《都市伝説の魔師》幕間 知りな老婆と終わりの世界
夢実が目を覚ますと、そこは白い空間だった。
凡てが白で、どこが地面でどこが壁なのか、解らない程だった。
「……ここは」
「どうやら目を覚ましたようだね」
その聲を聞いて、夢実は踵を返す。
「何者!」
振り返るとそこに立っていたのは、一人の老婆だった。
「あなたは……?」
「私かい。私はただのしがない老婆だよ。まあ、ここに閉じ込められてもう長い時間が経つけれどねえ」
「……ここはいったい?」
「現化される現実の狹間、とでも言えばいいだろうかねえ」
「……何ですって?」
現化される現実の狹間。
言葉の意味がまったく理解できなかった。
「……あんたは魔師ともう一つの分類のことを知っているかね」
「もう一つの分類?」
「そうさね。その名前は『魔神』。魔を極めし者がなることが出來る、伝説の存在だよ」
「そんな存在が……ほんとうに実在しているというの?」
「いるさ。現に、魔神へと昇華した存在は數人だったか……いる。その人間はいずれも……おっと、これ以上は言わないでおこう」
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そこで夢実は疑問に思った。
魔神――魔師をも凌駕する存在。
そんな存在がほんとうに居るとするならば――既に魔師たちの間で噂になっていてもおかしくないし、魔師の書いた古文書にしでも記述があってもおかしくはない。しかし、その『魔神』という単語すら、彼はきいたことがなかった。
だから、彼は老婆の言葉を鵜呑みにしない。
鵜呑みにする意味など無いと思ったからだ。
「……老婆の戯言だと思って聞きなさい。あなたたちが住む世界は、もともと魔なんて概念は存在しなかった。あったとしても、戯言だと思われるほどの世界だった」
「……何ですって?」
唐突の事実に、彼は何も言えなかった。
「一つの世界があるとしよう。その世界は空白だった。空白だった世界には、さまざまな世界が生まれた。この世界もその一つだった」
「一つだった、って……。ここはただの白い空間よ? スペースにしか見えない」
「ある世界は魔王が迷い込んだ世界。魔王も、この仕組みについては解明できなかったししようともしなかったけれど、きっと彼の力ならばどうにかなったはず」
「……?」
「また、ある世界は神様がぐうたらな世界。これはとある世界からの分岐とも言えるでしょう。まあ、それを言い出せばこの世界も分岐を誤った行き止まりに過ぎないのだけれど」
老婆の口調が変わってしまったことよりも、老婆が何を言っているのかさっぱりわからないことが疑問として殘った。
老婆の話は続く。
「さらに世界の分岐は続く。ならばここで生まれる疑問は一つ。分岐に分岐を極めた世界の、始まりの場所はどこ? いったいどこにあるのだろうね?」
「始まりの……場所、ですって?」
「そう。この世界だって破壊と再生を繰り返し、今の時代になっている。しかし、それだけじゃ一つも解らないだろう? この世界の始まりはどこなのか、本的な議題が、未だ積重されたまま殘っている。それについて、何も疑問にはじない?」
「……」
もう、彼の頭の中は様々な『解らないこと』が蠢いていた。
それを、そうなることを、老婆は解っていた。
だから老婆は、あえてここで答えを導かない。
あの世界での事件は、その世界の人間に解決してもらわねばならない。それが自然の摂理というものである。
とはいえ、この世界から彼を出すことも、老婆には出來なかった。
「……殘念だけど、今はあなたをここから連れ出すことは出來ないのよ」
「……何ですって?」
夢実の言葉に、老婆は溜息を吐いた。
「別に君を閉じ込めるための作戦だとか、君を閉じ込めておいて何かイケナイことをするつもりではない。もっと言うならば、私も閉じ込められた側なのだよ。この行き止まりの世界に」
「行き止まりの世界から出する方法は無いの?」
「殘念ながら、この世界から出する方法は、無い。永遠にこの時間の迷宮を彷徨うほかないのだよ」
「……優しいわね。あなた」
夢実は老婆のセリフを冷靜に解析していた。
老婆はある一つのヒントを彼に與えていた。
「あなたは『この世界から出する方法は』と言った。裏を返せば、別の世界からこの世界へとつながる方法はあるはず。だってそうよ、そうじゃないと私とあなたはこの世界にたどり著くことは出來ないのだから」
それを聞いて、老婆は眉をぴくりと痙攣したように震わせる。
「まさか一瞬でそこまで辿り著くとはね。々ヒントを與えすぎたかもしれない。まあ、それは私の落ち度だ。……私が力を貸すのも、今が一番かもしれないね」
そう言って老婆は白い空間をゆっくりと歩き始めた。
「この世界に、何かあるんですか?」
「言っただろう? この世界は行き止まりの世界。ガラクタだってたくさん落ちているよ。もしかしたらこの世界の謎が解るかもしれない、そう思ってずっとそれを漁っていたけれどね……。二人になったから単純計算して、二倍になる。一応言うけれど、拒否権は無いからね?」
「元の世界に戻ることが出來るのなら、どんな苦労だって惜しまない。それがたとえ徒労で終わってしまうとしても」
「おっ。言うねえ。なら、いい。さっさとガラクタ置き場へと向かいましょう。そこに何かあるか、先ずは分析を始めなくちゃあならない」
こうして二人は共同戦線を結んだ。
この白の空間から出するために、協力すると誓った。
そして二人は――この世界の謎が殘るという場所へと向かう。
――この世界がかつてどのような世界であったのか、今は誰も知らない。
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