《ダーティ・スー ~語(せかい)をにかける敵役~》Extend スパイ活、順調です
私――臥龍寺紀絵が扮するは、極東よりの流離さすらい人、遠江である。
灼尊流なる謎の流派を用いる侍!
刀さばきは二流なれど、刃は十尺の距離すらともしない……なんて設定を即興で考えた。
“代替呪文”という、別の詠唱でも同じ魔法を発できるようにするスキルを買ったから、準備もバッチリだ。
いやー困るわー。
お嬢様口調がやっと板に付いてきた矢先に今度は演劇部の経験を活かして侍口調でスパイとか、己の多才ぶりに我ながら困するわー。
ま!
それすら活かすことなく捕まっちゃったんだけどね、私達!
ちなみにこれ全部、ダーティ・スー先生の計畫通りだったりする。
追手に遅延工作をする為、敢えてしょっぴかれる方法を選んだ。
いつだって、有能な敵より無能な味方のほうが何倍も恐ろしいのだ。
ステップ1!
妊婦さんA(仮名)の報収集しているらしい人を探す。
これについては“雙月の盃”という、専用ギルドに報料を支払ったら誰が探していたかを教えてくれた。
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それがマキト君とツトム君の事だったけど、話していた時に不機嫌そうな顔をしていたのは何故だったのかな……?
ステップ2!
追跡して、助けさせる。
ロナちゃんから、この世界で今まで関わってきた人達をリストにまとめてもらったけど、まさかリストの人と出會うとは!
ステップ3!
遅延工作と報収集。
今ココ。
ゴロツキに依頼を出した時だって、あらかじめ襲撃者(殘念ながらナボ・エスタリクではなく私達だったけどね!)の存在を知らせておいたから警戒してくれていた。
流石にフィリエナが産店から麻薬を拾ってきた事は予想外だったけど、どっちにしたって中央産店で怪しげな取引をしているという話はするつもりだった。
(……たとえば、人売買とか)
マセリクさんには悪いけど、疑われてもらう必要があったわけだ。
そんなわけで、不法侵の罪で、一日反省房りの刑に処されている。
マキトのパーティの亜人達も、リッツというエルフのお姉さんがナボ・エスタリクについて報提供をするという條件で私達と一緒に釈放されるという。
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(ホントかなぁ? 賄賂け取っておきながら知らんぷりする人達だよ?)
この流れは、間違いなくチャンスだろう。
マキト達が面識あるのは、ダーティ・スー先生とロナちゃんだけらしいし。
幸いにして、私は面識がない。
そう……この場にいる誰とも。
ギルドで派手にアドリブをかましたものの、ぽっと出の私が遠江と同一人と気付く人はそんなにいないだろう。
事実、しょっぴかれる最中ゴロツキは誰も私の事など気にしていないようだった。
ま、いざとなったら白を切り通すし、仮にバレるとしてもそれまでに目的を達してしまえばいい……。
さあーやるぞー!
ツトムという年と、フィリエナ、キャトリーの三人パーティ。
彼らが追いかけている相手の素、それからあの妊婦さんへの見解……ちゃんと掘り葉掘り訊かないとね!
その為にはまず、頼れる侍お姉さんアピールを沢山しよう!
たとえば、私達の現在地は牢屋だ。
々と悪評轟かせているルーセンタール帝國とて、どうやら不法侵で強制収容所行きにはならないらしかった。
いやあ、レ・ミゼラブルのジャン・バルジャンみたいな事にならなくてよかったよ……。
(それすらも計算済みだったとしたら、スー先生の先見が恐ろしすぎる)
前世では小手先の小技には何かと事欠かない人生だった私は、演劇部にいた時も裝のほつれ・・・を直したり、ポスターや看板の細かい仕上げをしたりしていた。
今回は、その経験を活かしてみようと思う。
いざ、尋常に……訴求アピール!
「それがし共を一晩、牢屋に繋いでおくならば、ついでに進言がございまする」
陣の中でもひときわ低い聲で喋れば、否応なしに看守が反応する。
「な、なんだ……?」
よし、反応は上々。
周りを見渡せば、パーティメンバーのみんなも私を見ている。
注目されるのは嫌いじゃあないけれど、この視線は良くないほうのやつだな。
念話で釘を差しとこう。
『それがしに任されよ。これは策にござる』
信じてもらわないとね。
私は更に、右手の人差し指を立てて続けた。
「貴公の裝束にほつれがござる。修繕はなさらぬのか?」
「ンな金ァ無ェーよ」
ひどくゲンナリした聲音だ。
お給料、安いのかな……。
「民草に威を示すとあらば尚の事、襤褸ぼろを纏ってはなりませぬ。
牢屋に裁道と制服を放り込んで頂けるなら、一晩にて直して進ぜよう……無論、お代は結構」
「タダ!? どういうことだ……」
よし、ヒいてるヒいてる。
もっとたじろいでもいいんだぞ、若ツバメよ。
「う……お、お前にメリットはあるのか?」
「無聊ぶりょうのめに手蕓の真似事をしておったら、存外に奧が深くてな。ついのめり込んでしまったのでございまする。
不審があれば、見張りを付けて頂いても構いませぬ。如何だろうか?」
し考え込む素振りを見せたあと、看守は上著をいで投げて寄越してくれた。
「折角だから、頼んで見るかな……」
「うむ、是非に!」
……フッ、墮ちたな。
「遠江さん、なんかすごく腹黒い笑顔浮かべてませんか?」
「なに。牢屋が暗いせいでござろう」
しして裁道も投げれられた。
まさか本當に投げ込まれるとは思わなかった。
もっと丁寧にれてくれないかな。
「さあさあ、始めようぞ。その前に、瞑想をば」
購したスキルその2“限定幽離”を使う。
目を閉じて集中しないと、制できないからね。
意識がを離れて、自分のを外から眺める。
ふわふわ……。
ふよふよ……。
し暗いけど、通路の様子が見える。
角を曲がって、進んで……よし、取調室に著いた。
ここで、式を固定……と。
『ナボ・エスタリクについて知っている事を全て話せ。噓をついていると解ったら、この裝置が反応する』
『……はい』
リッツは、両腕に仰々しい裝置が繋がれている。
取り調べというより、これじゃあ尋問……いや拷問だ。
衛兵が二人、機を挾んで向かい側にいる。
剣呑な空気を隠そうともしない。
『ナボ・エスタリク。本名不明。種族はエルフの純種。
出は“黒大壁”を越えた先の“古き森”……とは本人の談です』
『ガスタロア自治區の生まれではないという事だな』
『はい。仕事の際は緑の服をに纏うことから“緑の死神”とも呼ばれますが……流石に、これはご存知だったりします、よね?』
『ああ。だがこっちが知ってる報は敢えて伝えない。お前の口から聞かせてもらう』
『はい……手口としては、格安で暗殺を請け負い、大掛かりな設備を使ってじわじわとなぶり殺しにする……設備の素材になるのは、打ち捨てられたお屋敷などです。
大抵は魔の生息領域付近まで拉致していきます。異様に足の早い馬を使っているそうですが、詳細はわたくしにも解りません』
『ほう。奴に協力者はいないのか?』
『……解りません。一人で実行しているのではないでしょうか。彼は自分を強く見せる事に異様なこだわりを見せていました』
『やはり詳しすぎるな。庇っているだろう』
『庇ってなど、いません』
しばし沈黙。
『裝置が反応しない……』
『故障しているようだ。魂の中を覗くか?』
『共和國からわざわざ、あのを招聘しょうへいするのか? 侯爵家だぞ。國の許可が降りないだろう』
『では、沙汰が下るまで拘留しておくか』
バァンッと扉が開かれた。
『――その必要は無い』
恰幅のいい、茶髪をオールバックにした、髭の長いおじさま。
あら、熊系とはまた、これはこれでダンディ……。
まあ私の趣味じゃあないけれど。
『でゅ、デュセヴェル管區長!?』
看守さんは二人して敬禮したけれど、熊系おじさま……もといデュセヴェル管區長さんはそれを手で制した。
『ッフ! ンフフフ……そう畏まるなよ。座りたまえ』
管區長さんは妙な笑い方をして、二人が座ったのを見屆けてから、リッツに微笑む。
『リッツ――いや、リツェリディエルだったかな? このルーセンタール帝國は、さぞかし過ごしにくいだろう。
同胞に対するむごい仕打ちの數々に、きっと心を痛めている筈だ。すまないね、こうするしか他に方法がないのだよ……』
『そうせねばならない事がおありでしょうから、わたくしは気にしな――うぅッ!?』
噓発見から青白い電流がビリリと迸る。
痛いだろうなぁ……リッツさん、可哀想に。
『さあ。これで裝置の故障という線は潰えたぞ。彼はよく正直に話してくれた。
潔白は証明されたようなものだ。元のパーティに返してやりなさい』
『は、は……!』
『私は暫く滯在する。何かあったら、教えなさい』
『ありがとうございます』
そして、扉を開けて出て來る瞬間。
『――今回は見逃してあげよう。いかなる出自といえど、我らが帝國の大切な客人だ』
と言って笑顔を浮かべた管區長の視線は、明らかに私へと向けられていた・・・・・・・・・・。
呆気にとられていた私の視界を、管區長の手が覆う。
すぐさま“限定幽離”は強制解除された。
なに……あの人……!?
あの目で見つめられた時、ひどく寒気がした。
底の見えない崖を見たような、そんな寒気が……!
- 連載中123 章
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