《都市伝説の魔師》第二章 年魔師と『地下六階の年』(2)

「……仮に私たちがオーケーをしたとして、作戦はあるの?」

訊ねたのは夢実だった。

その質問は春歌もしたかった。仮に參加したとしても春歌は未だあまり魔を使いこなせない。夢実と香月の二人が戦ったとしても、確実に足を引っ張る――彼はそう思っていたからだ。

「それは訊ねてくると思っていた。それに、僕が何も考えていないとでも思ったかい? 解っているよ、それに、次に出會うだろう場所はなんとなく目星はつけている」

「それじゃ、先ずはそこを教えてくれない?」

春歌の言葉に彼は頷く。

ポケットからスマートフォンを取り出し、地図アプリを起する。

そして彼はある場所を力した。

「……木崎中央小學校?」

その場所を言った春歌。

それに対比して、何かを考え付いた夢実。

「……はっ! まさかお兄ちゃん、とうとうロリコンの道を開けたというの!?  お兄ちゃんには私と言う理想形が居ながら! とうとうロリコンの道を……いや、もしかしたらペドかも? ええい、どっちでもいい! お兄ちゃん、ふざけないでよ!」

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「ふざけているのはほかならない、お前だ。夢実」

夢実の戯言を華麗にスルーする香月。

「……まあ、それはいい。そんなことはどうだっていい。それに僕はロリコンの気は無い」

「それは解っているよ。で? どうして小學校の地図を見えたわけ?」

「図書館で見たんだが、この木崎市はかつてあった木崎町をかさ上げした狀態で出來ているらしい。そしてその木崎町があったのは、この地上を一階とすると地下四階相當の場所になるらしい。その理由は単純明快。木崎市の北に島谷エリアがあるのは知っているだろう? あそこは文字通り、谷が広がっていたらしい。それも雨が降るとすぐに川が海のようになりその場所だけ島になる程の、ね」

「……島谷エリアはもっと深い、ってこと?」

「ああ。地下八階相當とも言われている。地下四階ですら十メートルは優に超えているから、とても深いのだけれど、地下八階ともなればその倍にあたる。二十メートル以上だ。それ程地面をかさ上げする意味があったのかは、解らないけれどね」

「……でも、それと敵に何の関係が?」

「どうやら、敵は都市伝説を狙っているらしい。それに込められたエネルギーを充填して、強い魔を使おうと考えている。その考えは、かつてのホワイトエビルそっくりだ。まあ、あの時は人間の神力をそのまま変換するということだから、今回の方がまだマシなのかもしれないけれどね」

「マシ、ねえ……。それが本當なのかどうか解らないけれど」

「でも、彼らが都市伝説を狙っていることは事実だ」

香月の言葉を聞いて春歌は頷いた。

しかし夢実は未だ信頼していないらしい。

「都市伝説を狙う……。どうしてそんなことを考えたのでしょうか? 全然理解できないのですが」

「まあ、理解できない気持ちも解る。だが、それは信じてもいい。アイリス……彼が言った言葉だから」

「また、アイリスですか……。まあ、別に彼を悪いとは言いませんが。彼のことを、そう簡単に信用してもいいのでしょうか?」

「……と言うと?」

「彼のことは、私にとって未だ信用出來ないところが多いのです。捕まっていたというのも怪しい。もしかしたらそう仕向けるための作戦だったのでは……」

それを聞いた香月が明らかに頬を膨らませ、不機嫌な表を取った。

「……夢実、君はいったい何を言っているんだ? いくら君でも、それはスルーすることは出來ないよ?」

「お兄ちゃん、いったい何を言っているのですか。いくらなんでもそんな肩れする必要は……」

「僕はただ彼を救いたいだけなんだよ、夢実。解ってくれないか?」

「いやよ。そう簡単に人を信じ込まないほうがいい。すぐ付け込まれてしまうわ」

「……どうした、夢実? お前らしくないぞ。いつもは僕の意見に賛同してくれるというのに」

「お兄ちゃんは何も解っていないの。解っていないからこそ、私は言いたいの。そういう人間に騙されているってことを」

「騙されている? それはちょっと言い過ぎなんじゃないのか?」

「お兄ちゃんはの涙に弱い。それは知っている。けれど、しは考えてほしいのよ。人を信じることを、忘れないでほしい」

「……それくらい、解っているよ」

「それを解っているなら、私は、お兄ちゃんのために戦う」

し傲慢な言い方に見えるが、ありがとう。決してその決斷を、僕は無駄にしない」

踵を返し、春歌に訊ねる。

「春歌、君はどう思う?」

「私も……微力ながら、頑張る」

頭を下げる春歌を見て、彼も頭を下げた。

「ありがとう。ほんとうに、ありがとう」

そして、三人はここに同盟を組んだ――。

◇◇◇

その頃。

ディーは小學校の校門に到著していた。

小學校の中、その校庭では小學生が遊んでいた。まだ學校がある時間だから、そうなっているのは當然のことだろう。晝休みだから、それは當然とも言えるだろう。

「……ほんとうにここに都市伝説があるのか?」

ディーは思った。だからスマートフォンに描かれている報を再確認した。

スマートフォンにはこう書かれていた。

――小學校の地下には、石像が眠っている。

「時間が無い……。急がねば」

ディーは呟くと、スマートフォンを仕舞い、開いていた門から中へとはいっていく。

當然先生と思われるジャージ姿の男はそれに気付き、彼に近付いていく。

「ちょっと、そこのあなた。ここは関係者以外立ち止ですよ!」

「……関係者?」

「ええ! そうです。ここは小學校。あなたは許可を得ていないのならば、ることは出來ない!」

る程……。くくく、殘念ながら――」

ディーはコンパイルキューブに呟く。

剎那、彼の周りに竜巻が渦巻き始め、彼の目の前に立っていた先生と思われる男が呑み込まれていった。

「――今から、関係者なんですよ」

ディーは不敵な笑みを、浮かべた。

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