《都市伝説の魔師》第四章 年魔師と『二大魔師組織間戦爭』(2)

一方、その頃。

ヘテロダイン陣営も、アレイスター陣営がき出すのを、指を銜えて待っていたわけでは無い。

「ボス、報告があります」

「なんだ、井坂。聞かせてもらおうか」

ユウの部屋にノックをしてってきた井坂に、ユウは訊ねる。

ちなみにユウの部屋には昨晩から春歌も居る。理由は、急時にすぐ出撃できるようになっているから――であるが、彼にとって『出撃』という実がまだ湧いていない。

それは當然かもしれない。彼は有名な魔師のを引いている。とはいえ、彼が魔師であったわけでは無い。だから魔を行使した経験が、ついこないだまでゼロだったわけだ。

まったくの素人である自分に、戦闘が務まるだろうか?

はそんなことすら考えていた。そんな考えに至るのは、至極當然なことなのかもしれない。

「木崎市中心部ユグドラシル・ブリッジから、多數の人間が街に散らばった模様です。どうやら、それが……」

「アレイスターの魔師、ってわけね。アレイスター、こっちの數がないから、単純に數で勝負に出た……というところかしら」

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ユウは溜息を吐いて、春歌の方を見つめる。

「ねえ、春歌。あなたどう思う?」

「ええ!? 私ですか?」

「別に驚かれるような質問はしていないと思うけれど……」

「いや、どうして私に質問をしたのか……そう思って」

「ああ、そういうこと? でも、別にいいのではなくて? 別にあなたは素人じゃない。立派な戦力、立派な魔師の一人なのだから。それに、私が質問したということは、私は、あなたのことを認めているということなのよ?」

「そう、なのですか?」

それを聞いた春歌の表しだけ明るくなる。

「そう。だから自分を強く持ちなさい。そうしないと、この先の戦い、乗り切れないわよ」

そう言って、ユウは春歌の頭をぽんとでた。

「――さて、それじゃ、本題に戻りましょうか。どう思う、春歌? この狀況を。別に素人の考えでいいのよ。私が知りたいのは他ならない、城山春歌の解答なのだから」

「そう言われても……。そうですね、強いて言うなら……戦力が圧倒的に足りないと思います。ヘテロダインに居る魔師は、數さえ見ればそれほど変わらないように見えますけれど、一人ひとりの実力は未知數です。ですから、もしかしたら……」

「まあ、そう思うのも仕方ないことだ。私だってそれは自覚している。寧ろ、それがヘテロダインの問題とも言われているからね。ない魔師が強い魔を行使出來て、実際に居る殆どの魔師はあまり強くない……だから、バランスの取れた構にしなくてはならない、と。それは前々から言われていたことだからそれを直ぐに修正できなかった私の問題なのだけれどね」

ユウはそう言って小さく溜息を吐いた。

気分転換を済ませる。たった、その一所作だけで。

「……本題にりましょうか。これから、ヘテロダインアジトを目掛けて魔師が襲い掛かってくることでしょう。問題は、彼らに立ち向かった後、アレイスターのアジトに向かわねばならないということなのですが」

「それをどうにかしないといけない、ってことですよね?」

春歌の言葉は紛れも無い正論だった。

「そう。その通り。だから先ずは――」

「ボス」

そう言って部屋にってきたのは、和服姿のだった。

「あら、優花じゃない。久しぶり。どうしたの?」

優花――予野優花はユウの言葉を聞いて頷く。

「ボスに會いたいという方が來ております。……どうやら、警察の方のようですが」

「警察?」

しだけユウは考えて――すぐにその人間が誰であるかを理解する。

「連れてきましょうか?」

「ああ、そうしてくれ。きっと、あいつだから」

「あいつ?」

「ああ、そうか。君は會ったことが無いのだっけ。警察の人間は基本魔師を目の敵にしているが、魔対課……今からやってくる奴が所屬している部署のことだが、そこは未だ魔師に寛容な態度をもって臨んでいる部隊だ。まあ、結局ここで戦績を上げて我々のような魔師組織にり寄る算段なのだろう」

「そんなこと……」

「國家権力なんて、そういうものさ」

ユウはそう言うと、正面を向く。

それと同じタイミングで、ノックが聞こえる。

扉を開けてってきたのは優花、そしてその後に続いて、高知隼人の姿があった。

「やはり、貴様だったか」

「開口一番、貴様は無いでしょう。座っても?」

こくり、と頷いたユウを見て隼人は椅子に腰かける。

「用件は?」

「話が早いですよ。先ずは世間話と灑落込もうじゃありませんか」

「殘念ながら、我々はそのようなことをしている時間などとうになくてね。もしすぐ終わるならば、さっさと終わらせてしまいたいのだよ。まあ、警察の君に言わずとも解るだろうがね」

「ああ、そうですよ。その話。……まあ、仕方ないですね。最初は世間話をして、徐々に話をれていこうと思ったのですが、あなたからそう言われてしまえば仕方ありません。こちらも単刀直に言いましょう。私と手を組みませんか、ユウ・ルーチンハーグ?」

「手を組むことで、何らかのメリットでもあるのかね?」

「メリット、ですか……。ううん、戦力が増えるとか?」

「曖昧過ぎるぞ、そのメリット……」

ユウのツッコミをけて、まあそうでしょうね、と言った隼人。

「まあ、実際にはもっと別のメリットがありますけれどね」

そう言ってユウに見せたのはメモリースティックだった。

「それは?」

「今回の木崎空港テロ事件から連なる事件のデータです」

「……そんなものを、見せてしまって構わないのかい?」

「これは、我々のような人間が持つよりもエキスパートに見せたほうがいい、そう私が判斷したことです」

「君の獨斷で行った、と。そうはっきり言えばいいのに。それで? これをどうするつもりだ?」

「私はこれを提出し、さらに私も組織間の戦爭に參加します。ですから、協力して頂けないですか」

「君のメリットが無いように見えるが?」

「こっちのメリットは、治安維持。ただそれだけだ。ヘテロダインとアレイスターの戦爭、これに警察も頭を抱えていてね……。場合によっては魔師が強制排除されかねない。僕としては、それはしてしくないし非常に困る。僕だって魔師の端くれだ。それくらいは思うものだよ」

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