《ダーティ・スー ~語(せかい)をにかける敵役~》Task1 仕事仲間の狀況を確認し、計畫の準備をしろ

ごきげんよう、俺だ。

まさか飛んできて早々、トラブルが起きるとは笑わせてくれやがるぜ。

ロナが消えやがった。

依頼をけて飛ぶ時には、しっかりいた筈だ。

拠點で書いたサインも……俺の目を誤魔化したんじゃあなければ、あいつの名前があった。

まったくあの間抜けは、どこでドジを踏んだのかね。

しばらくは紀絵と二人でやっていくしかない。

それとも何かね。

この前の紀絵と同じように、後から生前の姿で來るのかい。

その時の紀絵はまだビヨンドじゃあなかったが。

……まあいいさ。

痕跡は探せば幾らでも見つかるだろう。

依頼容は、今から一週間後の決戦に備えて“王都アルヴァント帰參者連合”の幹部を護衛する事。

何やら、どでかい敵とやらを討伐するんだと。

で、その為に“初夏の旅団”とやらを徹底的に躙しろとまで言われているが……人殺しを頼まれたら茶化して拒否して遊んでやろう。

何せ、ビヨンドってのはCランクから依頼容について渉できる権限が手にる。

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この見覚えのある朽ち果てた砦に依頼主はいない。

狀況も條件も勢も違う中で、ロナとまるきり同じシチュエーションになるとは考えにくい。

王都アルヴァントっていう所に行けば、依頼主かその関係者とはすぐに會えそうだ。

何せ、組織名に地名が組み込まれている。

この世界じゃないどこかの地名だというのなら話は別だがね。

問題はロナと、あいつがいなくなった事で狼狽えている紀絵だ。

「うう……ロナさんはどちらに……」

なんて、紀絵は両手の人差し指を突き合わせながらこぼす。

どうしてくれようか。

「やることは変わらん。それとも、ロナ先輩・・がいないと不安かい」

「はい。今のわたくしでは、足手まといになってしまうのではと」

「Cランクの依頼はEランクには荷が重いってか?」

「その、正直に申し上げますと、恐いのです。先生の期待を裏切る事が……」

「気に病む必要は無いぜ、紀絵」

杞憂だね。

俺は他人に対して、能力について期待しない。

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俺が期待するのはあくまで思想だ。

言葉であり、振る舞いであり、言うなれば“そいつに世界を救ってしいと思えるかどうか”だ。

が、それを言うにはまだ早いだろう……。

まずは、紀絵の肩を軽く叩く。

「俺は一人でも戦える。だから俺のやり方で戦う。

お前さんも、お前さんが戦いたいように戦えばいいのさ。例えばサプライズを畫策したり、この世界のお茶會を楽しんだりとね」

「え!? えっと……」

やれやれ、お悩みかね。

理解するまでに時間がかかっても、いっそ忘れちまっても構わん。

その間に俺は計畫を立てておこう。

その一、ロナを探す。

奴だけ消えた原因、その因果関係、他人の仕業ならその犯人と手口。

これを、依頼と並行してやっていく。

できればクラサスの野郎が首を突っ込んでくる前にやっておきたい。

あの野郎にこれ以上の借りを作りたくない。

先手を打って、あいつの長講釈をきっぱり斷ってやるべきだ。

その二として、この世界は間違いなくゲームの世界じゃない。

匂いも、寒暖もじる。

空気からして違う。

俺が何度も足を運んでいる世界と、よく似ている。

地面に転がるの塊には、蝿だって集っている。

……暴力の殘り香は、甘いエゴで隠されたりしねぇって事さ。

こいつは紛れもなく現実だ。

データ上でやり取りしていたあらゆるものがどうなったかは知らんが、プレイヤー共はさぞかし泡を食った事だろう。

なんでこんな狀況になったのかを調べておけば、そのタネ明かしを材料カードに取引を灑落込む事だってできる!

最終的に毆られて引っ手繰られてもいい。

あくまで、元の世界に戻りたいと考える連中がよだれを垂らしてそれを求めるツラを拝むのが目的だ。

何せ俺には関係が無い。

目の前でハスキー犬が地元の有名スポーツ選手の新聞記事をかじるように、末に扱うそぶりを見せてやれば、綺麗事なんざすぐに吹っ飛ぶ。

……どうせ、いるんだろう?

水を塞き止めて金をせびるようなクソ野郎が。

解りきった話だ。

さて、そうと決まれば――、

「「「「「ごきげんよう、俺だ」」」」」

俺が五人も?

ふはは!

こりゃあ大層なサプライズで!

「――!? せ、せせ、先生が、た、たくさん!?」

「落ち著けよ。銃からビームを出す奴が本の俺さ」

「それだと撃つまで判らないではありませんかっ!」

直後、幾つもの銃弾が俺達目掛けて放たれる。

俺はその全てを、煙の壁で防いだ。

「ひ……」

世話の焼けるお嬢様だぜ。

仕方がないから腕を摑み、抱きかかえ、そして周りの“俺もどき”を掃除しよう。

シリンダーに裝填されているのは、プラズマカートリッジだな?

よし!

ズドン、ズドン、ズドン、ズドン。

一つ、二つ、三つ、四つ――。

急所を狙えばあっという間にケリが付く。

わざわざ手こずるふりをする必要すら無い。

「は、早すぎますわ……あんな一瞬で……」

「俺のコピーなら、き方、弱點も同じ筈だぜ」

「先生に弱點などある筈がありませんわ……」

は……消えないな。

しっかりと殘ってやがる。

この場合、得をするのは誰だろうね。

それは後で考えよう。

さて。

「お前さん達の目的は何だ。誰彼構わず夜を永遠にする事かい」

向かい合う銃口、それと眼と眼。

殘った一匹に、俺は問いかけた。

果たして偽者の答えは?

「いいや、違うね。狩りは貴族同士の思い出作りさ」

などと偽者は抜かしやがる。

こりゃ駄目だ。

ウィットも皮も足りん。

真似するならもうし研究をしてくれ。

俺はブルジョワジーよりプロレタリアのほうが好きだっていうのに。

「狐が狐を狩ると抜かす。ましてや、木彫りの狐がだ。笑わせてくれやがるぜ。

作り主はお前さん達に、し粘った上で打ち倒される役割しか與えなかったというのに」

これが俺のセリフで、

「ご高説どうも。じゃあ死んでくれ」

これが奴の返事だ。

煙の槍が幾つも、俺達を囲むように宙に浮かんだ。

その先端はどれも俺達に向いている・・・・・・・・。

つまりそれは、俺の偽者が煙の槍を使ってきたという事さ。

奴が煙の槍を飛ばしてくるのを、俺も煙の槍で応じる。

飛んでくる方向を正確に捉え、相殺すれば問題は何一つ無い。

能証明ご協力どうも、本サマの引き立て役モンキーモデル。

そんなだらけな狙いじゃあ、俺を墜とす・・・には足りない。

ズドン!

俺のバスタード・マグナムより放たれたビームは、奴のを吹っ飛ばした。

転がった頭の付けだった場所から、香ばしい焦げ臭さが漂う。

「――殘った奴が本の俺さ」

俺は意に介さず、バスタード・マグナムの銃口から立ち昇る煙を吹き消す。

「あー……は、はい……」

なるほど、こりゃあ厄介なもんを用意してくれやがった。

おおかたゲームの運営會社が俺を元にNPCで作ったのが、バグで増えまくったんだろう。

碌な事をしやがらねぇ。

「あれを越えるサプライズはそうそうあるまい。殘念だったな、紀絵」

「もしかしてわたくし、期待されて落膽されてしまったのでしょうか」

「俺の隣にいる限り、お前さんに向けられた俺のあらゆる言はお前さんが取捨選択して楽しむ為に存在すると考えていい。

ビュッフェ形式の食事會みたいなもんさ。納得できる部分だけを食えばいい」

「謎解きゲームをリタイアするのは、わたくし自の矜持が許しませんわ」

「それならそれで、それなりの楽しみ方ってもんを見つけりゃいいだろう。俺はそれを指示する立場に無い」

俺がお前さんにできる事はと言えば、お前さんの行う予定であるあらゆるイタズラの責任を取って俺自が黒幕を名乗り出る事くらいのもんさ。

世間様の文脈も“を頭に據えるべからず”と仰っている。

まるで黒焦げのキャベツだ。

アドルフ・ヒトラーもスターリンも男だったろうに。

「行こうぜ」

「はい」

俺は紀絵を腕から離してやり、偽者の首を指に収納した。

手土産、ホムンクルスの研究、取引材料、まあとにかく使い道は々ありそうじゃないか。

それから遠くの城壁を目掛けて歩いた。

懐かしいねえ。

召喚の石版で阿鼻喚の地獄絵図を作り上げてやったが、あの時の連中は元気に今の現実をれてやがるのかね。

きっと、もうコンティニューはできない。

この世界じゃあ、デスペナルティじゃなくて本當にくたばっちまう。

ただし、俺達ビヨンドは別枠だがね。

自暴帝チパッケヤ君やら地下通路のアンドレイやらは、その事実を知った時にどんなツラをしやがるのか。

今から楽しみだ。

道中でも、何度か偽者共と戦う事になったが、紀絵に戦わせて行パターンをじっくり観察させてもらった。

いい収穫だった。

さっさと殘骸を集めて、築地市場の競りみたいにしてやりたいね。

一応、キレイな奴も殘しておこう。

なあに、首を絞めれば出來上がる。

せっかく安くない金アーカムをつぎ込んで収納指の容量を拡張したんだ。

有効活用しないと勿無いよな?

紀絵の「自分を殺す時だけは一切容赦しない……」という言葉は、敢えて聞き流した。

俺と同じツラをしてやがるんだ。

俺がどうしようと勝手だろう。

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