《都市伝説の魔師》オープニング002 とあるテレビクルーの映像記録

「あなたはどうして木崎へ?」

マイクを持ったテレビクルーは整った顔立ちの男に聲をかけた。

「オー! ワタシ、ニッポンノブンカ、ダイスキネー! トクニ、ジャパニーズミズギー! スクミズー! スクミズ、ダイスキネー!」

「スク水って……スクール水著のことですか?」

テレビクルーは苦笑いしながらそう言った。

相手は整った顔立ち、つまり外國人だった。

木崎市にある空港、木崎空港ではこのような取材が半分日常的に目撃される。

「オー、イエス! イイェッスッ! ソウデース!」

このままだとスクール水著の話でテープ一本終わってしまう気配すらじる――そう思ったテレビクルーは早々に取材を切り上げようとした――その時だった。

白いドレスを著たが姿を現した。

そのは踴るように歩きながら、笑みを浮かべていた。白いワンピースを著た、アクアブルーの髪の

それを見たテレビクルーは思った。――あの子を撮影できれば、いい視聴率になると。

テレビは視聴率の世界である。裏を返せば視聴率さえ取ればどうだっていい。そう思っているのが現狀とも言えるだろう。テレビ番組を見てマンネリだと思っても、視聴率さえよければ番組は永遠に放送される。終わることなど考えられない。

「ねえねえ、そこの人」

に聲をかけるテレビクルー。

はテレビクルーを無視して歩く。

テレビクルーは不想な人だとしか思わず、再び聲をかける。

「あ、あのー……話をし聞きたいのですけれど??」

二回目の呼びかけで、漸く立ち止まり、振り返った。

悍な顔立ちで、言った。

「ここはもうすぐ――戦場に変わる」

「はあ?」

予想外の言葉にテレビクルーは思わず溜息を吐いてしまった。

木崎市は自衛隊基地も米軍基地も縁が無い。だから、そう簡単に戦闘機が襲來する――なんてことは有り得ない。

いや、もっと言うならば。

この國家は七十年近く戦爭が起きなかった國だ。世界では必ずどこかで戦場になっている場所があるというのに、この國は々特殊とも言えるだろう。

「お、おかしい話ですよ。戦爭が起こる? 戦場になる? そんなことは有り得ませんよ、だってこの國で戦爭は七十年以上も起きなかった」

「そこが油斷している証拠。七十年も戦爭が起きなかった。だから、これからも起きることなんて無い。――そんなこと、ほんとうにそう言える?」

「そうですねえ……」

どうやってここをしようか――テレビクルーはそればかり考えていた。

と同時にこのに聲をかけて失敗していた。まさか普通の人間の皮を被った変人だったとは思いもしなかったからだ。

同時に大きな振があった。

その振は『彼』を中心に起きていた。

は笑っていた。

「まさかここまで抑えきれないとは……。ふふふ、ふふふふふふ! さすがは『ホワイトアリゲーター』をニューヨークで仕れただけのことはある! 力が漲ってくる……!」

「あ、あんたがこれをやっているのか……?」

さすがはテレビクルー。こんな狀況であってもカメラを回し続けている。

はそのカメラに目もくれず、一笑に付した。

「……だとしたら、どうする?」

――これは後に語られる『木崎空港テロ事件』の始まりであり、その凡てを記録した映像資料の冒頭である。

――そして、魔師の語は、ここから再び幕を開ける。

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