《ダーティ・スー ~語(せかい)をにかける敵役~》Task7 今後の予定を整理しつつ、目的地へ向かえ
俺は、このクソッタレなキャンバスを塗り潰す。
裏切りの種は既にあちこちに撒いておいた。
それは不安であったり、不信であったりするものだ。
芽吹くのを待つまでもない。
何せ、収穫するのは俺じゃない。
厳罰主義が臺頭すりゃあ起きる事は一つ。
不正の橫行だ。
目の前には、さっきまで會議していたらしい連中が固唾を呑んで俺を見守っている。
俺は後ろ手で扉にロック(このために、扉を壊すのは控えておいたのさ)を掛けつつ、バスタード・マグナムをホルスターから取り出した。
「さて。この先もゆぅいに見捨てられたりはしないだろうと思った奴は、出て行ってくれ」
どいつもこいつも巖に打ち付けた釘のように、ぴたりともかない。
誰に付けば得をするのかを考えた結果がそれって事かい。
よくやるよ、まったく。
なら文句は無い。
思う存分、使い捨てにできるってもんさ。
「満場一致で、あのお姫様の玉座に天井から剣を落としたいってか。よろしい、じゃあ俺に協力してくれるかい」
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「そ、その前に一つ聞かせろよ! お前がスパイ行為をしていない保証はあるのかよ?」
「逆の立場から、俺もお前さんに対して同じ質問が出來た。敢えて俺がそれをしなかった理由は解るか?」
「それを考える頭がなかっただけだろ! 大、質問に質問を返すのは大人のマナーとしてどうなってるわけ?
僕達はいつだってそれを守ってきたし、お前が仕事を手順通りにやってくれりゃ何の問題も起きなかったんだよ! バァーカ! お前は――」
ズドン!
「――ひぃ!?」
「調教師・・・とやらも銃聲は恐いらしい」
「なんで僕の……それはこっちの世界に來てからは名乗っていない筈!」
黙れよ。
ズドン!
「ひっ……」
「おいおい、誰もこいつに狂犬病の予防接種をしてやろうとは思わなかったのかい。
ローティーンのガキどもはお前さんにビビって何もできなくなるかもしれんが、俺には通用しねぇぜ。
お前さんが考えて辿り著く幾つかの答えのうち一つを想像して、それを解決する努力をしやがれ」
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サングラス裝著。
盜聴のたぐいは無いらしい。
魔力だろうが熱を全く出さないなんざ、そうそう作り出せるものでもなかろうよ。
「本題にるぜ。既にあちらさん……そう、お姫様はお前さん達に見捨てられる事を知っている。
會議室で使われている資料はこれだ。だが実際に現場で使われる資料は、これだ」
「これは……! これじゃ、まるで、U-BOXの進路は俺達を狙って……」
「危ない所だったぜ」
「なぜもっと早く知らせてくれなかった!?」
「まずは禮を言ってくれんかね。何せ、部犯は何処に潛んでいるか皆目見當がつかないんだ。
下手にいて、お前さん達が會議室で揃ってくたばったりでもしたら、それこそ何を言われるか解ったもんじゃないだろう。
何せ、俺が請けた依頼は“聖サマとその取り巻きを然るべき戦いまで守れ”って話だ。
直前まで、計畫が進んでいると思わせておく必要があったのさ。とはいえ、まだ真犯人が見つかっていない」
まあ、それは建前だ。
部犯も何も、犯人は俺様だよ!
――ひとつめの種トリック。
それは、會議資料にちょいとばかり手を加えてやった事さ。
実際のルート設定は、U-BOXとやら……もとい、あの白いデカブツが街に進行しないようにしてある。
末端での手違いって事にしちまえば丸く収まるし、結果的に犠牲が出ないなら萬々歳じゃあないか。
……もっとも、本は俺の手元だ。
頼むぜ、未來のホームズくん!
証拠を託してトンズラぶっこいて、依頼主サマには一人で反省會をやってもらわにゃならん。
―― ―― ――
――ふたつめの種トリック。
奴ら全員の関係に楔を打ち込んだ。
簡単な事じゃあないが、ある方法を使えば俺への追及を免れられる。
伝聞→伝聞→伝聞→伝聞↓
↑伝聞←伝聞←伝聞←伝聞
これで良し。
誰がどのタイミングで伝えたのかが解らなくなっちまえば、疑心暗鬼に陥るのも時間の問題さ。
不幸の手紙だろうが魔裁判だろうが、本質は同じだ。
孤獨な獨裁者がどのようにしてを滅ぼすのかも、リンゴが何なのかを論じるのと同じくらいありふれた結末によって説明されている。
吹雪の中のロッジに取り殘された悪漢共が最後のハムの一切れを目の前にしたらどうなるかは、深く考えるまでもない。
ましてや、相次いで変死や行方不明が出てきたんだ。
今までレジスタンスも死者だけは出さないように頑張っていたようだが、ここに來てこれだ。
第三者が意気揚々とちょっかいを出してきたかもしれんときたら、とてもじゃないが仲睦まじく心穏やかに、なんて真似はできる筈もない。
じゃあ次は、見捨てるか、泳がせるかの判斷だ。
空中分解を促すには、恐怖が必要だ。
まったく、ゆぅいの奴は何処に行っちまったんだかね。
騙す側が騙されて、或いは見放されて墜ちてゆくサマを見屆けてやろうと思ったのに。
オー!
我ながら恐ろしいね!
俺もハメられて蹴落とされないよう、せいぜい気張るとしようじゃないか。
道中で面白いものを見つけた。
こいつは……ワインのボトルか。
誰だか知らんが、隨分と面白いもんを置きっぱなしにしやがる。
現実世界からの持ち込み品かね。
まさかコラボアイテムでもあるまい。
中は殆どこぼれちまったみたいだが、水筒代わりには使えそうだ。
……収穫の準備はこの辺りで終わりだ。
救助活でも決め込むとしよう。
あの白くて馬鹿でかい化けを潰しに行けばいいんだろう?
それとも、誰かに倒させるアテ・・・・・・・・・でもおありかね?
と、門前に辿り著く頃合いで言い爭いを小耳に挾んだ。
聲は二人分。
「逃した!? どういう事だ! あれほど厳重に管理しろと!」
「いや、聖様から直接指示をけて解放したんだぞ! そっちこそ引き継ぎ大丈夫かよ!」
「なんだと!?」
「噓だと思うなら、ほら。指示書! サインもあるだろ!」
「筆跡は! どうなんだ!」
以降は、記憶に留める価値の無い罵り合いばかりだった。
こりゃあ隨分と込みった事ですこと!
誰を逃したのかは、だいたい想像が付く。
「仲間割れ終了! そこに丁度いい番犬がいるだろ?」
しばかり悪知恵の回りそうなツラをした奴が、二人の間に割り込んでくる。
そいつの視線は俺を向いていた。
「ああ」
「……追わせよう」
走者を出すのは俺のシナリオには無かった。
さては誰か、離間工作でもしやがったな。
こっちが考える策は大抵、あちらさんも同じことを考えているものさ。
それとも、このハプニングすらも演出で、これを認めて許すことで懐の大きさをアピールしてやろうという腹積もりか。
だとしたら、実にクールだ。
もっとも、真っ黒で広々とした懐じゃあ、デブリが飛び散ってやがるから、そこに飛び込もうとする奴はいないだろうがね。
そうとも、ゆぅい!
お前さんの事を言いたいのさ!
……全容を把握できないのは、実に退屈で腹立たしい。
南西地區の墓所は、恐らくブラフだ。
あの辺りは地形がり組んでいて、時間稼ぎにはお誂え向き……なんて報くらいは仕れてあるぜ。
行った先で何か事件があって、それを俺のせいにするという手もある。
よく使い捨てるには、それらしい罪をおっ被せちまえばいい。
既にそういったケースを二度、俺は見掛けている。
紀絵とロナだ。
やる事は一つ。
依頼主サマ――ゆぅいをもう一度、視界に収める事さ。
あの王蜂をワッフルのにしてやらん事には、話が進まねぇ。
何処に隠れてやがる。
ほら、俺を「所有した・・・・」と宣言しろよ。
いつもの勝ち誇ったツラで、本のロナの目の前で。
その瞬間が待ち遠しくて仕方がないんだ。
『もしもし、先生?』
……紀絵からの念話だ。
紀絵は、ロナの似顔絵を片手に街へと繰り出していた。
『ロナを見つけでもしたかい』
『偽者のほうですけれどもね』
本は何処に隠れてやがるのかね。
熊のクソを見た後みたいに、嫌な予がしやがる。
『お前さんなら、そいつをどうする?』
『見張りたいと思いますわ』
いいじゃないか。
淀みなく答えられるなら、てめぇで道を決められる程度には考えているって事さ。
『じゃあ、そうしてくれ。ただし、バレないように気をつけな』
當たり障りのない返事で見送るとしよう。
俺には俺の仕事タスクがある。
あのゆぅいの居場所をこの狀況で探し続けちゃあ、変な疑念を持たれちまう。
仕方がないから化け退治の時間だ。
目的地は、白い四足のデカブツ。
ダーティ速達便で、戦場との距離を詰めよう。
……ロナ。
今まで敢えて俺に付き従うという選択をし続けてきたお前さんに、どんな心境の変化があったのかを聞かせろよ。
もう、籠の中の鳥じゃあないんだ。
さえずるだけが能じゃない筈さ。
全てが片付く頃合いに、お前さんの正義を検証しよう。
そいつが、このミッションにおける最高のお楽しみだ。
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