《ムーンゲイザー》告白

ツムギの歌聲は人を惹きつける魅力があると私は思った。

「すごい!

ツムギ、本當に才能あるよ!」

「え?ほんとに?

そんなに言ってくれたら照れちゃうよ。

小學生の頃から音楽の歌の授業の時は先生によく褒められてたなぁ、そういえば。

音楽と絵が得意で、あとの勉強はからきしダメ、みたいな奴いるじゃん?

俺、典型的にそのタイプ。」

ツムギはそう言って笑った。

「すごいよ、蕓的才能があるなんて羨ましいよ。

しかも英語も話せるんでしょ?

勉強できないことないじゃん。」

「ううん、英語はあくまでコミュニケーションツールだよ、俺の場合は。

文法とかめちゃくちゃだし、伝わることのほうが生きていく上では大事だから。

日本で英語のテストけたら全然點數取れないよ。」

「ふーん、そういうもんなんだね。

確かにいくら文法勉強したって、英語でコミュニケーション取れなきゃ意味ないよね。

日本人て英語の勉強、無駄にしてるじだよね。」

「うん。でもこれから変わっていくと思うよ。」

「そうだといいけど。」

「お、今日は珍しく勉強の話してるね。

夕香子は何が得意なの?」

「なんだろう。

勉強はあまり好きじゃない、かな、、

あえて言うなら走ることかな。

稚園の頃からかけっこだけが唯一、1番になれることだったなぁ。

でも、中學校で陸上部にってからはなぜか楽しくなくなってた。

友達と話したりするのは楽しいけど、練習自は地味なことをひたすらやるだけだから、退屈だし。

速い子なんてたくさんいるし、なかなか績もびなかったな。

今は趣味でジョギングやってるだけ。」

「走るの好きなの、いいじゃん!

かっこいいよ!」

「今は普通レベルだよ。

高校っても続けようとは思ってないし。

ツムギみたいな蕓的才能あればいいなぁ、ってよく思うよ。」

「もしかしてこれから見つかるかもしれないよ?」

「そうだといいんだけど。」

私はびてしまった、塩焼きそばを食べ始めた。

「私の才能はどこかに眠ってるんだろうか。

この焼きそばみたいにしなしなになる前に探してあげたいけど。」

ツムギは笑った。

「なんか今の言葉、文學的だよ!」

「へ?文學?しなしなの焼きそばが?」

「うん、面白い表現だよ。」

「ツムギは面白いことを発見するのも得意だね。

いろんなことできていいな、って思っちゃう。」

「夕香子は自分にもっと自信持っていいよ!

すごく魅力たくさんあるんだから!」

「え、そんな、ないよ、私なんか、、」

私はまた顔が赤くなった。

「あるよ、たくさん。

ピュアなところとか。」

ツムギは照れたように目を逸らして言った。

「ピュアか、、

よくわかんないけど、ツムギがそう言ってくれるとすごく嬉しい。」

私は恥ずかしくなってうつむいた。

「なんか、暑いね、アイスでも食べようか。」

ツムギはそう言った。

「さすがにアイスはってないの?」

「持ってくるか迷ったんだけど、さすがに保冷バッグにれても溶けちゃうかな、と思ってやめた。」

「あはは。そうだよね、

あ、確か駅の売店に売ってたかも。

もう、いい時間だから荷まとめて駅に向かう?」

気づけば、時間もいい頃合いだった。

「あーあ、もう帰る時間なんだ、寂しいな。」

ツムギがぼそっと呟いた。

「小學生みたいなこと言わないで、さぁ、次の電車に乗り遅れたら、あとはだいぶ遅くなっちゃうよ。」

「あー、今また曲できそう。弾いちゃだめ?」

「うーん、短めでお願いね。」

「わかった。」

ツムギは靜かに歌い出した。

またしても、心が締め付けられる、切ない曲だった。

この人の歌聲には涙腺を刺激する分がっているのではないか、と思った。

遠くを飛んでいるカモメを見ながら私は涙をこらえるのに必死だった。

なぜだろう。

曲全から滲み出る、この瞬間が続きますように、という願いが痛いほどわかるからだろうか。

ずっと聴いていたい、と思った。

「もう終わっちゃったんだ。」

曲が終わると、寂しくなって呟いた。

「夕香子が短めで、って言ったからだよ。

もっと歌おうか?」

ツムギは笑った。

「うん、ずっと聴いていたいよ。

ツムギの歌。

ほんとに、ほんとに、すっごくいい!」

「え?本気で言ってる?

もう帰らないとダメなんだよね。」

「そうなんだけど、、

そうなんだけど、、」

私はどうしたらいいか、わからなかった。

「ごめん。

無理だってわかってるんだけど、これだけは伝えたい。

私はツムギが好き。

離れるのが辛いから言わないでおこうって思ってたんだけど、この気持ちに噓はつけない。

ツムギが好き、だよ。」

私は自分で言った言葉に驚いた。

言うつもりはなかったのに、なんでだろう。

溢れてくる気持ちを抑えきれなかった。

すると、ツムギはにこりと笑って言った。

「嬉しいよ。

俺も夕香子が好きだ。」

そこからのことは時間が止まったみたいに不思議な覚だった。

私たちはどちらからともなく、そっと寄り添い、目を閉じて短いキスをした。

これから何が起こるのか、2人はどうなるのか、は誰にもわからない。

ただ、今この瞬間が全てなんだ、と心から思えた。

そのくらい、強く儚いキスだった。

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