《都市伝説の魔師》第四章 年魔師と『二大魔師組織間戦爭』(4)
「あら、そう」
ミスティは微笑む。
それを見た霧峰はぞっとした。背筋が凍った、と言ったほうがある意味正しいのかもしれない。自分よりいが、それこそ大人びた表を浮かべた。それについて、彼は酷く恐れた。嫌だった。嫌がった。
それを見てディーはミスティの頭をでる。
「申し訳ないね、……ええと、ごめんね、彼がつまらないことをしてしまって。どうだい? クールダウンの意味も込めて、お茶をおごろうか?」
「殘念ながら、男の気は無いんだ」
「そうかい」
ディーは笑みを浮かべると、先に歩き始めているミスティを追いかけるべく走り出した。
ほんとうに、変わった魔師である――そう彼は思いながら、再び走り出した。
◇◇◇
ヘテロダインアジトから魔師が出撃する。
アレイスターの魔師は二百四十名に対し、ヘテロダインの魔師は百五十名。約半分の勢力となっている。そのことについて、ユウ・ルーチンハーグはとうに理解していた。理解していたからこそ、出撃せねばならないと思っていた。抱いていた。願っていた。
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一番の戦力は柊木香月だった。だが、その彼が出撃出來ないというのならば――。
「――というわけで、私自ら出撃することとなったわけだ。仕方がない話だが、しかしそれ以上にアレイスターは強すぎる。それについては致し方ないことだとは思うがね」
「百歩譲ってそれは認めるが、だが、いったいどうして僕と彼とあなたで組むことになった?」
そう言ったのは高知隼人だった。隼人の隣には春歌も居る。春歌もそれについては疑問を抱いていたようだった。
ユウは頷いて、その質問に答える。
「単純明快だよ。ペアを組めば、効率が上がるからだ。実際問題、一人で単獨行してもいいのだが、そうだとすれば、もし負けてしまえばそこまでだ。だが、二人でペアを組めば、片方が何かあってももう片方でに対応できる可能が生まれる。便利な考えだよ。そうは思わないかい?」
「そう言われると……まあ、確かに」
隼人は意外にもあっさりと納得する。
ユウは笑みを浮かべると、話を再開する。
「さて――問題はここからだよ。ヘテロダインとアレイスターの戦力差は二倍。それをどう乗り越えていくのか、それが今からの課題であり可及的速やかに解決していかねばならない」
「それは確かに……。でも、ヘテロダインには一番の戦力が居るじゃないですか。先ずは彼の復活をどうにかする必要が」
「あなた、あえてそれを言っているでしょう? 復活させる方法はただ一つしか無い。……サンジェルマンを捕まえて、彼の不老不死の丸薬を手にれる。それを使うことで彼は完全に回復するはずよ」
「でもそれは一種の伝説……おとぎ話に過ぎないのでしょう? だとしたら一概にそれを使うことが出來るとは到底思えませんが」
「いいや、サンジェルマンは実在する。そしてその丸薬も……ね」
ユウの言葉は強くはっきりとしたものだったが、それとは逆に彼の心の中では不安が殘っていた。
確かに隼人の言う通り、サンジェルマンが実在しているかという確固たる証拠は見つかっていない。サンジェルマンが実在しないのならば、それと併せて丸薬の存在も不明となる。香月を救う唯一の作戦が失敗に終わるわけだ。
だから、それは避けたかった。それだけは考えたくなかった。サンジェルマンは実在していて、今もどこかの世界に居る――それだけを考えたかった。実在しているのならば見つけるのはそう難しい問題では無い。
「サンジェルマンを見つけるまでは、足止めということか?」
「それは私たち以外の別のメンバーに任せてある。正確に言えば、私たちは別の任務があるよ。それこそ、先程君が言った『サンジェルマンの捜索』をね」
◇◇◇
次に彼が目を覚ました時、そこはベッドの上だった。
「ここは……?」
彼――柊木夢実はゆっくりと起き上がる。彼にかかっていたタオルケットが落ちる。そこで漸く彼は何もに付けていないことが解った。
「え……!」
急いでタオルケットで上半を隠す夢実。生憎部屋には誰も居ない。窓はついているが、直ぐ目の前に壁があるのでその意味をしていない。
「ここはいったいどこだというんだ……」
改めて、彼は部屋を確認する。
部屋の壁や床、天井は凡て白で構されている。窓はベッドの向こう側に設置されているがすぐ目の前に壁があるため、外を見ることはほぼ不可能となっている。強いて言うなら、今が日中であることしかそこから得る報は無い。
唯一の出り口となっているのは、扉だ。それも白で構されており、左右に開くシステムのように見える。しかしから開けるにはカードキーが必要らしい。
要するに手詰まりということであった。
「どうすればいいかなあ……」
コンパイルキューブも持っていない狀態では魔を行使することも出來ない。
――そう思ったと同時だった。
扉が左右に開かれ、白を著た無髭を生やした男がってきた。ずっとニヤリと笑っていたその男は夢実が起きているのを見てさらに笑った。
「いひひ。起きたようで何より! 君が起きてくれないと々と報が収集出來ないからねえ! まあ、最悪記憶を脳から盜み取ることだって不可能ではないけれど、それによって報が損失されてしまうし、それを考えるとねえ!」
「何を言っているか解らないけれど……まず服を寄越しなさいよ!」
「服? ああ、それは今持ってくるよ。もちろん僕では無い、に任せておくから。まあ、取り敢えず今は自己紹介だけでもしておこうか、いひひ!」
変わった人間だ――恐ろしい人間だ――夢実はそう思った。
男はポケットから立方の何かを取り出した。
それがコンパイルキューブだと気づくまで、そう時間はかからなかった。
「まさか、あなたは――」
「僕の名前は巽家修司。魔師だよ。ほかの人間にはドクターと呼ばれている。そしてここは僕が所屬する組織『スノーホワイト』の醫務室だ。心配する必要は無い、ここは君の味方だよ。いひひひひ!」
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