験料を支払ってくれただけでも有り難いと思っていたのに、學費まで出してくれるのは謝しかなかった。

何しろ、高校の友達は専門學校希が多かった上に、塾や予備校に通うのも面倒くさかったので「自分で勉強出來る！」と言い張って両親を説得した上に、今思うと何故そんなに自信満々だったのか、過去の自分をグーで毆りたいほどだ。名門私學をければ合格すると拠もなく思い込んでいたのだから。

唯一合格通知が屆いたのが「大阪國際経済法律大學」という、ネーミングセンスもＦラン以下というたらくだったのも自業自得だ。

「そうです。その『大阪経済法律大學』に通っています」

祖母さんの間違いを訂正する気にもなれない。しかも微妙に自分でも間違っているようだがその辺りは気にしないでおこう。

「ふーん、そんな大學あるんかいね。知らんかったわ」

信號待ち――歩道橋も存在するが、もう遅刻は決定的だ。そして今日の講義の擔當教授は遅刻イコール欠席扱いをすることで有名だった。

誠司の大學も「報」という名前に唯一恥じないように、學生証をカードリーダーに通すことで出席狀況が大學側にも分かってしまうシステムなので誤魔化しは効かない。

「あるんですよ。知っている人の方がないんですけど」

六車線もあるような國道の信號待ちをしながら何となく會話を続ける。

祖母さんにはバリバリの國立の「大阪大學」と間違われなかっただけでも良しとしよう。

あんな超難関大學に通っていると誤解されたら「賢い」とか言われてしまうだろうし、悪気はないと分かっていても軽く凹んだろうから。

信號が青に変わって、祖母さんが右手で杖をついて歩き出したので、左側に回り込んで腕を持って歩きやすくした。

「親切にありがとさん。孫にも大阪法律報経済大學を勧めておくさかいに」

國道を渡りきった時にそう言われた。謝の気持ちからの言葉なのは分かったが「いやいやいや。絶対に勧めないほうがいいと思います」と心の中で全否定してしまった。

祖母さんと別れた後、國道沿いのファミレスの駐場で自転車がドミノのように全て倒れているのが気になって、乗りかかった船というか毒を食らえば――その続きは覚えていない――の気分で自転車を元に戻す作業に勤しんだ。

この時間はランチタイムなので店員さんも店の外まで面倒を見切れないだろうし。