《神様にツカれています。》第一章 16
いや、考えを変えれば神様の言う通りにすれば誠司もプラチナ會員レベルの【他の神様】の恩恵をけることが出來るので、目の前のザビエルハゲ様は大學の教授よりももっと偉い存在かもしれない。そう思えば腹も立たないような気がする。叩かれた頭は痛かったが。
その痛む頭でこんな米粒みたいな文字、しかも無駄に漢字が多いのを読まなければならないのかと思うとげんなりしてしまう。コンビニのバイトの時は凄く大きな文字で「SNSなどに仕事上で知ったり聞いたりしたこと絶対に書いてはいけません。店での畫を公開してはなりません」とかしか書いていなかったというのに。
「ああ!捺印ってハンコのことですよね。持ってないです」
もうどうでもいいから読んだことにしておこうと思って、名前を書いた後に気が付いた。
「……ボインでも良い。朱はほら、ここに」
神様らしく(?)空中から何でも出てくることにはもう慣れてしまっている自分が怖い。
「ボインって何ですか?」
ボイン――今では違う言葉が流行っているが――誠司の父が借りてきた昔のアニメのDVDではHな意味で使われている。その意味では絶対に違うことくらいは誠司にも分かった。
ザビエル風のてっぺんハゲだが、抜けていない部分は肩辺りまである髪を何故か大切そうに押さえている神様に聞いてみた。
「誠司の質問の多さとか、アホさ加減に抜けが増えそうじゃ。これ以上ハゲしく髪が抜けると困るのでな……。手に朱をつけてハンコの代わりをするのが拇印」
あーだから髪のを庇っているのかと納得してしまう。アホ連呼も慣れてしまった。人間の適応力ってすごい!と思ってしまう。
「こら!大相撲の力士じゃあるまいし、掌全部に朱をつけてどうするんじゃ!!」
ハゲしい権幕で怒鳴られてしまった。誠司しか聞こえないのが救いだったが。
「え?手って言いましたよね?」
それに神様が出した朱の大きさから掌全部かと思ってしまっていた。それにしては用紙とかスペースが小さいような気もしたけれども。
「あのな……。常識で考えたら分かるだろう」
何だか人生、いや神生じんせいに疲れたじの聲と共に髪のがハラリハラリと落ちていった。これ以上ハゲ散らかさないように気をつけようと思ってしまう。
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