《ダーティ・スー ~語(せかい)をにかける敵役~》Task7 最終決戦を観戦せよ
悪いな、お嬢様。
最終決戦は俺のシナリオに変えさせてもらった。
刺客の魔法をいっぺんに出して、レジェンドガールの日常を滅茶苦茶に引っ掻き回す。
他所の學校にいる魔法をけしかけて、不良漫畫のようにかちこみをやらせてみたりもした。
刺客の連中に協力者を募らせた。
偽の命令書を用意するのはちょいと手間だったが、まあこれがまた上手く行った。
せっかくの夏休みも、これで臺無しパーだぜ!
そうして……路傍に転がるいたずら好きの石を、ようやくレジェンドガールはどかそうとしてくれた。
つまり、向こうからやってきた。
完全にトサカに來たレジェンドガールは、お仲間の魔法を引き連れて屋敷までお禮參りと來た。
臥龍寺財閥が警察や政治家はてはマスコミまで牛耳っている現狀で、よくやってくれたもんだ。
そして今は屋敷の前、魔法共が爭い合う地獄絵図の中心で、早草るきなレジェンドと臥龍寺紗綾おじょうさまが向かい合っている。
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俺とロナは屋上から観察中だ。
……執事の爺さんと一緒に。
爺さんは縄で縛って、けなくしてある。
ちなみに使用人共も一箇所に集めて、まとめて取っ捕まえた。
家庭教師の仕事をやりながら使用人全員のツラを覚えるのは骨が折れたが、その甲斐はあったってもんだ。
もちろん、お嬢様には緒だ。
あいつにはずっと、り口でロナとお茶をしてもらった。
「ごきげんよう、早草るきなさん? そちらからお越しになるなんて殊勝な心掛けですわね! オーッホッホッホッホ!」
腰に手を當てた優雅な高笑いに、レジェンドガールはまるで赤い布を見た水牛だ。
今にも地面を蹴って、ツノでも何でも振り回しそうな様子だぜ。
「ふざけんな。そうするように仕向けたのはそっちでしょ」
お嬢様が変……というより、ゴシックロリータの裝いの上に鎧を纏う。
「その調子で、わたくしのモノにおなりなさい!」
「お前みたいな奴が出て來るたんびに、魔法なんて無くなってしまえば良かったって思う」
青白い稲妻と、銀の氷柱がぶつかり合う。
実に敘事的エピックな景だ。
「あら! 勿無い事をおっしゃるのね!?」
「魔法は悪意をぶつける為のものなんかじゃなかった。悪意から日常を守る為のものだった!」
「それもまた、時代の流れでしてよ」
レジェンドガールは全てにおいて平均的だ。
何事もそつなくこなす。
周りの特化型に比べりゃきはつまらないが、経験に裏打ちされた安定はあるな。
だが魔法は負けず劣らず、派手だ。
事前調査の報通り、扱う魔法は雷だからな。
対するお嬢様は、経験のなさを搦め手で補う。
投技やカウンターはもちろん、設置系の魔法も。
特に設置系は會心の出來だった。
俺が三日三晩考えて、原作とやらに存在しないものを編み出した。
あちこちに銀の水溜りを作って、その近くにレジェンドガールが行けば、水溜りが手の形に変形する。
レジェンドガールが摑まれている間に、別の水溜りが氷柱になって飛ぶ。
お嬢様自も、氷の礫を使って面制圧って寸法だ。
『いやぁ、実戦で目の當りにするとえげつなさが解りますね……』
俺の隣で見ていたロナが、皮げに笑う。
爺さんに聞かれちゃマズいから、念話を使うように前以て打ち合わせしておいた。
『遠くからぶっ放すだけじゃあ蕓が無いからな』
……とはいえ、レジェンドガールも流石はベテランだ。
二度は同じ手を喰らわない。
さっさと水溜りを蒸発させて、距離を詰める。
お嬢様が摑み掛かろうとしたのを、杖に纏った青白い棒狀ので薙ぎ払う。
咄嗟に距離をとったお嬢様を牽制するように、レジェンドガールは青白くる杖を構えた。
「稲を纏う水銀の氷柱ゲフローレンメルクール・ウント・ブリッツ!」
お嬢様の氷柱の狙撃。
ただし、跳弾させて角度を変えている。
レジェンドガールはそれらを杖で次々と弾きながら、距離を詰めていく。
まるでジェダイだな。
お嬢様は水銀の壁を造り、再び距離をとる。
大型の氷柱による、渾の一撃。
だが、レジェンドガールはそれも弾き返した。
しかも、お嬢様の肩にぶち當てやがった。
肩アーマーが砕けて、地面に転がる。
「くっ……やりますわね……」
「伊達に長いことやってないから。小學三年生から中學二年生まで、ずっと。
どんなに強大な力を手にしても、一ヶ月そこらじゃ使いこなせるワケがない!
私がどんな思いで戦ってきたかも知らないのに、他人を実績や能力だけでしか見てないあんたに、その力が解るワケがない!」
ごちゃごちゃとうるせぇ奴だぜ。
そういうのは正義の魔法が言うべき臺詞じゃねぇだろうに。
「経験は、高度に明文化されたマニュアルと最新の技で、どうとでもできますわ」
「じゃあ訊くよ? 周り、見えてる?」
「な、なんですって……?」
辺りを見回して、お嬢様は愕然とする。
その理由はただ一つ。
「あんたで最後だ!」
仁王立ちのままレジェンドガールはお嬢様を指差す。
言葉通り、臥龍寺財閥の刺客は主人公レジェンドガール側の魔法に倒されていた。
くたばったわけじゃあない。
ただボロ雑巾みたいに、そこらじゅうで倒れているだけだ。
「よくも貴重な人材を!」
「仕掛けておいてそれ? ふざけんなよ、臥龍寺紗綾!」
「わたくしは、いたって真面目ですわよ!」
杖と杖がぶつかり合い、お互いの杖はあらぬ方向へ吹っ飛んだ。
そしたら今度は、取っ組み合いが始まった。
こいつは酷い。
まるでガキの喧嘩だ。
二人の間に発が起き、両者は飛んで行く。
レジェンドガールは格好良く片膝立ちで著地。
一方お嬢様は、両足で轍を作りながら後ろに飛んでいき、しして止まった。
「るきな! とどめを!」
「私達も力を貸すわよ!」
「そうだ、やっちまおうぜ!」
「これで最後にしよう!」
口々に加勢を宣言する魔法共。
定番通りといえば、そうなるだろう。
そしてこれはリンチじゃあない。
何せ、お互い様だからな。
全員の力が一つになって、お嬢様に降り注ぐ。
「――ああ、こんなの聞いてない」
お嬢様がつぶやくと同時に、魔法の雨に押し潰された。
辺りは土煙に覆われたが、ややあってから晴れていく。
鎧が砕けて、うつ伏せに倒れたお嬢様。
息も絶え絶え、立っているのもやっとなレジェンドガール一味。
リーダー格のレジェンドガールは既に、変が解けていた。
ロナは思案顔でその様子を見下ろす。
『どうしましょうかね、これ……紗綾さんを勝たせなきゃ依頼功じゃないですよね?』
『どの勝負でとは、書かれていなかったぜ』
――それじゃあ試合も終わったし、フーリガンが審判を蹴飛ばす時間だな。
ロナに目配せしてから、俺は煙の壁で階段を作りながら、屋上から降りていく。
爺さんはロナが襟首を摑んで引きずっている。
拍手もえて、勇敢な魔法共に賞賛の言葉を送ってやるとしよう。
「ブラヴォー、ブラヴォー!」
「誰だ!」
傷だらけの魔法共の視線は、俺に釘付けだ。
俺は営業スマイルを浮かべつつ、親指で自分自のツラを指した。
「――ごきげんよう、俺だ」
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