《ダーティ・スー ~語(せかい)をにかける敵役~》Task8 空母に到達しろ
「もうちょっと付き合ってくれても良かっただろうに、勿つけやがるぜ」
外に投げ出されないよう慎重に歩きながら、縦席を目指す。
ロナは肩をすくめて首を振った。
眉間の皺の本數や深さを見るに、これはあまり機嫌が良くないツラだな。
ロナに貸したサングラスは、返してもらった。
俺は、それを再びかける。
「それより、どうします?」
「やれるだけの事は、やってみるさ」
ロナと手分けして辺りを探ったが、パラシュートのたぐいが見當たらなかった。
せいぜいがコカインのった怪しげな箱が雑に積まれているぐらいだ。
「あ。これ、バルログ・ファミリアの輸品だ」
「どうでもいいぜ」
「そうですね。悪名高い麻薬王の置き土産なんて……あ、なんかクサい」
それもその筈さ。
「見ろよ。死だ」
「おえっ……」
サーモグラフィーに変ながあったから箱の山をかき分けてみりゃ、何やら髭面の太っちょがくたばってやがった。
多分、骸骨野郎がここに來る前に殺したんだろう。
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役に立たないものばかり詰め込みやがって。
こうなったら、頑張って著陸させるしかない。
……気圧が低いせいで、々とが吹っ飛ぶ(髭野郎も)。
あの骸骨野郎、どうやって仕返ししてやろうかね。
さあ、縦室に到著だ。
もちろん誰もいない。
幾つかのランプが赤くっているのが、なんとも哀愁をうね。
いかにも「そろそろ駄目そう」ってじだ。
エンジンは、まだ一つだけ生きているらしい。
俺は輸送機を転回させた。
オシャカ寸前なだけあって、小回りは効かない。
が、大した距離でもないだろう。
さっき航空機縦スキルを購したから、あらかた構造は理解できる。
が開いたんだから、高度は下げればそれでいい。
そうすりゃ気圧差でが吹っ飛ぶ事も無い。
が、それでも理解できない計が幾つかある。
何やらメーターの針がゼロを示していて、異常を示す赤ランプが點滅している。
文字を読む限りじゃ、プラズマでシールドを発生させる裝置のものらしい。
道理で、今の今まで撃墜されずにいられたわけだ。
「あたしとしては、手を繋ぎながら心中するのも乙なシチュエーションだと思うんですけどね」
「そいつは卻下だ。毆りたい相手がなくとも四人はいる」
「誰です?」
「ロイドと骸骨野郎、それとイゾーラ」
「なるほど。殘る一人は?」
「お前さんだよ」
頭に、軽く拳骨を喰らわせてやる。
「あいてッ! ~~……!」
小気味よい音からしばらくして、ロナは頭を抱えてうずくまった。
恨めしげに見上げてくる両目には、涙が浮かんでいた。
「超痛いんですけど」
「お前さんの命は俺のだ。俺の許可なしに死ぬのは許さん。いいな」
「……」
かと思えば、今度は上目遣いに意味深な笑みを浮かべてやがる。
ロナもたいがい、まともじゃないね。
一どこに、ニヤける要素があるってんだ。
「嬉しい……こんなに大切にしてもらえるなんて」
「聞こえてるぜ」
「聞かせてるんです。今ので、濡れちゃったんですけど、責任とってくれますよね?」
パンツ姫のが移ったか?
それとも、乗り酔いを誤魔化したいってか?
仕方ない……メンタルケアは重要だと割り切ろうじゃないか。
「責任をもって、お前さんを地獄に送り屆けてやろう。しっかり摑まんな」
「そうですね。ぬくもり補給します」
後ろから抱きしめられ、ロナの頬が背中に當たる。
まったく、勘弁してくれ。
こちとら縦に集中したいんだ。
仕事が終わったら、たっぷりお仕置きしてやらんとな。
「舌を噛まないよう気をつけな。レーダーに敵影だ」
遠くからミサイル撃っときゃいいご時世に、律儀にドッグファイトでも決め込もうってハラか?
騎士道神ここに極まれりってな!
「見ろよ、ロナ。特等席ならではの眺めだぜ」
「う、うぷ……遠慮、しときます」
さっきから緒不安定なのは、やっぱり乗り酔いかね。
キャノピーから見える景は、まさしく空の格闘戦だ。
こんなのをまともに見ていたら、胃袋が空っぽ・・・・・・になっちまうかもしれん。
追いすがるのっぺりした灰の機は、空軍のものだろう。
そいつがミサイルを発すると、追われていたイルリヒト側の戦闘機が青白いの粒をばら撒いた。
その瞬間、ミサイルは狂ったように暴れだして、空軍の戦闘機を目掛けて飛んで行く。
ミサイルはそのまま、空軍の戦闘機を木っ端微塵にさせた。
ステイン教授も、とんでもない発明をしてくれたもんだ。
あれが世界中に広まれば、空戦はきっと百年以上前に逆戻りだぜ。
中距離でのミサイルも敵わないと悟った空軍側は、今度は機銃に切り替える。
オレンジの線が幾つも差して、イルリヒト側の戦闘機は次々と火と煙を噴いて墜ちていく。
やっぱり舊式は駄目だな。
イルリヒト側で殘っているのは、空軍側と似たような形の奴だけだ。
そいつらがまたえらい小回りを利かせて、空軍側の奴らのケツを簡単に取っていく。
真橫を誰かが突っ切ったのか、風圧で揺れた。
続いて、カツンカツンと弾が輸送機にぶつかる。
このままじゃ、本當にオシャカになっちまうな。
機銃でも付いてりゃ多は心強かったろうに。
そうこうしているうちに目的地が見えてきた。
縦桿を握って、狙いを定める。
甲板に水平になるように高度を更に下げていく。
「あー、管制室?」
『こちら管制室。今から三つ數えるうちに所屬を』
「雇われだよ。ナンバー2に訊いてみな」
『そんな不明瞭な――』
『――どけ! おい、雇われ! 早く著陸しろ! ロイドが船に侵した! このままでは持たん!』
途中で、聞き覚えのある聲が割り込んできた。
なら訊くことは一つだ。
「大統領も一緒かね」
『奪還されている最中だ! 出されたらこの空母は沈められる!』
大した指導者サマだよ、お前さんって奴は!
「彼ら、何してるんですかね」
「オペレーターが地獄に追い返そうとしたら、雇い主本人がそいつを突き飛ばして大歓迎の意を表したって所さ」
「いや、それは解るんですが――うわぁッ!?」
思ったよりも著陸時の揺れが激しい。
ちょいとばかし、減速が足りなかったかな?
まあ頑丈な輸送機だ。
多は大丈夫――、
「――っぷは! ふう、快適すぎて反吐が出そうだぜ」
「んぶぐ、おえ……ぶへぇッ、んぐぶぶぶ……ぶッえ゛ぇ゛ぇ゛ぇ」
噴煙漂う殘骸から、どうにかして出した。
無事に到著って事さ。
サングラスは……ヒビがったから懐にしまっておこう。
隣でうずくまるロナの口からは、水音を立てて容・・・が垂れ流されていた。
そういう趣味・・・・・・は無いから、俺はそっぽを向きながらロナの背中をさすってやる。
ようやく音が途切れ途切れになってきた頃合いを見計らって、肩を叩く。
「……終わったかい」
「けほっ、けほっ! うぅ……口の中がまだ酸っぱいんですけど、口ゆすいじゃ駄目ですか、これ」
「急ごうぜ。次はここが沈む」
「おえっ、目標達する頃にはゲロが口の中で乾いてるのか……」
この様子じゃ、しばらくはご機嫌斜めだろうな。
悪いがしだけ我慢してくれ。
と言いたいが……気持ちはよく解る。
こりゃあプレゼントは発しないといけないね。
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