くした結果、倒れる。その続きを、お前さんに任せる」

「可能なんですか」

「チームで依頼をけた場合、一人でも生き殘っていればコンティニューは可能だ。

ましてやこのゲーム・・・・・に、依頼主は俺を指名しなかった。どうせ使い潰すつもりだろうな」

「報われない話ですね」

「ビヨンドというのは、紙切れ一枚と余った金で買える切り札さ。

奴らがどう使おうが、俺達がどう使われようが、契約が許す限りは自由だろ」

そしてあまり細かい事を書いても、予定がパー破算になった時點で呼び直さなきゃいけねぇ。

お互いが損をして、それを繰り返せば元締めのスナージからも警戒される。

だからある程度は曖昧な契約にするしかない。

よくできたシステムだぜ。

おかげで俺は、やりたい放題だ。

実に有り難い。

「じゃあ、接事故と參ろうぜ」

ゾンビの勇者様がから様子を窺っている。

視線の先にあるのは……依頼主のクソ野郎が派遣した騎士団か?

たった三人しかよこしていないところを見るに、ここで勇者様とかち合うのはシナリオになかったようだ。

あの三流劇作家クソッタレ陛下には大謝だぜ。

しかも村人を相手に演説だ。

さて、見してやろうじゃないか。

クソッタレ陛下が、下々の者を如何様に管理しているのかを。

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