《姉さん(神)に育てられ、異世界で無雙することになりました》これってハーレム
「いやぁ、ごめんね。飯までご馳走になっちゃって」
「いいですよ。どうせ食べきれませんし」
ヒッポグリフを解した。
の解は結構手馴れたものだ。昔、従姉と一緒に世界を旅して、の解は何度もやらされた。
もしかしたら、その従姉も神様だったのかもしれないな、と今になって思う。
お金になりそうな素材はチッケが回収し、殘ったのうち持ち運べる分は燻製にすることにした。草原では難しかったけれど、この村には燃料になりそうな枯草が倉庫にあったので、そこそこ楽に作ることができた。
まぁ、攜帯食があるから食料の問題はないんだけど、ヒッポグリフの燻製なら町で高く売れるからって言ったためだ。
姉ちゃんから貰った路銀は十分にあるが、今後同じような支援があるとは限らない。
それに、組織《クラン》を作るとなると、やはりお金が必要だと思う。
異世界βからの侵略者を退治して元の世界に戻るだけだと思っていたけど、これは思っている以上に大変そうだ。
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そういえば、異世界βからの侵略者って、この世界ではどういう立ち位置なんだろう?
別の世界とかって認識あるのかな。
「なぁ、チッケ。それにマクリラさん。聞きたいことがあるんだけど」
「なんだい、師匠」
「あたしのことはマクリラでいいよ。敬語もいらない。なに? 坊や」
「この世界以外の世界って知っていますか?」
「この世界以外の世界か……魔界とか、霊界とか、竜界、あと冥界か?」
チッケがスラスラと名前を上げる。
「待て待て、そんなにいっぱいあるの?」
「あるっていっても、実際に見たことがある人はいないんだけどね」
マクリラが言った。
「召喚魔法っていう異世界から何かを召喚する魔法があって。たとえば悪魔は魔界。霊は霊界。ドラゴンは竜界。不死生《アンデッド》は冥界から召喚されているっていう説があるの。実際、力がある悪魔、霊、ドラゴン、不死生《アンデッド》は言葉をしゃべることができるから、そういう世界があるのは確かだね」
召喚魔法……か。
異世界βはもともとこの世界に召喚されたって姉ちゃんが言っていた。
だとするのなら、その四種族のうちのどれか、もしくは複數が異世界βからの侵略者ってことになるのかな?
名前だけで言えば怪しいのは悪魔と不死生《アンデッド》だけど。
でも、ここで聞いただけじゃわからないか。
「……師匠?」
「え? なに?」
「いや、師匠、怖い顔をしてたから」
怖い顔――と言われて、俺は自分の眉間に手を當てた。
自分では気づかなかったけど、そんな顔になっていたのか。
「ドラゴン退治や悪魔退治は冒険者にとって永遠の夢だしね。坊やがそんな顔をする理由はわかるよ」
「何言うんだ! 師匠の実力なら悪魔でもドラゴンでも一刀両斷だよ!」
何か誤解されている?
ドラゴンや悪魔が異世界βからの侵略者と無関係だったとしたら、わざわざこっちから手を出そうとは思わないんだけど。
「じゃあ、師匠。寢ようぜ」
「あぁ……あっ!」
俺は大切なことを失念していたことに、今更気付いた。
「どうしたんだ?」
「布をもう一枚買っておくの忘れた」
「なんだ、そんなことか」
チッケは笑って、
「じゃあ、おいらと一緒に寢たらいいよ」
と昨日と同じ提案をしてくる。
だから、それができないから困ってるのに。
「なんだ、そんなことか。確かに、年頃の男が一緒の布団で寢るのは問題だね」
「ええ、だから困っていて」
「なら、あたしと坊やが一緒に寢ればいいよ。うん、昔から弟がしかったんだよね。冒険者ってムサイ男ばっかりでさ」
マクリラが布を取り出して言った。
なんでそうなるんだよっ!
「ダメだ、師匠はおいらと寢るんだ」
「それは保護者として認められないね」
「今日會ったばかりなのに誰が保護者だよっ!」
いったい、なに、この狀況。
なんでこんなことになってるんだ?
もしかして、これがハーレムっていうやつか?
結局、チッケとマクリラが同じ布で寢て、俺がひとりで寢ることで決著がついた。
……それでも、同じ納屋の中で寢るとなると、張するんだよな……。
チッケとマクリラの寢息を聞きながら思った。
これが姉ちゃんの寢息だったら全然気にならないのに。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
神奈「あぁ……いまごろてんちゃん寢てるのかなぁ。お姉ちゃんも一緒の部屋で寢たいなぁ……うずうず」
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