《友だちといじめられっ子》4

「⋯⋯皆は、何故、炭谷が教室に來なくなったか、分かってんだろうな」

もうとっくに、ホームルームに當てられた時間は終わっており、他のクラスの生徒は、既に部活に行っていたり、家に帰ったりした。

そんな中、シーンと靜まり返った教室に、擔任の聲が低く響いた。

「俺はあいつから、全て聞いているからな。誰が主犯だ。名乗り出るまで帰らせないぞ」

しかし、誰も口を開かない。

気が付くと、もう外も暗くなり始めている⋯⋯。

不意に、ダン!!と教卓が強く叩かれて、黙ってずっと下を向いていた生徒は、ビクッとした。

「いい加減にしろよ?はぁ、俺は明日出張なんだ。明後日、俺が返ってくるまでに、炭谷が教室に戻って來てなかったら⋯⋯お前ら、全員停學だからな。今日はもう終わりだ」

そう言って擔任は、教室を出ていった。

「「「はぁ⋯⋯」」」

全員のため息が重なった。このクラスには誰一人として、反省している者はいなかった。

そして翌日の朝。

「凜行きなよ~。大學行くっしょ?停學はヤバいって~」

「そうだね、凜花行って來てくんない?前、加奈と仲良くしてたでしょ」

これは、の友人のことを、本気で思って言った言葉だった。

「うん、分かった」

「サンキュー凜ちゃん」

「一度教室に連れて來たら、適當に相手してくれていいから、あたし達もそうするし」

の友人は、のことを嫌っていた。そしてクラスメイトも、全く同じ気持ちだった。

ただし、の友人が、の事を本気で嫌っていたのは、今だけの話し⋯⋯。

時は同じ日の、晝休み。

保健室の先生が、出張に出掛ける時を見計らって、の友人は保健室のドアを開けた。

「失禮します⋯⋯」

「先生、さっき出張に行ったけど⋯⋯」 

「うん、知ってる。⋯⋯休ませてもらってもいい?」

とりあえず、また仲良くならないとな、どうやって連れて帰るか⋯⋯。の友人は、ただそれだけを思っていた。

「うん」

はそういうと、ベットに向かい、カーテンを閉めてしまった。

これは、ひどいな。どうして心を開かせようか⋯⋯。の友人は、これまでした事を謝ってみることにした。

「あのさ、教室、加奈が片付けてたの?」

は「うん」と、小さく答えた。

「ありがとう」

の友人のこの、ありがとう、は心からの本の言葉だった。元々の友人は、真面目で幾帳面だった。だからといって、の友人自が片付けてしまうと、クラスメイトにからかわれてしまう。だからあの、汚い教室を片付ける事は、もう諦めていたのだ。

「加奈が來ていた時だけ、次の日の教室が綺麗だったからさ。⋯⋯やっぱり、加奈だったんだ。」

「うん」

二人の間に、再び沈黙が流れた⋯⋯。そして再び、の友人は、口を開く。

「あのさ、ごめん、ほんとごめん」

「えっ」

は、戸っていた。

の友人のこの、ごめん、は義務的だったのか、それとも本気だったのか、の友人自にも分かっていなかった。

「加奈が教室に來れなくなったのは、私たちのせいなのに。教室に來れるようになった加奈は、教室、片付けてくれてて。ほんとにごめん、ありがとう」

これは、ここに來る前に、クラスメイトと考えて來た言葉だ。しかしそれに対して、の目には、今にも溢れそうなほど、涙が溜まっていた。

「加奈ー、また來たよー」

それから、その友人は、度々保健室に顔を出すようになった。の様子を見るために。そして──を教室連れ戻すために⋯⋯⋯⋯。

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