「おい、お前ら、どういうことだ？炭谷、教室に來て無いじゃないか。」

そう言って擔任は、ため息をついた。

「先生ー。一日二日じゃむりでーす。今何人かで、保健室に行って、加奈と話してるので、後し待って下さーい」

「そ、そうか。よし分かった。ちゃんとやってるならそれでいい。二週間後の木曜日。それまでに連れて來いよ」

クラスメイトの言葉は噓だ。行ったのはの友人一人だけ。だが、停學までの期間がばされた事は、大學に行きたいの友人にとって、最良の結果だった。

⋯⋯あれから毎日のように、の友人は、保健室に通っていた。

「ねえ、加奈。また、教室に行かない？」

ある日、の友人が尋ねてみたが、すぐには返事が返ってこなかった。

「でも⋯⋯」

「大丈夫。今度は、私が付いてるから。行きづらいのは、私たちのせいだよね。分かってる。でも、私が付いてるから、どうか安心して。」

の友人は、笑顔でにそう言った。

次の日、の友人は、し早めに學校に來た。

「おはよ」

そしてクラスメイトは、いつも通りおはよ、と返す。

「皆ちょっと聞いて。昨日加奈の説得、多分出來たから多分今日來ると思うよ」

「おーさすが凜花。んじゃ、あいつの悪口には気をつけるよー」

の友人は小さく、「ありがとー」と、答えて自分の席に著いた。

しばらくして、教室のドアがガラガラと開く音がした。

「おはよ、加奈」

真っ先に出した、の友人のその聲で、クラスメイトも「おはよ」とに言った。

「おはよう」

は、笑顔で言った。

それから數ヶ月後。の友人は、熱帯夜の薄暗い夜道を1人で立っていた。來る友人を靜かに待って。

「おーい、加奈！こっち！」

の友人は、が、何度も転びそうになっているところを見つけ、大きな聲で呼びかけた。

は、の著ている浴を直しながら、友人のもとへ急いだ。

その日、の友人はと、神社で行われている夏祭りに來ていた。の友人は、保健室で話したあの日から、とよく一緒にいるようになった。

しかし、それをクラスメイトたちはよく思っていなかった。の友人は、その空気をなんとなくじ取っており、この夏祭りを最後にとの関係を終わらせようと考えていた。

は夏祭りに來るのは初めてだったらしく、二人でたくさんの出店を回った。

の友人は、このと友達になれてよかったと、心から思った。そして別れないといけないことを苦しく思った。

夏祭りも終盤を迎えた頃、の友人はの手を引き、走った。

お祭り會場である神社の奧。そこがの友人が、を連れて來たかった場所だった。

「なんでここに？」

は尋ねた。

「ここはね、この夏祭りの最後に上がる花火が凄く綺麗に見えるんだよ。誰にも教えてなかったんだけどね」

の友人は、笑って答えた。

「じゃ、私たち二人のの場所、だね」

は笑顔で言った。

「そうだね」

の友人も、笑顔で答えた。の友人は、心から嬉しかった。

ほどなくして、一発目の花火が上がった。とその友人は、二人だけの靜かな空間で綺麗に上がる花火を見た。の友人は、こんな時間がもっともっと長く続けばいいな、と思った。たちの中で、その年のたった數発の花火は、どんな大きな花火大會よりも、どんなに大きくて綺麗な花火よりも、綺麗だと思った。

小さな町の、小さな夏祭りの最後に上がるたった數発の花火。だけど、たちには、かけがえのない思い出になった。

花火も終わり、帰り道。 

「加奈」

し前を歩いていた友人は振り返り、の名前を呼んだ。

「なぁに？」

は友人に尋ねた。の友人は、何度言っても足りない言葉を伝える。

「私、加奈と友達になれて良かったよ。なんで、あんなことしちゃったんだろ。ほんとごめん」

それを聞いては、可笑しそうに笑った。

「いいんだよ、もう、そんなこと。私、あの日、保健室に凜花が來てくれて、謝ってくれて、ほんとうに嬉しかったんだ。あの時は、ありがとね」

ほっとしたように笑って、は前を向いた。

「これからも、ずっと友達でいようね」

夏祭りの最後に買った、ラムネ瓶の中のビー玉を落とすと、泡が吹き出た。たちは、真っ暗になった道を二人で、歩いていた。たちの手には、開けたばかりのラムネ瓶が握られていた。

とその友人は、來た時に待ち合わせた場所で「またね」と言い、別れた。

別れた後、の友人は考えていた。このままとの関係を続ければ、間違いなくクラスメイトからの、いじめの対象になってしまうから。

⋯⋯悩みながら歩いていたの友人は、いつの間にか車道に足を踏みれていた。