《姉さん(神)に育てられ、異世界で無雙することになりました》(自稱)ベテラン冒険者に絡まれた
「そ、そんな。魔法が飛び出すなんて。國で最高位の魔師と呼ばれる宮廷魔師オリオン様ですら七十三。そういえば、歴史上、最高の魔師と言われた賢王が魔法をあふれさせたという記録が殘っているけど、でも天井を突き破る威力が出るなんて通常ではありえません。簡易測定ではなく王都の測定なら……あぁ、でもあれが壊れてしまったらとてもではないが弁償できるものではありませんし」
リディーがいろいろと混している。
測定方法が間違っていたわけではないようだ。
「ええと、リディーさん?」
「は、はい。すみません、ええと、テンシ様の魔力値は測定不能でした」
「それって、つまり……」
「テンシ様の魔力が高すぎるのです。間違いなく歴代最強でしょう」
「置が壊れていたという可能は?」
「裝置が壊れて暴走した結果、魔法が天井を突き破ったという報告はありません。もしもそんなことが可能ならば、簡易測定値を暴走させる方法が研究され、軍事兵に転用されていることでしょう」
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それもそうか。
確かに、天井を貫いてなお衰えぬ魔法とやらの力を見れば、人間の頭蓋骨くらい楽に貫通できること想像できる。
「つまり、俺の魔法力って、なんか凄いってことか」
「ふわふわした測定結果になってしまいますが、なんか凄いってことです」
なんか凄いのか。
異世界人だからだろうか?
それとも、姉ちゃんが何かしたのか?
「これで魔法が使えるようになるのか?」
「はい。魔法を使うには、専用の杖が必要になります」
リディーが説明をした。
魔法の杖というのは、二種類の役目を持つという。
まず、杖の柄に込められた魔石により、空気中のマナと呼ばれるエネルギーを吸収、杖の魔石に蓄える。
そして、魔法を放つとき、でマナを魔力に変換し、杖から魔法となって解き放つ。
その時に重要になるのが、マナをに取り込むと言う作業。
人には一度にマナを取り込むことができる量に限界があり、その量に応じて放てる放つことができる魔法の威力が変わるのだという。
その原理は、さっき使った測定も同じだったらしい。
あれも簡易の杖で、測定の魔石に蓄えられていたマナが俺のを巡り、測定のメスシリンダーの部のを持ち上げる。という魔法だったんだそうだ。
「じゃあ、その杖を手にれたら、魔法が使えるようになるんですか?」
「いいえ、それは難しいでしょうね」
リディーさんは壊れた測定を見て言う。
「通常の杖では、まず、強すぎるテンシ様の力に耐えることができません。一度魔法を使えば壊れてしまうでしょう。特別な杖が必要になります」
測定を壊してしまった手前、否定はできない。
「テンシ様には、冒険者ギルドにランク10として登録させていただきます。これは初期段階では最高のランクになります。ランクが上がれば、ギルドから人材紹介が可能になります。テンシ様の必要な杖をオーダーメイドで作してくださる杖職人様となると、ランク12以上は必要になるでしょう」
ランクを二つ上げればいいってことか。
手紙にもランクを上げるように書いてあったし、それは問題ない。
魔法というものを今日、一度使ってみたかったが殘念だ。厳にいえばさっきの魔法を飛ばしたのも魔法の一種らしいけれど。
「ランクを上げるにはどうしたらいいんですか?」
「方法は三つ。依頼を達する、魔を討伐する、賞金首を捕まえるのどれでもかまいません」
「ちなみに、普通ランクを上げるにはどのくらいの時間がかかりますか?」
「ランク10から11でしたら、通常は二カ月から三カ月必要かと思われます。しかし、実力のある冒険者様でしたら、過去にたった一日でランク11に上がった方もおられますので、一概には言えません」
「もうひとつちなみに、その魔の討伐って、冒険者になる前に倒した魔でもいいんでしょうか?」
「すみません、それはできません」
「そっか。じゃあ、グリフォンはランクアップ査定の対象外か」
「……グリフォン?」
リディーが聞き返した、ちょうどその時だった。
「やめろよっ!」
部屋の外からチッケの聲が聞こえてきた。
俺はリディーに斷りをれ、部屋を出て、け付けカウンターへと向かった。
そこれでは、大量のグリフォンの羽が舞い上がり、大男がグリフォンのを摑み上げていた。そのをチッケが必死に摑んでいる。
「チッケっ!」
「し、師匠っ! こいつが師匠のことをインチキ呼ばわりするんだ」
「當然だっ! グリフォンっていえば軍が相手するような兇悪な魔だぞ! それをこんなひょろいガキに倒せるはずがないだろ」
どうやら、俺たちが奧の個室に行くところを見ていたらしい。
その後、チッケだけがグリフォンの素材を換金しようとして、ちょっかいをれたようだ。
「どうせ、どこかで盜んできたに決まってる! そんなことされたら、俺たちベテラン冒険者にとって迷なんだよ」
ベテラン冒険者……こいつが?
ただの暴れん坊に見えるが。
「それは間違いなく俺が狩ったグリフォンです。噓ではありませんので彼を離してください」
「がははは! 信じられるか。ガキは家に帰って母ちゃんのおっぱいでもしゃぶってな」
カチンっ!
ちょっとイラっとした。しかし、ここで暴れたら迷になりそうだしな。
「いい加減にしろ、くそ坊主っ!」
そういって、自稱ベテラン冒険者はグリフォンのを振り回し、チッケを吹っ飛ばした。
「あぶなっ!」
俺は咄嗟にチッケが飛ばされた方に先回りし、彼をけ止める。
「大丈夫、チッケ」
「だ、大丈夫です、師匠」
仏の顔も三度というけれど、の子に暴を働くやつは一発でレッドカード退場だ。
退場が嫌なら、《《サンド》》バッグにしてやろうか。
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