《ダーティ・スー ~語(せかい)をにかける敵役~》Task7 今度こそヒイロ・アカシを倒せ!
ごきげんよう、あたしです。
現在、から様子伺い中。
……まさかスーの奴、拳銃自殺するとは思わなかった。
のになって崩れていくあいつを、あたしは呆然と見るだけだった。
と言っても、ビヨンドは死んでも、その世界に呼ばれなくなるだけらしいけど。
問題は、あたしが取り殘された事。
クソが。
自殺しといて、何が全力だ。
たった一人でどう立ち向かえと?
あの馬鹿は、いつも回りくどい。
「これは、想定外だ。ターゲットが自決した場合、依頼主がその狀況を鑑みて否を決定するというのが通例だが……私には、彼が自決した理由が理解できない。そう思わんかね、ロナ君」
あー……どうしようか考えてたのに。
あたしは、おとなしく建のから出て來るしかなかった。
逃げ隠れしても、何をされるか解らないし。
「奇遇ですね。あたしも理解に苦しんでいますよ」
愚癡混じりの虛勢を張るのが、今のあたしの一杯。
「君から臓とを売りさばいておいて、こういう事を言うのも何だが、君の境遇は中々に不憫だ」
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「そこのゾンビほどじゃあないでしょう」
「俺か……」
他に誰がいるんだよ、ヒイロ・アカシさん。
「不幸に対するは主観的なものだ。君と彼とでは、比べようがない。世の中には“死んだほうがマシ”という言葉もある。君にも覚えがあるだろう?」
だから臓とを売ったんですけどね。
「そりゃ確かに不幸の比べっこは不ですけど。あたしですら、こいつの境遇は不幸だと思います」
スーは……もしかしてこいつを救いたかったのかな。
だからビヨンドという“進路”を示し、臆さず死んでこの世界から早々に離した。
それが最善だという事を、こいつに示すために。
――なるほどね。
やっと繋がった。
あたしはそれを円に運ぶ役回りを任されたって事か。
本當に、まどろっこしくて、ややこしくて、素直じゃない奴。
石橋が崩れる・・・・・・だって?
あいつの言い方に合わせるなら、あたしも“崩す側”だから川を流されたりはしない。
「取引を、しませんか」
「よかろう。君の勇敢な決斷に敬意を表する。聞かせてくれたまえ」
「その前に確認したい事が。ヒイロさんは、一度死んでしまったのですよね? 元の世界に送り返せません?」
「殘念ながら不可能だ。召喚元の世界との繋がりは、その命が潰えた時に途切れてしまった。
これが祈りと奇跡による蘇生であればみはあったのだが、彼の場合は呪いによって魂が閉ざされた。私の返答は期待通りかな?」
何てクソッタレな……。
この怒りの矛先は誰に向ければいい?
「大変不本意な事に。送り返せたら、この世界では死人として認識されて、あたしは依頼を達、そちらも王様を殺してWin-Winに持ち込めたのに」
「その計畫の全てを完遂する事は不可能だが、80%までに完度を妥協するのであれば問題ない」
「つまりヒイロさんがビヨンドになるって事でしょ。そうホイホイとなれるもんなんですか?」
「未練を持ちながら世界との繋がりを絶たれた際に、聲が掛かる。後は、彼がむだけだ」
「だ、そうですよ。ヒイロさん」
ヒイロは、ゆっくりと口を開く。
あたしよりも慎重派なのか、考えをまとめるのに時間が掛かっているみたい。
「……だったら、幾つか確認したい。ビヨンドになったら、この世界で活はできるか?」
「この世界では不可能だ。私がけた分の依頼が機能している間は、萬一を失ったとしても、亡霊として活もできるが。
ただし他の世界であれば、條件を満たせばそこで死んでも霊として活できる。君の本意ではないだろうがね」
「そうか……」
「生きたままビヨンドをやる事って、可能でしょうか?」
「可能だ。いや、可能だった・・・。彼が一度死ぬまでは」
そういう事もできたんだ。
まあ、今更だよね。
「ところで、誰かの復讐を手伝う専門のビヨンドにはなれるか?」
「幸運な事に、それは可能だ。ビヨンドとして仲介人と契約する際に、依頼のキーワードを決定できる。
FからDランクまでは一つだけ、Cランク以上はランクが上がる毎に更に一つずつ追加できる」
「魅力的じゃないか」
この辺の話はスナージさんからは聞いてない。
応用的な容だろうし、あたしが訊かなかったからかもしれないけど。
「それにしても、復讐を手伝うビヨンドか。隨分と殊勝なスタンスだ。
大抵は資金を稼ぎ、スキルを購し、より恵まれた環境で転生を遂げようとするものだが」
確かに、時間はかかるけど環境を自力で調えられる分、確実ではある。
変なものをブチ込まれる事も無いし、行き先の世界は選べる。
いいコトずくめだけど、きっと裏では々と汚い事をやってるんだろうなぁ……。
「ダーティ・スー君は酔狂が目的だろうがね。そうだろう? ロナ君」
「まぁ、呼吸をする度に伊達と酔狂しか吐き出さない奴ですから」
「彼の本質を、私よりもよく理解しているようだ。だが、彼は君に関してはその限りでもないらしいな」
「最初は拠點に置いて行くつもりだったみたいですしね」
あからさまに嫌がってたもん。
「それは意外だ。君を使い捨てにでもするつもりだったかと邪推していたのだが」
「見くびらないで下さいよ。あいつを悪く言っていいのは、あたしだけです」
「ほう」
「あたしが自分の命を報酬として差し出すと言った時、あの人はすごく悲しい顔をした。
普段は何されても澄まし顔とドヤ顔しかしない、あいつがですよ。
気取った言葉と過激な悪ふざけの裏側に潛む、かすかな“ぬくもり”を、あたしは垣間見たんだ」
そして、気が付けば虜になっていた。
次はどんな刺激的な事をやってくれるんだろう、って。
クソッタレのどうしようもない狀況を、どうやってブチ壊してくれるんだろうって。
出會ってまだほんのすこしだけしか、一緒にいなかった筈なのに。
「騙されて死んだ俺が言うのも何だが、駄目な男に引っかかる駄目の匂いしかしないな」
「馬鹿で悪かったですね」
うるせえ。
こっちだって一度、クソビッチに元カレ寢取られてんだよ。
「冗談だよ。渉立だ、ロナ。俺を殺せ。どうせ戻れないなら……ビヨンドという奴を、やってみたい」
「この世界に未練は?」
「無いとも言えないが、俺もやっちまったんだ……自分の命を、報酬にした。金は無かったから」
ヒイロ・アカシ。
お前もか。
「私が直々に依頼をけた為、ロナ君の時とはやり方を変えてある。ご了承頂きたい」
なんだと。
ふざけんな。
「……ところでクラサスさん。命が報酬になったら、売り飛ばしたと臓の差額はどこに?」
「転生した際に自で還元されるように仕組みを作った」
「えらく簡単に吐いて下さいますね。スナージさんは頑なに口をつぐんでいましたけど」
「彼はああ見えて真面目だ。立場というものも、考えてやってくれたまえ」
「そうですね。で? 還元されるソレ、あたしがビヨンドを続けるって言ったら早めに引き落としできませんかね? 高いスキル買っちゃったから、一文無しなんですよ」
クラサスはあたしをじっと見ると、溜息を付いた。
さては鑑定でもしたな。
「能力譲渡か……君も殊勝な」
そう。
あたしが買ったのは“能力譲渡”のスキル。
譲渡とは銘打っているけど、実際には指定した相手にコピーして與えるというもの。
手持ちの25,000アーカムも支払ったから、もう殘り866アーカムしか無い。
ヤケクソ萬歳。
もっといい手はあったけど、あれが一番納得できる方法だった。
あのデュラハン、元気かな。
「わかった、この依頼を済ませたら処理しよう。約束する」
「破ったらチクる」
「これでも私はBランクだ。軽率な真似はしないよ」
どうだか。
かなり胡散臭いんですけど。
「そろそろいいか?」
「その、マジで?」
「脳をやってくれ。心臓は、ドナー登録をしたから」
あたしは銀の杭を握りしめた。
本當に、やっていいの?
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