《験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の果を見せつける-》若き日の決闘
「炎よ!」
アンが両手を突き出し、自らの前に5個の火炎弾を作る。
大きさはサッカーボールほどだが、同時に5個というのは凄い。
「今なら降參できるわよ」
「そしたらあんたに一生拘束されるんだろ?」
出來るかっつーの。
「そう。なら々頑張りなさい!」
火炎弾の制はまだできないらしく、出た場所からまっすぐに飛んでくるのを転がって避ける。
「まだまだ!」
しかし、次から次へと生み出される火炎弾が盡きる様子はない。
「魔力切れの線は諦めたほうがよさそうだな」
決闘の場はある程度の広さがあり、アンの魔法が出された後コントロールされないというのも予想通りだ。
よって、逃げ回ってアンの魔力を切れさせようという考えもあったのだが、どうやら俺が思っていたよりB級クラスとS級クラスの魔力量の差は隔絶しているらしい。
俺の數倍と見積もっていたが、どうやらそんなレベルじゃなさそうだ。
「あんたもB級クラスならもっとやれるでしょ! そっちからも攻撃してこないとつまらないわよ!」
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「あいにくあんたみたいにばかすか撃てるような魔力は持ち合わせてないんでね!」
ここが育館でほんと良かった。
外なら土で汚れまくっていただろう。
そもそもローブなんてきにくいものをなんで制服にしてるんだろうな。
軽口を叩きながら避けていると、余裕があると思われたのか火炎弾の數が増える。
それも9個に。
「これなら、どう!?」
今までの速さで避けていれば、避けきれるはずがない。
そう思っていたアンの思は外れることとなる。
「え、うそ!?」
外れたのである。
絶対に當たると思っていたのに。
別に相手のライヤとやらのきが良くなったというわけではなかった。
より自分の魔法の効果範囲は広がったのだから、當たるはずだった。
「ほう……」
審判役の學園長が興味をそそられるような聲を出したことから、察する。
先ほど外れたのは自分が悪かったわけではない。
ライヤこいつが何かしたのだと。
だが、それがわかってもどうすればいいのかわからない。
「なら、もっと増やしたらどうかしら!」
13個に増える。
また、躱される。
だが、今までとは違う點が1つ。
それまでは橫1列に飛んでくる火炎弾の端っこまで行って避けていたが、遂に端まで行かずに火炎弾と火炎弾の間をすり抜けたのだ。
そして、その事実にアンの思考は固まる。
(どうして!? 避けられるほどの隙間は開けてなかったはず……!)
そもそも、間を通れるのなら最初からそうやって避けていれば手間はかからなかったのだ。
しかし、それをここにきて解したという事は、それをせざるを得ないところまでライヤは追い詰められていたという事を示す。
その事実に気づけたなら、神的にもアンが優位に立ち、隙は無くなっていただろう。
しかし、碌に決闘の経験もない10歳のにはそれはあまりにもハードルが高すぎた。
一方、ライヤは。
(あっぶねぇー!)
びびっていた。
(普通の人間は火炎弾なんかくらったら死ぬって知らないのかあの王は!)
RPGのようにHPが設定されていてその下限までならなにされても死なないとかいうバグみたいなシステムは存在しない。
火炎弾が當たれば燃えるし、死ぬ。
(自分の力に自覚がないってこんなにまずいことなんだな!)
ライヤは、自分の魔力制に自信があった。
自らの魔法についてもそうだが、他人の魔法もある程度は上書きできる特がある、というのも既に摑んでいた。
本來であれば5年生になって、自らの魔力制が発展してから學ぶ技なのだが、図書館の文獻を読み漁っていたライヤは1年生の時點でそれを見つけていたのだ。
ただ、この方法が自分よりも格上の相手に通用するかどうかは賭けであった。
學年で級クラスを超えた関わりがない以上、試す機會が無かったのである。
同格の相手には授業中に気づかれないように試していたが、魔力量と魔力制に相関関係があると、ライヤは睨んでいた。
(だが、それも外れだな)
これほどまでに魔力量に差があって、魔力制で上回れるはずがない。
いかに自分が子供の時から訓練を開始していたと言っても、これほどまでの才能を覆せるほどではない。
そこまで考えたライヤは思考を次へと移す。
すなわち、どう勝つか。
「なんで避けれるのよ!」
相手の種がわからないアンは、焦って魔法を発する。
それもS級クラスにのみ許された戦法なのだが、ここでは悪手である。
それまでは一斉に魔法が飛んできていたため、ライヤは橫方向にしか避ける方向がなかった。
しかし、となればそれぞれの魔法に時間差が出て、多をかすだけで安全な位置が生まれる。
そして、自分の魔法がさらに簡単に避けられているという事を目の當たりにしたアンは揺を強くする。
「ここだ!」
勝機を見て取ったライヤは手に魔力を集中させながら前に出る。
前に出れば出るほど魔法が自分に到達するまでの時間は短くなるが、ライヤのきに焦っているアンには今までの冷靜さがない。
「こ、こないでっ!」
アンは自分が負けるなら短刀による攻撃だと思っていた。
魔法ではS級クラスの自分が負けるはずがない。
だからこそ、相手を遠ざける戦い方をしていたのだ。
しかし、ライヤは近づいてきた。
否が応にも短刀への意識が強まる。
「來るなぁ!」
ライヤがアンまであと3メートルと迫り、焦ったアンは加減を間違える。
自らとライヤの間に2000度にも上る炎の壁を突き立てたのだ。
「ぁ……」
自分のやったことに、戦慄する。
こちらに走って向かってきていた相手は、止まれるスピードではなかった。
炎の壁に突っ込んでしまったことだろう。
決闘とはいえ、相手を殺すつもりなどなかったアンは、固まってしまった。
そして、それはあまりにも致命的な隙となった。
「よっと」
自分の足元から聲が聞こえたと思った時には、視界が回っていた。
そして、痛みもないままに床に転がされる。
それをしたのは、もちろんライヤであった。
「先生」
「そこまで! 勝者ライヤ!」
驚きの連続で頭が追い付かず、思考停止しているアンをよそに、ライヤと學園長は話をする。
「流石だねぇ」
「いや、本當に死ぬかと思いましたけどね!? あれは先生としては止めなくて良かったんですか!」
「いやだなぁ。君の実力を買ってるから信用したんじゃないか」
最後のは特に學生の決闘で使用されていい威力じゃなかったぞ。
「それで、ライヤ君。君は彼に何でも命令できる権利を手にれたわけだが、どうする?」
「……とりあえずは、保留ですかね。いきなり何か言われても、今は納得できないでしょうし。アン王が落ち著いて、負けを認められたらその時にまた呼んでください」
そう言い殘して決闘の勝者は育館を去ったのだった。
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