《ダーティ・スー ~語(せかい)をにかける敵役~》Extend19 あたしのスターシューター
スーの宣戦布告から數十分後。
はじめはあたし達の陣営より、ジェーン側のほうが明らかに頭數が多かったけれど、流石に相手が悪すぎたというものだ。
「――ぐっ、うう……!」
激闘の末、元カレが膝をつく。
ジェーンも満創痍だし、こいつが連れてきた取巻き連中も全滅だ。
あと、スーが用意していたっていう怪も、もちろん倒された。
決著が付くまでに要塞の城壁がかなり壊されたけど、元々が廃墟だったわけだし、正直まぁ仕方ない。
「安心してくれ。ちょいとばかり院してもらうだけさ」
ズドン!
スーの拳銃から発されたのは、普通の弾丸だ。
どうやら狙いを外してしまったらしく、何とも殘念そうな顔をしている。
「手のひらにを開けてやりたいところだったが、肩じゃあなあ」
「ちっ……見通しが甘かったわ……茶番で済ませられるレベルじゃないわね。
あなたとは今後も仲良くやっていきたいのだけれど」
スーが、ジェーンのぐらを摑んで、壁際に投げた。
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「俺の気が変わるまでは斷るぜ。ロナは俺のものだ。橫から奪うなら容赦はしない」
「あらあら……ねえ、ロナ? あなたは果たして、あなたをモノ呼ばわりするような男やつに付いてくひとだったかしら?」
「こいつが本気でモノ呼ばわりしてると思います?」
こんなん、どう見てもポーズだろ。
いつだって悪的なんです、この人は。
「んー、どうしても私に付いていく気は無いのね?」
「復讐のチャンスをくれたことは謝してます。けど……――」
時折見せる優しい表を思い返すと、あんたを嫌いにはなれないよ。
それでも、それでもね。
やり方はあったと思うんだよ。
「――あたしは、茶番と知っていても、冷笑するふりをしながらも……別に死に別れるわけじゃないのに本気で・・・助けに來てくれる、この人が好き」
あたしはスーの腕に抱きつく。
スーは、それを払いのけないでくれた。
「ふーん。お熱い間柄ですこと。ま、それなら邪魔はしないわ。好きにしたらいい。けれど、ディスガイズ・ダガーは返してもらうわよ」
「あぁ、これですか――ん、あれ?」
取り出して手渡そうとしたら、ダガーとケースがフッと消えた。
もしかして、あたしらビヨンドの懐中時計と同じ仕組みだったりする?
「盜もうとしても無駄だったってわけ。掛けた保険は最後までにしておかないとね。
おかげさまで、あなたが他人のを取らない格ってことが解ったのは、収穫のひとつね」
「その……できれば、仲違いはしたくないんですけどね」
「安心して頂戴。私は恨み辛みで対立しようとは思ってないわ。板挾みになって悩む子を鑑賞するのも、また一興だけどね」
「さいですか」
ブレねぇな、こいつ。
他の人にもそういうふうに観察してるのかな。
例えるなら悲ドラマ好きが高じて、自分の生活空間周辺の修羅場まで勝手に覗き見するような。
あれ、もしかしてこれは……しょーもない例えだけど、あながち間違ってないかもしれないぞ?
「何はともあれ、依頼は達よ。ご苦労様、またどこかの世界でまた會いましょう」
ジェーンはそれだけ言うと、壁のから飛び降りた。
地面に到達するかしないかぐらいのタイミングで、彼はの粒になって消えた。
あとは、ちょっと後ろのほうでへばっている元カレくらいか。
ちょうど、スーから何かを手渡されているところだった。
アレは多分“解析班”の行方に関係するアイテムかな……?
「……ねぇ。ナイン・ロルク」
敢えて、本名は呼んであげないよ。
スーを召喚してくれた恩はあるし、長はしているけれど、それで罪が帳消しになるわけじゃない。
あたしが自らの命を差し出すに至るまで壊れたのに、助けてくれなかった。
殺しはしないけど、完全に許したわけじゃない。
距離は置かせてもらう。
……。
だって、あたし、死んだし。
世間には「自殺するのは弱いからだ」なんて言う奴が大勢いる。
だったらあたしと同じ狀況に追い込まれてみろってんだ。
……うぅ、時間がない。
懐中時計も足元もりに包まれて“もうすぐ帰還しますよ”っていうのが目に見えてわかる。
「言いたいことがあるなら、何でも言ってくれ」
……。
…………。
罰を與えてしいとか抜かしたらどう答えようかと思ったけど、別にいいんだ。
どうでもいい。
恨む相手はもう、くたばったんだ……。
「別に……」
「……」
「あんたからは、何かあります?」
「俺のことは、恨み続けても、忘れても、どっちでもいい。それだけの事をしてしまった。
英雄になんてならなくても、せめて自分の手の屆く範囲は守りたかったのに……」
同をうような顔で泣くなよ。
あたしが泣きたかったのに。
だからお前はダメなんだよ。
「だったら次はもっと頭を使うか、それができないなら優秀な參謀役でも探してみて」
「……」
「……じゃ、あたし帰りますんで」
踵を返して、スーの所へ。
紀絵さんと手を繋いで、その場に立つ。
……。
あぁ、もう!
「あきら。死なないでね」
しゃあねぇな。
オマケしてやるよ。
ほら名前呼んでやったから早く立ち直れよ!
「――ロナ」
あいつが何を言おうとしたのかを聞きそびれた。
けど、まぁいいや。
どうせあいつの自己満足だ。
―― ―― ――
すったもんだしたけど、ゆぅいは死んだ。
取り巻きの“Big Spring”幹部連中も、きっと無事では済まされないだろう。
元の世界に戻る為のカギを握る解析班の狀況を知るすべは無いけれど、生きているなら何とかなる筈だ。
あたしは……あたしが手にれたのは、ジェーン=イゾーラに関する僅かな報と、母親クソババアをまんまと未亡人にしてやったという事実だけだ。
ゆぅいの絶した顔とか、奴の末路とかは、そりゃあ見ものだったけどさ。
不幸自慢をするわけじゃないけど、それまでの苦労に比べて隨分とささやかな収穫じゃないか。
ちっとも割に合わない。
……。
「ロナさん、今回はさぞかしお疲れでしょう」
「すみません。あたしの獨斷専行で振り回してしまって」
「次やったらスー先生のゲンコツに加えて、おペンペンもしますわよ。ハリセンで」
「ハリセンは……困るなぁ」
「しかもアルミホイルとバネでコーティングした、ストロングハリセンで!」
「わぁーすごいなぁー想像もつかないやー……」
冗談で和ませてくれるつもりなら、大人しく付き合おう。
せっかくの好意を無下にしたくない。
「何でしたら今すぐ制作に取り掛からせて頂きますけれど、よろしくて?」
……あ。
目が笑ってない。
これ多分、ほっとくとマジでやるやつだ。
「……すみませんでした」
「よろしい」
「ついでに言うと、ガーリックのり弁とか呼んだのは他でもないあたしです。ごめんなさい」
「……あのメイド、ロナさんだったのですね。道理で初対面にしては話がスムーズに……あの段階から敵の懐に忍び込むのは、辛かったでしょう」
あたしがうつむいていると、紀絵さんに頭をでられる。
紀絵さんはほんのしだけ背びをしているのが、足元を見てわかった。
(背丈は紀絵さんのほうが高いのにね)
何とも微笑ましい努力だ。
生前はあたしより年上だったし、お姉さんぶりたいのかな?
「――?」
ふいに、ぎゅっと抱きしめられた。
それから程なくして、左肩にったがぽつぽつと増えていった。
「無事で良かった……もう二度と會えないかと……私・、心配したんだからね、ロナちゃん」
「……」
……そっか。
冗談じゃないレベルで、心配させちゃってたんだ。
あたしの居場所、こんなにも大きくなってたんだ。
「……本當に、ごめん。ありがとう」
あたし、どうして気付かなかったんだろう。
けなくて、泣けてくるよ……。
しばらくして、ぽんと肩を軽く叩かれた。
紀絵さんは離れて、踵を返す。
「さて、スー先生が食材を用意して下さっていますわ。わたくし達も行きませんと」
「手伝いに行くんですね」
「その通りですわ。先生いわく、料理はズブの素人だから一人でやると何ができてしまうか判らないとのことでしてよ」
「そりゃ大変だ。それで、何を作るんです?」
「炒飯と餃子ですって」
は?
「マジかよ……レベル高ぇな……あたし人生でカレーと焼きそばくらいしか作ったことないよ……」
ビヨンドになってからもご飯はだいたい現地か、スナージさんところで食べてたし。
スーが自炊に目覚めたのは、何かあったのだろうか。
「あ、ロナさん! いっそ調理スキル買う、というのは如何でしょうか!?」
「あぁ、アレね……味しく作るにはグレードの高いやつを買わなきゃいけないし、けっこうな値段するみたいですよ。レシピでも買って練習したほうが安上がりとか」
「……じ、自力で作る料理が一番ですわねっ!」
「そーですね。ところで紀絵さんは何か作れます?」
訊いた瞬間、紀絵さんは死んだ魚のような目で遠くを見た。
「うふふふ、うふふふ……嫌ですわ、ロナさん……生前はコンビニ飯、転生してからも使用人に任せきりだったわたくしに、まともな料理が作れると思いまして……?」
訊くんじゃなかった。
おおよそ想像はついたというのに。
あたしらの料理スキルが低すぎる……。
けどまぁ、それはいい。
「……みんなで一緒に勉強すりゃ解決しますよ」
「そうですわね」
あたしはここにいてもいいのか……そんな迷いはある。
苦悩も、葛藤も。
けれど、そんな事はお構いなしに、スーと紀絵さんは助けてくれた。
心が崩れてダメになりそうだったあたしを繋ぎ止めてくれた。
ビヨンドなら転落死してもその世界に二度と召喚されなくなるだけで、存在が消滅するわけじゃない。
なのに、二人は助けに來てくれた。
……あたしは、ここにいよう。
二人の意図がどのようなものであっても。
萬一、も心も化けにり果てたとしても、あたしは二人と共に在り続けたい。
それがあたし程度でもできる、一杯の恩返しだから。
ありがとう。
あたしの“燈火を見せてくれる人スターシューター”達。
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